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2012CES、シリコンバレー視察レポート
※ BIP 企画管理マネジャー 手塚 里美
2012年1月、米国ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)をBIPの代表として視察してきました。CES終了後は、シリコンバレーへ移動しオラクル社、スタンフォード大学も訪問。
CESの概要紹介と、注目展示の感想、CESから見る米国及び世界の家電・IT事情の印象を中心にレポートしたいと思います。全体を通して「繋がり」(ネットワーク)というキーワードが強く印象に残る視察となりました。
(1)CESとは
世界最大規模の家電・IT見本市。2012年は1月10~13日まで米国ラスベガスで開催され、ネットワーク家電やIPv6、NGNのほか、スマートフォンやタブレット端末、クラウドコンピューティングなど数多くの分野の新製品が展示された。
来場者は、15万3,000人を超え、過去44回の歴史の中で最大規模になったと発表された。米国外からは34,000人が参加。出展社は3,100以上、新製品も2万を超えたという(参考資料1)。世界中から注目されたイベントだった事がうかがえる。
実際会場内は多くの人で大変な賑わいだった。最近日本(東京)の展示会イベントが不景気等の影響で規模縮小傾向にあると感じていただけに、このイベントは盛況で元気な印象を受け米国経済の力強さを感じた。
(2)2012CES注目展示、世界から注目された最新技術と勢いに乗る韓国企業勢
今年のCESの会場は186万平方フィートという広大な面積。中心会場となるラスベガスコンベンションセンターの他、ヒルトンホテル、ベネチアンホテル等会場移動にはバスを利用しなければならない所もある。CES初体験という事もあり、今回私はメイン会場となるセントラルホールを中心に見どころをまわった。
既にメディア報道もされているが、私の目で見た展示を中心にレポートしたいと思います。
・最先端ディスプレイ 次世代テレビが注目
今年のCES、メイン会場で一番目についたのは何と言っても次世代テレビだ。韓国のサムスン電子、LG電子を筆頭にパナソニック、ソニー、東芝等が最新モデルのTV液晶を展示した。噂の有機ELテレビは超薄型で軽量が売り、画面の美しさもため息がでるほど鮮やかだった。ソニーのLEDテレビの他、各社専用メガネと一緒に展示された3D液晶、パソコンの便利機能がテレビと融合したスマートテレビ等どれもこれも美しい画像で各社目を引いていたが、しいて各社同士の見た目でわかる様な大きな差異点を挙げるとすれば、韓国企業2社(サムスン、LG)の大掛かりで目を引く派手な展示内容だった。映画館の様な大型ディスプレイに展示品の多さ、明らかに来場者にインパクトを与え、勢いに乗っていた。このままでは日本の企業負けてしまうんじゃないか・・・なんて印象を受けたのは私だけではないはずだ。
展示のインパクトでは少し負けていたかもしれないが、製品のスペックや技術、先進性では決して負けてはいないと思う。ソニーの次世代ディスプレイ「クリスタルLEDディスプレイ」、東芝の「4K映像技術、専用メガネ不要の3Dディスプレイ」等 今後の日本のディスプレイ技術の発展に注目していきたい。
・進化するタブレット端末
BIPでも昨年からタブレット端末に注目し、導入してきた。今回のCESでも各社最新のタブレット端末が展示された。特別大きな革新的な製品は見られなかったが、展示品を実際に手に取ってみて、まず操作性が向上している事を実感した。軽量化、操作性UP等少しずつタブレットの製品技術は進化していきそうだ。
それからディスプレイに続きタブレットについても、韓国のサムスン電子は目立っていた。欧州などで発売している5.3インチのスーパーHD AMOLEDディスプレイを採用した「Galaxy Note」を出展。「Galaxy Note」は、指先でのタッチ操作に加えて、専用のタッチペンを使った繊細な操作や入力に対応している。会場では、サムスンのブース内や共有スペースなどで「Galaxy Note」を使って似顔絵を描くイベントを開催、各所で似顔絵待ちの列が伸び来場者の目を引いていた。
展示以外でも米国内でタブレットが普及している事を実感した。CES会場の他街の中でタブレットを利用している人を多く見かけた。用途はメモ帳や手帳代わりに使ったり、映像や電子書籍を見るなどの姿も見られた。
昨年は日本でも一時期電子書籍専用端末が話題となり、BIPでも電子書籍専用端末を購入するかタブレットを購入するかで迷った覚えがある。しかし今回のCESでは電子書籍専用端末の展示はほとんど見られなかった。軽量化操作性が向上すれば専用端末としての価値はあまり無くなっていくのかもしれない。
会場の小規模ブースで多く見られたのが、スマートフォンやタブレット関連のアクセサリや連動端末だった。日本でも人気の色とりどりで素材にもこだわったタブレットケース、最近流行の健康志向もあってかタブレットと自転車を連動させたヘルスシステム等も注目されていた。まだ日本では見かけない製品も多数有り、これから日本でもタブレットやスマートフォンを中心とした関連商品市場が賑やかになりそうな予感。
米国では子供たちの間でもiPadを中心にタブレット人気が伸びているという。ゲームや教材など子供向けのタブレット商品も登場。今年のクリスマスは、日本でもタブレットのプレゼントが人気になるかもしれない。
・インテルの薄型・軽量・高性能ノートPC ウルトラブック
「ウルトラブック(Ultrabook)」とは、インテルの提唱する新しいノートPCのコンセプトのこと。その特徴は、薄く、軽く、処理性能も妥協せず、そして低価格ということだ。今回のCESでは日本でも11月より発売される東芝の「dynabook R631」、エイサーの「Aspire S3-1」を中心に数機種展示された。
実はこのウルトラブック、BIPでも年末PC買い替えに合わせて購入。今回の視察ツアーにも持参していた。使い勝手は、抜群にいい。薄くて軽いので持ち運びも楽だし、起動終了が速くてストレスがかなり少ない。今後各社からウルトラブックが発売され一般に普及していくことは明らかだろう。
・家電もネットワーク化・クラウド化 未来の家の形スマートホーム
CES視察中多く見かけたキーワードは「スマート」。これからの時代は、スマート家電がスマートライフを演出するのだという。今回のCESでもこのスマート家電の展示が目立っていた。洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、それから屋外に設置されたソーラーパネルがインターネットで接続され、クラウド化され、一括管理される。外出先からの操作で利用の効率化を図り、電力制御する事で電力効率化エコに繋げる。昨年日本でもSNSソーシャルネットワークサービスが話題となっているが、家電のネットワーク化、クラウド化もこれから注目すべき技術になりそうだ。
(3)まとめ
CES会場をまわって感じたことは、家電やICTにおいても「繋がり」がキーワードになりそうだという事。スマートテレビ、スマートホームの様にそれぞれの製品単体では無く、他との繋がりやアプリケーションと共に発展していくことになるだろう。テレビ、タブレット、PC、スマホが中心となって私たちの生活は更に繋がり(ネットワーク)をもった社会に発展してくことになりそうだ。シリコンバレーで訪ねたオラクル社でも話題の中心はシステムのクラウド化だった。
それから、やはり世界規模での視野は大切だと実感した。世界舞台にした土俵に立ってみると、日本にいてはわからない世界各国の勢いや意気込みが伝わってくる。スタンフォード大学では、整備された素晴らしい環境の中熱心に学ぶ、はつらつとした学生たちが印象的だった。韓国や中国等他のアジアの国の技術発展もすごい勢いだ。世界の勢いに押されて自分を見失わない為にも、個人レベルから海外に視野を向けこれからの日本の進み方について考えていくことは大切だと感じた。
参考資料
1.CES公式WEBサイト(日本語版)http://biz.knt.co.jp/pm/CES/