佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2012/02/20 佐々木流 BI経営進化論 第2回 ―リーマンショック時、即時的・持続的収益実現した『トランザクションマネジメント』―
BIエッセイは今回で200号となりました。テーマは『トランザクションマネジメント』とすぐ決まりました。リーマンショック時の企業経営は、皆様と共有したい得難い体験だったからです。
『トランザクションマネジメント』とは、BIPがリーマンショック後の経済激変・企業激変の実践の中で成功した経営改善コンセプト(概念)であり、手法(メソド)でもあります。2009年5月にその成果を発表しました。常に有効なBI経営の王道であり、その一部をご紹介します。
リーマンショック後の企業業績は惨憺たるものでした。売上高減少が少ない企業で10~30%、工作機械業界はほとんど受注が停まるなど深刻な経済危機でした。その特徴は需要減少つまり売上高減少です。優柔不断であったり、対策を誤れば倒産に至る程の非常事態でした。
その中でも、早期に黒字化した企業は、個別企業毎の特定解は色々と違いますが、BI経営を具体化した『トランザクションマネジメント』を実施していました。
(1)短期最適化・中期成長戦略同時実践で黒字化早かったホンダのトランザクションマネジメント
ホンダ増益要因は、事業開発と経営改善。※日本経済新聞 2010年10月31日号より抜粋
ホンダは2007年後半から最大市場である米国経済から始まったサブプライム問題による金融変調を掴んでいました。そして、2008年早くから在庫調整、F1撤退等のコスト削減の最適化と同時に、エコカーの戦略開発を早めた。2008年9月にリーマンショックが発生しました。
2009年2月に発売したハイブリッド車インサイトは販売計画予定の3.6倍のペースで売れ、その効果もあり4月日本での販売台数は6ケ月ぶりに前年比1.8%増加に転じた。トヨタ32.5%減、日産31.7%減等各社30%前後マイナスの中である。
既存車販売価格は240万円前後であったが、ベースモデルで189万円に設定した。ハイブリッド車は、今や環境中心のエコ技術に加えてエコノミーで乗り心地も良く、誰でも買える・乗れる車になった。約20%の低価格を実現している。コンセプトは、「Hybrid for Everyone~ハイブリッドをみんなの毎日へ」「エコロジー&エコノミー&使いやすさ」である。4月エコ税制前から人気で売れていました。その後、トヨタプリウスの逆襲もありましたが、ビジネスモデル戦略の変革が明確に経営数値に反映した先行モデルとして学ぶ価値が大きいと思います。
四半期単位の増益要因をご覧下さい。2009年4~6月も黒字で、その後急速に業績改善したことがわかります。この時期、米国の最大自動車会社GMは倒産し、政府支援で再生を図ります。
ホンダが発表した2010年9月中間連結決算は売上高が13.7%増の4兆6133億円、営業利益が前年同期比338%の3979億円と大幅な増益になった。一方、11年3月期の業績予想は、補助金制度の打ち切りによる反動減や円高の影響で、売上高を4.9%増の9兆円に1000億円下方修正しました。ただ、コスト削減効果などを見込み営業利益は37%増の5000億円(従来予想比500億円増)と若干上方修正しました。
(2)損益分岐点低減と事業開発の合わせ技で早期黒字化した中堅企業C社のトランザクションマネジメント
図 『トランザクションマネジメント』のイメージ図(佐々木作成)BIPも急遽、100億企業C社の経営指導を依頼されました。海外への輸出中心の事業は、リーマンショックで本当に激変しました。
金融収縮によって、円・人民元以外は世界的ドル高となりました。特に新興国の通貨は20~30%以上安くなり、貿易決済のドル不足が発生し、激変をもたらしたようです。顧客が需要減少と同時にドル高、ドル不足で売上高が一時半減しました。
時間との勝負です。1週間で事業分析と対応施策を提案しました。経営陣の皆様が率直に提案を受け入れ、必死で努力した結果、6ケ月後に単月黒字となり、結果的には前年を上回る黒字を実現しました。
取引がほぼ1ケ月単位の短期のトランザクションであること、しかも底が売上高前年比50%水準で継続していることがわかりました。これは変動費コスト削減だけでは黒字化できない水準です。あわせ技が必要です。損益分岐点を売上高前年比75%で実現する固定費・変動費の効率化と同時に新規顧客、新規商品による逓増戦略、前金によるキャッシュフロー改善など、すべてのトランザクション(取引)を改善、改革する全社活動を展開しました。幸いにも、念のために一時用意をお願いした借入金は不用となりました。
半年後に売上高75%で単月黒字化しました。その後、売上高が逓増し、売上高前年比90%レベルで過去最高の単月営業利益率を達成しました。翌年度は、前向きな費用、投資を再開して尚最高益を更新しました。
ポイントは、①各社毎の特性による特定解を冷静に把握すること、②経費・固定費削減や社員に負担をお願いする場合も1年限り1回だけとして、回復後にお返しする経営姿勢で一気に実施して黒字化する ③中期的事業開発を同時に前倒しで実施し、持続的収益成長に繋げることなどです。
“収益改善機会は無限である!”と思います。『トランザクションマネジメント』は、経営の王道をスピーディーに、全部門が連携し、リーダーが決断し実施すれば即時的かつ持続的収益改善が可能です。
*トランザクション=あらゆる内外事業・取引機会、開発機会、対人機会、行動機会、書類・システム処理機会等
上記のイメージ図を見てよく考えてみてください。100位の改善、改革テーマがすぐ出てくるはずです。問題はその優先分野と実行の経営方法が問われています。是非、お勧めします。
BIPビーアイピーまでお問い合わせください。(電話:03-5114-6051 / メール:info@bi-p.co.jp)事前相談は無料です。
参考文献
1.本田技研工業株式会社『2010年度 第2四半期 決算説明会』
2.本田技研工業株式会社『2010年度 第2四半期連結決算短信』
3.日本経済新聞 2010年10月31日号
4.佐々木昭美 BIエッセイ 2009/03/23号 4月エコカー税制とハイブリッドエコノミー車戦略で、皆さんは車買い替えをどうしますか?
5.佐々木昭美 BIエッセイ 2010/07/26号 熱い成長戦略が報道されたホンダ・トヨタ
佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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