佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2017/12/05 恒例! 年末年始にお薦めの本21冊~ 新年は明治維新150年
BIエッセイを1年間ご愛顧頂き、本当に有り難うございました。今年も恒例の「お薦めの本21冊」をお届けします。年末年始は、本を読む時間のある時期の一つですね。
2018年は、明治維新から150年です。江戸時代からの通史で現代と未来を考える好機だと思います。また、政治、経済、技術、企業、雇用、生き方等の変化が加速するでしょう。
2017年後半に私が読んだ本の中から、明治維新150年を見つめ、未来への新しい叡知に繋がる本を中心に選びました。皆様の未来にとって参考になれば嬉しい限りです。
厳寒の季節、お身体を大切にして、ご家族揃って良き新年をお迎え下さい。
(ご参考まで。過去の「お薦めの本」はこちらからご覧頂けます。)
<未来のために~リアルから人生に希望と知恵と勇気をくれる>
(1)東京美術倶楽部常務取締役・国際浮世絵学会常任理事 浦上満 『北斎漫画入門』
(文春新書 2017年10月 本体1,200円+税別)
皆様、ご存じですか?2019年度より、日本の次期パスポートデザインは葛飾北斎の「富嶽三十六景」が採用されます。私は数年前から国際浮世絵学会正会員となり、浮世絵を楽しんでいますが大変嬉しいことです。マネ、モネ、ドガやゴッホも魅了した『北斎漫画』を1500冊収集した世界一のコレクターによる入門書。北斎漫画の旅をどうぞ!
(2)京都市立芸術大学学長 鷲田清一、京都大学総長 山際寿一 『都市と野生の思考』
(集英社インターナショナル新書 2017年8月 本体740円+税別)
ゴリラ研究者京都大学総長と哲学者京都市立芸術大学学長の異色対談。都市の思考と野生の思考の対話は、文明論から人間の来し方、行く末の視野を広げてくれます。老いと成熟、家と家族の進化、アートと言葉の起源、自由の根源とテリトリー、ファッションに秘められた意味、食の変化、教養の本質とは。
(3)作家 塩野七生 『逆襲される文明 日本人へⅣ』
(文春新書 2017年9月 本体920円+税別)
いつも楽しみに読む塩野七生さんの文藝春秋人気エッセイシリーズ(2013年11月号~2017年9月号)です。「現実的な考え方をする人がまちがうのは、相手も現実的に考えるだろうからバカなまねはしないにちがいない、と思ったときである。 -ニコロ・マキエヴェッリ」 塩野さんは、日本人に今一番伝えたい叡知は、巻頭に紹介したマキエヴェッリの言葉と思っているに違いない。人類のリアルから叡知を私たちに贈る名人ですね。
(4)作家 曽野綾子 『老いの僥倖』
(幻冬舎新書 2017年9月 本体820円+税別)
私が繰り返し読む愛読書である。疲れた時、悩んだ時、厳しい判断をする時など、この本を読むと落ち着いて来るから不思議である。人生100年時代に85歳まで生きてきた作家曽野綾子さんが、年を取ることが楽しくなる極意を編纂した。「老いのうまみを味わわなければ、生きて来た甲斐がない!」と本の帯に言い切っているのが凄い。老若男女問わずお薦めします。
<未来のために~古い歴史観を脱皮し、江戸時代からの日本を通史で知る>
(5)作家・コンサルタント 佐藤智恵 『ハーバード日本史教室』
(中公新書ラクレ 2017年10月 本体820円+税別)
世界最高の知性が集まるハーバード大学で日本史講座が大人気である。ハーバード大学の教員と学生が日本史から何を学んでいるかを知る好著です。また、ハーバード大学と日本との歴史的繋がりが強いことも知った。明治時代、帝国憲法の起草と日ロ戦争時の講話外交に貢献した金子堅太郎始め、小村寿太郎、松方乙彦、山本五十六など。ライシャワー元駐日大使等の努力で1973年日本研究所が設立された。日本史を通史でしっかり研究している。私たちが習った時代のマルクス主義中心の歴史観や間違った教科書に毒されていない。
(6)ハドソン研究所中国センター長 マイケル・ピルズベリー 『China 2049 ~秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』
(日経BP 2014年9月 本体2,000円+税別)
日本にとって衝撃の書。「「パンダハガー(親中派)」のひとりだった著者が、中国の軍事戦略研究の第一人者となり、世界の覇権を目指す中国の長期的戦略に警鐘をならすまでの驚くべき記録」と元CIA長官R・ジェームズ・ウールジーは述べている。何と、米国は中国との秘密特別協定を結び支援をしてきたという。しかし、中国の敵対目的を見抜けず間違いであった。一方で日本には秘密協定は明かさず最近まで敵対国のように対応して来た面もあるという。米国は中国に延々と騙され続けてきたという。
(7)作家 猪瀬直樹、国際日本文化センター准教授 磯田道史 『明治維新で変わらなかった日本の核心』
(PHP新書 2017年11月 本体920円+税別)
対談形式で読み易い。従来の疑問に応えてくれた歴史実証研究の好著。明治以降、なぜ日本は近代化に成功したのか。それは明治維新で日本は変わったのではなく、江戸時代までの歴史の中ですでに成功の要因は形づくられていたからだ。江戸時代に花咲いた近代的経済の発展の事実に驚きます。農民が同時に商工業者で商業・工業は無税。1,700年に日本独自の貨幣経済。参勤交代で交通・観光、人材交流ネットワーク。地域別教育制度。薩長経済。
(8)産経新聞社論説委員、大正大学客員教授 河合雅司 『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』
(講談社現代新書 2017年6月 本体760円+税別)
中学生、高校生にも分かり易く売れているこの本が日本人の少子化対策先送り幻想を変えるかもしれない。第1部は、日本減少カレンダー。100年後、日本人は約5,060万人。この現実を読んで驚かない方はいない。日本喫緊の課題は、①出生数の減少②高齢者の激増③勤労者の不足④人口減少。第2部は、筆者が10の処方箋を提唱している。高齢者区分変更・24時間社会からの脱却・非居住エリア明確化・飛び地合併・国際分業・匠の技活用・国費学生・中高年の地方移住・セカンド市民・第3子以降に1,000万円給付。
(9)産経新聞社論説委員、拓殖大学客員教授 河合雅司 『日本の少子化百年の迷走 人口をめぐる「静かなる戦争」』
(新潮選書 2015年12月 本体1,400円+税別)
新潮選書で刊行された地道な人口をめぐる実証研究。日本の深刻な少子化の根本原因を探っている。我々の世代には余り聞き慣れないが、日本の近現代史は「人口戦」の歴史であった。明治以降、日本は外国への移民政策を進めたが軋轢を生み頓挫した。戦後はGHQの意図もあり、産児制限が合法化され出生数は激減する。日本政府は、人口抑制策として官民挙げて「家族計画」を推進する。1990年「生涯出産1.57人」の衝撃後も官民の少子化対策は進まない。筆者は「静かなる有事」と言う。現政権が初めて人口目標1億人を掲げた。
<未来のために~2018年はどうなるか。直面する技術・経済・産業の変化を知る>
(10)三菱UFJリサーチ&コンサルティング 『2018年日本はこうなる』
(東洋経済新報社 2017年11月 本体1,600円+税別)
今知るべき86のテーマを解説しています。新しいキーワードが多いので有益。第1章~国際社会・海外ビジネスはこうなる。第2章~産業はこうなる。第3章~企業経営はこうなる。第4章~働く場はこうなる。第5章~社会・文化はこうなる。第6章~少子化・高齢化はこうなる。第7章~地域はこうなる。第8章~地域環境・エネルギーはこうなる。
(11)日経BP社編 『日経テクノロジー展望 世界を動かす100の技術』
(日経BP社 2017年10月 本体2,300円+税別)
10年後に生き残るために知るべき技術知識を日経専門誌編集長30人が技術トレンド予測し専門記者が解説。合計121の「世界を動かす技術」が掲載されている。技術の融合と再生の時代。止まらない心臓、ビッグデータが値段を変える、ぶつからないクルマ、デジタル化でお金が変わる、生物を利用した物質生産、発電を極め温暖化を止める、老いる社会インフラを丸裸に、もはや仮想じゃない、「つながる」ものづくり、変貌する建築技術、人の五感を超える機械、人の再生、車の再生、現場の再生、建設の再生、ITの再生。
(12)数量政策学者、喜悦大学教授 高橋洋一 『2018~世界と日本経済の真実 ついにあなたの賃金上昇が始まる!』
(悟空出版 2017年10月 本体1,200円+税別)
数量理論から2018年の政治経済を読み解いている。第1章トランプの米国を読み解く。第2章ドイツ一人勝ちのヨーロッパを読み解く。第3章 激動のアジアを読み解く。第4章 日本を取り巻く難問の本質。第5章 危うい小池都政を読み解く。第6章 日本のフェイクニュースを暴く。日本のバランスシートは問題ない。地方創生のためには税財源を地方に移譲せよ。合格点のアベノミクス。更なる規制緩和をすべき。
(13)エコノミスト 村上尚己 『日本の正しい未来 世界一豊かになる条件』
(講談社α新書 2017年11月 本体800円+税)
筆者は、米国に本社がある大手資金運用会社のマーケット・ストラテジスト。1995年から日本のデフレが始まった。1995年を100とすると日本だけが消費者物価が上がっていない。大失業時代。開業率も停滞。「デフレ20年」は日本の金融財政政策の失敗による人災。アベノミクスで劇的に改善中。2013年より名目GDP上昇、税収も上昇、国債GDP比は横ばい化、失業率減少。日本は世界一の対外債権国2015年+339兆円(ドイツ+195兆円、中国+192兆円)。国債暴落はウソ。現在の国際的常識の金融財政政策を継続すべきである。
(14)小西美術工藝社社長、元ゴールドマンサックス金融調査室長 デービット・アトキンソン 『日本再生は生産性向上しかない!』
(飛鳥新社 2017年6月 本体1,296円+税別)
日本は先進国最下位の生産性に低下した。英国出身のエコノミストで現在文化財修繕会社経営者である著者の対談と提言の書。ズバリ日本の弱点と改革方向が具体的です。第1章 非効率大国ニッポン。第2章 観光をサービス産業改革の起爆剤に。第3章 危険な「海外で人気の日本文化」幻想。第4章 論理的思考と変化が大の苦手。第5章 形式主義と事なかれで「失われた20年」が長引く。第6章 感情論を止めて今すぐ実行を。結論 変化を受け入れる国へ。特別対談 世界が驚嘆する観光大国・日本。特別対談 二階自民党幹事長。
<未来のために~激変する不確実性の高いデジタル時代のリーダーのあり方を考える>
(15)エリック・シェイファー 『インダストリーX.0 製造業の「デジタル価値」実現戦略』
(日経BP社 2017年9月 本体2,000円+税別)
著者は、アクセンチュア・シニアマネージング・ディレクター。米国やドイツでの取り組みを基に、IIoT(製造業のIoT)への変革の方法論を解説している。製品は、ソフトウエアの部品になる。インダストリーX.0 の時代には、企業は従来の10倍のスピードで成長する。過去のフォーチュン500企業は、時価総額1,000億円に達するまでに平均20年だったが、グーグル8年、ウーバー2年、オキュラスリフトは18ヶ月で突破。IIoTでは、すべての技術はネットワークによって統合する。ネットワークコネクティビティ技術と情報収集技術が重要となる。クラウドとエッジコンピューティングの両方必要。
(16)MITメディアラボ所長 伊藤穣一、ノースイースタン大学助教授 ジェフ・ハウ 『9プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために』
(早川書房 2017年7月 本体1,800円+税別)
本書は、タイトルの通り、めまぐるしく変化する現代を生き抜くための、「9つの原理(ナイン・プリンシプルズ)」とは何かを述べています。一言でいうと、面白がる能力を持てということと筆者は言う。1.権威より創発 2.プッシュよりプル 3.地図よりコンパス 4.安全よりリスク 5.従うより不服従 6.理論より実践 7.能力より多様性 8.強さより回復力 9.モノよりシステム。
(17)コーン・フェリー・ヘイグループパートナー 山口周 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか 経営における「アート」と「サイエンス」』
(光文社新書 2017年7月 本体760円+税別)
本書の帯は、論理的思考、MBAでは戦えない・・・「直感」と「感性」の時代。米国系コンサルタントファームの幹部がこう言うのは、こけおどしではなく、米国エリートの根本的変化とコンセンサスを物語る。第1章 論理的・理性的情報処理スキルの限界 第2章 巨大な「自己実現欲求市場」の登場 第3章 システム変化が早すぎる世界 第4章 脳科学と美意識 第5章 受験エリートと美意識 第6章 美のモノサシ 第7章 どう「美意識」を鍛えるか?
(18)ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院教授 フィリップ・コトラー、ネスレ日本(株)社長 高岡浩三 『マーケティングのすすめ 21世紀のマーケティングとイノベーション』
(中公新書ラクレ 2016年10月 本体800円+税別)
日本人の多くは、マーケティングの本質を誤解している。その誤解の根本は何か。著名な学者と実務家がネスレ日本のマーケティング事例を中心に対談した分かり易い実務書。第1章 21世紀のマーケティングとは何か、第2章 マーケティングの変遷と進化、第3章 「顧客」と「顧客の問題」とは何か、第4章 イノベーションとリノベーション、第5章 問題解決は「問題発見力」が出発点、第6章 コトラー・ビジネス・プログラムの全貌。
(19)電通デジタル 『電通デジタルのトップマーケッターが教える デジタルマーケティング 成功に導く10の定石 簡単に分かる売れ続ける仕組みをつくるツボ』
(徳間書店 2017年2月 本体1,600円+税別)
今や、すべての企業にとって、マーケティング分野のデジタルトランスフォーメーションは最重要課題です。電通デジタルはその支援を行うために2016年7月に設立。本書は、デジタル化に踏み出すための最もやさしいガイドブックと自称しています。定石1 カスタマージャーニー分析、定石2 オウンドメディアの強化から始める、定石3 ECサイト開設、定石4 KGI・KPIの設定、定石5 SNS活用、定石6 コンテンツマーケティング、定石7 DMP導入、定石8 MA(マーケティングオートメーション)ツール、定石9 顧客ID統合、定石10 MROI分析。
(20)お茶の水大学名誉教授 外山滋比古 『知的文章術 誰も教えてくれない心をつかむ書き方』
(だいわ文庫 2017年8月 本体650円+税別)
言葉の貴族をめざす。素人ながらエッセイ執筆家である私は素敵な言葉に巡り会えた。200万部突破のベストセラー『思考の整理学』など、著書の多くがヒットする「知の巨人」が語る、人の心をゆさぶる文書の秘密!93歳にして、直筆での原稿執筆を続ける文章の達人が、その極意をすべて明かす。第1章 文章を書く心構え、第2章 読まれる文章のコツ、第3章 心をつかむ構成、第4章 今こそ手紙の力を。
(21)明治大学教授 齊藤孝『決断の技術』
(成美文庫 2017年 本体500円+税別)
私たちは、毎日多くの選択や決断をしています。「流れやすい」「決められない」は勇気がないからではなく、理性的判断がフリーズしているからと齊藤教授は言います。デカルト4つのルールと暫定ルールが3つ。その決断思考を磨く20の方法を提案しています。小さく分けて考える、紙に書き出してみる、順番をつける、選択肢を減らす、課題を明確にする、集中して一点突破する・・・等。
以上
※読者の皆様へ、より便利に参考情報・参考書籍をご紹介するために、Amazon.co.jpアソシエイト・プログラムを採用しています。
佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
◆ご質問・お問い合せはこちらから
専門コンサルタントへの、ご質問、ご相談等、お気軽にお問い合せ下さい。