佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2011/10/24 ご存じですか?「ニッポンの稼げる技術100」
今回は、ビジネスエッセイというよりはビジネスイノベーション関連のインフォメーションです。日経BP社『日経ビジネス』2011年10月10日号が、「ニッポンの稼げる技術100」特集をしています。よく調査され、大変役に立つ情報が提供されていると思います。まず、すべてを読んで見て下さい。もちろん、今回採り上げられていない技術も数多くあると思います。
科学技術立国日本の技術基盤に自信を持ちながら、国力を危うくする科学技術投資に否定的・軽視傾向の政党・識者・メディア等に負けずに、一層努力するキッカケになればと思いました。
では、技術だけ強ければ良いのか?という当然の課題があります。妹尾堅一郎『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか-画期的な新製品が惨敗する理由』が指摘するように、日本企業は米国、台湾、韓国、中国等の企業に敗退する分野が増加しています。
同時に、先進的日本企業においては技術を収益に変える企業も増えており、経営学研究においてもその事例研究が増加しています。猶予が許されない多くの日本企業リーダーが決断し、行動しつつある流れが起きつつあること理解し、日本全体の流れになってほしいと念願しています。
今週は、論評抜きで恐縮ですが、事実こそ最大の力と判断し、情報のみお届けします。単なる知識の一つとして処理するのではなく、認識に変え、最終的に胆識に変え、実践に向かって頂ければ幸いです。
(1)日経ビジネス特集「ニッポンの稼げる技術100」(2011年10月10日号)
日経ビジネス特集「ニッポンの稼げる技術100」(2011年10月10日号)掲載されている技術を紹介します。1.超伝導ケーブル ~ 電流量が200倍
2.細胞シート ~ 臓器の絆創膏
3.有機EL照明 ~ 部屋を照らす魔法の板
4.低燃費のガソリン車 ~ 1リットルで30㎞
5.ハイブリッドトラック ~ 燃費性能1.5倍
6.燃料電池車 ~ 水素で走る環境車
7.ダンプトラックの無人制御システム~鉱山事故が大幅減
8.プラグインハイブリッド車~給油1回で3500㎞
9.衝突回避テクノロジー ~ 事故を自動で防ぐ
10.可変速機付き無断変速機~ 搭載すれば燃費15%増し
11.接触回避技術 ~ ぶつからない車
12.ハードデスク稼動装置 ~ 産業スパイから情報漏洩防ぐ
13.IGZO液晶 ~ 新型iPad向け液晶パネル
14.次世代メモリー ~ 超快適ITライフ
15.次世代パワー半導体 ~ エコ製品の基幹部品
16.電子ペーパー ~ 曲がるデスプレー
17.球体有機ELデスプレー~ 次世代の地球儀
18.新製鉄法「COURSE50」~CO2を出さない製鉄法
19.熱間プレスによる超高強度鋼板~硬くて柔らかい鉄板
20.超高強度鋼管 ~ スカイツリーに使われた曲がらない鋼管
21.フェロコークス ~ CO2を出さない鉄原料
22.炭素繊維 ~ 軽くて強い「夢の素材」
23.亜臨海生産技術 ~ 洗剤材料を超高速で生産
24.ソープラス ~ 99%再生プラスチック
25.植物プラスチック ~ 石油不要、植物原料から生成するプラスチック
26.褐炭ガス化技術 ~ 水分多い石炭をガスに変える
27.エコシップ ~ 船舶燃費が2~3割向上
28.船舶のハイブリッド給電装置~太陽光を船内電力に
29.宇宙船の制御技術 ~ 「秒速8㎞」を遠隔制御
30.イオンエンジン ~ 「はやぶさ」の主動力
31.4K2Kテレビ ~ 空気感まで伝わるテレビ
32.フェムトセル ~ 数十メートルの狭い範囲の携帯電話基地局
33.人体通信 ~ 握手でデータ交換
34.映像検索技術 ~ 見たい場面映像を一発検索
35.スーパーハイビジョン ~ 地デジの16倍の美しさ
36.藻類バイオ燃料技術 ~ プールが「油田」に
37.白金代替え触媒 ~ 燃料電池が安くなる
38.波力発電 ~ 海面発電所
39.潮流発電 ~ 海流の流れを電力に
40.海洋温度差発電 ~ 海の表層水と深層水の温度差を利用してエネルギーに
41.海洋深層水多段利用 ~ 深海の水を冷媒に、海水淡水化の原水に
42.メタンハイドレート利用~ 近海に大量に存在する氷状物質から天然ガスに
43.資源リサイクル ~ 廃棄物を有用資源化する
44.アモルファスモーター ~ レアアースを使わない
45.精神的ストレス測定技術~ 唾液で「心の病」を察知する
46.バイタルサインセンサー~ 指先で体の疲労度合いを知る
47.知識情報処理技術 ~ 熟練工の知恵を永久保存
48.放射線で光るプラスチック~ペット樹脂で放射線判別
49.超高層ビルの制震補強 ~ 高層階の揺れ、2割抑制
50.住宅リフォーム用制震装置~古い家も地震に強くする
51.徐染用のセシウム吸着剤~ 放射性廃棄物、1%以下に
52.昆虫を使った原発災害用ロボット~ゴキブリが「原発の番人」
53.人間共生ロボット ~ ロボットが孫代わり
54.生活支援・介護・医療ロボット~孤独死をなくす
55.安全性高い在宅勤務システム~介護しながら在宅勤務の情報システム
56.リズム歩行アシスト ~ 自分で歩く能力を支援する
57.介護支援ロボット「RIBA-Ⅱ」~80㎏の人を抱き上げる
58.ネット活用の遠隔医療システム~過疎地の健康を支援する
59.超々臨界圧石炭火力発電~ 超高効率な石炭火力発電
60.全固体電池 ~ 電解質が固体の次世代リチウムイオン電池
61.エネルギーマネジメント~ 電力を無駄なく使う、ためる
62.発電力予測シュミレーション~風力発電や太陽光発電用に気象解析
63.SOFC燃料電池のセル~ 家庭で発電所並みの発電
64.次世代太陽電池 ~ 曲がる、塗れる太陽電池
65.リチウムイオン電池の負極材~電気自動車のキー部品
66.温泉発電 ~ 温泉の余ったお湯で発電
67.超大型風力発電 ~ 世界最大級の風車
68.遺伝子治療の効率化技術~ 不治の病が減る
69.自走式カプセル内視鏡 ~ 胃腸検査が楽になる
70.長寿命型の人工関節 ~ 寝たきり老人が減る
71.唾液検査でガン発見技術~ 超簡便に口腔ガンや乳ガンなど見分ける
72.新型薬「抗体薬物複合体」~副作用の少ない抗ガン剤
73.アルツハイマー病の予防薬~認知症が減る
74.貼るワクチン ~ 子供が泣かない“注射”
75.スギ花粉症緩和コメ ~ このコメ食べると春先の“憂鬱”減る
76.大規模監視システム ~ 公共の場での犯罪予防
77.双腕作業機「アスタコ ネオ」~瓦礫撤去に威力
78.RFID構造物診断技術~ 近距離無線通信技術で構造物劣化検知
79.ロボットスーツ「HAL」~着た瞬間に力増える
80.年齢まで分かる顔認証 ~ 不審者シャットアウトに活躍
81.量子暗号鍵配信 ~ 盗聴は絶対防止
82.野菜栽培密閉型植物工場~ 砂漠でも野菜栽培
83.光合成促進させる赤色LED素子~植物がぐんぐん成長
84.ハイブリッドコメ種子 ~ 複数交配で収穫量5割増す
85.育苗が不要のコメ直播技術~田植えが軽作業に
86.ウナギ、マグロの完全養殖~稚魚捕獲でなく養殖魚から採卵する
87.牛の発情検知センサー ~ 効率的な繁殖
88.芝生の10倍で育つ植物~ 砂漠を緑の草原にする
89.海水を淡水化する技術 ~ 海が人類の水瓶になる
90.地下水を飲料化するシステム~地下水が浄化膜で安心して飲める
91.ジオエンジニアリング ~ 工学的手法で地球の温度を下げる
92.ホンダジェット ~ セレブ以外も乗れる飛行機へ
93.脳波の解析技術 ~ 思念で車イスが自在に動く
94.iPS細胞の自動培養装置~ 量産化技術で長寿命化あと押し
95.iPS細胞 ~ 脊椎・頸椎損傷の治療も
96.クローン技術 ~ マンモス等が甦る
97.アンドロイド ~ 人間そっくりのロボット
98.人工光合成 ~ 光触媒で化学素材創出
99.電波望遠鏡「アルマ」 ~ 銀河系の起源を解明
100.量子コンピューター ~ 1年かかる計算を1秒で
(2)技術で強い日本が、ビジネスでも強くなるための事例研究が増加。
日本の権威ある経営学研究者の間で、日本企業事例研究が本格化する流れを大変喜んでいます。依然として、欧米理論の輸入学問が主流であるが、日本発で世界に役立つ経営学の時代が必要だと思います。先般、日経新聞に、欧米流経営の無批判的模倣を「虚業」と断じ、日本本来の組織的知識創造が活発に生きるビジネスモデルの創生として、「事業創生モデル」を提案する論文が掲載されました。(野中郁次郎・徳岡晃一郎「『知』を価値に変える経営を」日本経済新聞 経済教室 2011年10月14号 参考文献10)
排外主義でなく、国際的研究に耐えるこうした論調が当然視される風潮になることを願っています。
【2007年 日本企業事例研究の重要性がやっと経営学研究者で理解が進んだ】
野中郁次郎・勝見明『イノベーションの作法』(日本経済新聞出版社 2007年1月)
①マツダ ロードスター ②サントリー 伊右衛門 ③北の起業広場協同組合(帯広) 北の屋台
④近畿大学水産研究所 クロマグロ完全養殖 ⑤新横浜ラーメン博物館 ⑥KDDI auデザインプロジェクト
⑦シャープ ヘルシオ(ウォーターオーブン) ⑧ソニー フェリカ(非接触ICカード技術)
⑨ナチュラシシテムズ(旧NTTデータナレッジ) ナレッジサーバ(ナレッジマネジメント支援システム)
⑩サッポロビール 第三のビール「ドラフトワン」 ⑪トヨタ自動車 ハイブリッド車「二代目プルウス」
⑫はてな インターネットサービス ⑬サッカーJリーグ アルビレックス新潟
【2010年 海外、日本で日本企業事例研究が経営学研究で増加】
『世界のビジネススクールで採用されている ケース・スタディ日本企業事例集』(ダイヤモンド社 2010年6月)
① 松下電器産業:危機と変革 ② 日産自動車:再生への挑戦 ③ 富士フィルム:第2の創業
④ 資生堂:中国市場への参入 ⑤ コマツ:グローバル化の取り組み ⑥ NTTドコモ:モバイルFelica
⑦ 楽天:Eコマース事業の創造 ⑧ 旭硝子:EVAの導入 ⑨ プロダクション・アイジー:アニメというビジネス
⑩ 日本の企業家 稲盛和夫
野中郁次郎・遠山亮子・平田透 『流れを経営する~持続的イノベーション企業の動態理論』
(東洋経済新報社 2010年7月)
① エーザイ ② YKK ③ 前川製作所
④ パナソニック ⑤ セブン・イレブン・ジャパン ⑥ 公文教育研究会
⑦ 良品計画 ⑧ 三井物産 ⑨ ファーストリテイリング ⑩ キャノン
遠藤功『「日本品質」で世界を制す!』(日本経済新聞出版社 2010年9月)
①ローム 顧客訪問で半導体品質保証 ②フジクラ 顧客視点の品質管理
③ソニー 事業部単位から一元的全社管理 ④トヨタ 顧客視点のグローバル品質体制
⑤スウエーデンのサンドビック瀬峰工場 ツールクリニック ⑥カルティエ ストーリーが品質のコア
⑦エルメス 主観的絶対価値のストーリーが品質 ⑧マザーハウス 途上国から世界に通用するブランドをつくる
⑨サントリー 情緒的品質のストリーティング ⑩トヨタ 高い機能と「和」のテイストのプレミアムブランドのレクサスLS
⑪仙台子供服専門店「ベリーズベリー」 売り切れ御免の希少性 ⑫京都府宮津市 飯尾醸造 「富士酢プレミアム」
⑬資生堂 中国で日本流もてなしの店頭品質
⑭シャープ アフターサービス満足度ランキング 2009、2010年「薄型テレビ」「ブルーレイ・DVD/HDD」「エアコン」「洗濯乾燥機」で首位。即日修理率向上。
⑮イトーヨーカ堂 中国でユウジュアル・」ジャパン ⑯ヤマト運輸 台湾・中国で日本流サービス
⑰セコム イギリスで、アジアで日本流サービス ⑱石川県和倉温泉 加賀屋 台湾誘客と台湾進出
野中郁次郎・勝見明 『イノベーションの知恵』 (日経BP社 2010年10月)
① 動物園の奇跡~旭川市旭山動物園 ② 学校の奇跡~京都市立堀川高等学校
③ エキナカの奇跡~JR東日本・エキュート ④ トヨタの奇跡~トヨタ自動車・iQ
⑤ 霞ヶ浦の奇跡~アサザプロジェクト ⑥ 障害者福祉の奇跡~社会福祉法人・むそう
⑦ オフィス空間の奇跡~再春館製薬所 ⑧ 過疎の町の奇跡~いろどり
⑨ 都市の奇跡~銀座ミツバチプロジェクト
以上
(参考文献)
1.日経BP社『日経ビジネス』2011年10月10日号
2.妹尾堅一郎『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか-画期的な新製品が惨敗する理由』
(ダイヤモンド社 2009年7月)
3.畑村洋太郎・吉川良三『危機の経営-サムソンを世界一企業に変えた3つのイノベーション』
(講談社 2009年9月)
4.藤井清孝『グローバルイノベーション 日本を変える3つの革命』
(朝日新聞出版 2010年6月)
5.野中郁次郎・勝見明『イノベーションの作法』
(日本経済新聞出版社 2007年1月)
6.ハーバードビジネススクール『世界のビジネススクールで採用されている ケース・スタディ 日本企業事例集』(ダイヤモンド社 2010年6月)
7.野中郁次郎・遠山亮子・平田透『流れを経営する~持続的イノベーション企業の動態理論』(東洋経済新報社 2010年7月)
8.遠藤功『「日本品質」で世界を制す!』(日本経済新聞出版社 2010年9月)
9.野中郁次郎・勝見明『イノベーションの知恵』(日経BP社 2010年10月)
10.野中郁次郎・徳岡晃一郎「『知』を価値に変える経営を」(日本経済新聞 経済教室 2011年10月14号)
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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