佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/11/29 電子書籍端末シャープGALAPAGOS、ソニーReader12月10日発売!2010年は「電子書籍元年」ですね
読書好きの私にとって、今年2010年は「国民読書年」であるというのが年初の意識であったが、12月を迎えてみると2010年は「電子書籍元年」としてしっかり記憶されることになりそうです。本当に変化の早い1年ですね。本日11月29日、シャープは電子ブックサービスとその電子書籍専用端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」発売を12月10日より開始すると発表しました。電子ブックサービスの合弁会社TSUTAYA GALAPAGOSを12月1日設立し、新聞や雑誌を含む書籍約2万冊を配信する予定です。2011年春には映像、音楽、ゲームを加えて約20万点に増やし、配信可能なスマートフォンも発売予定です。
11月25日、ソニーは電子ブックサービス「Reader Storeリーダーストア」を12月10日より開始し、電子書籍リーダー「Reader(リーダー)」を発売すると発表しました。
ご存じのように、日本において、アップルは5月28日に「iPad」、アマゾンは8月27日「キンドル」を既に発売開始しています。漢字文字文化の日本において、米国勢の先行に対抗する日本勢の参入を期待していた私にとっては、シャープ、ソニー2社の12月サービス開始の決断は大変嬉しいニュースです。
メインプレイヤーが揃ったような気がして、私も12月には各社の配信サービスの内容と電子書籍端末を調べにお店に足を運ぼうかと思い始めました。どんな読書体験を提供してくれるのか楽しみです。皆様はどうお考えですか?
(1)ソニー「リーダー」、シャープ「ガラパゴス」、アップル「iPad」、アマゾン「キンドル」の簡単な端末比較
11月26日付日経産業新聞は、電子書籍が読める主な端末の簡単な比較表を掲載しています。○日本での発売時期、△画面の大きさ、□重さ、◇価格の順です。
【ソニー Reader(リーダー)】
○12月10日
△5型、6型電子ペーパー
□155,215グラム
◇2万円、2万5000円前後
【シャープ GALAPAGOS(ガラパゴス)】
○12月10日
△5.5型、10.8型液晶
□220、765グラム
◇3万9800円、5万4800円
【アップル iPad】
○5月28日
△9.7型液晶
□680グラム(3G通信型は730グラム)
◇4万8800円から
【アマゾン キンドル】
○8月27日(現行モデル)
△6型電子ペーパー
□241グラム(WiFiモデル)
◇139ドルから(価格は米国)
電子書籍専用端末で数年先行している欧米では、アマゾンがトップ、追いかけるソニーが第2位のシェアです。両社共に新書レベルの大きさで軽く、目の疲れない電子ペーパー仕様が特徴です。
電子書籍で後発のアップルやシャープは液晶仕様のタブレット型で、書籍だけでなく雑誌、新聞等も配信しても見やすさを考慮した複合用途型の印象です。
エコポイントが半減する12月。電器店やモバイルショップでの話題の一つは電子書籍配信サービスと電子書籍端末になるとかもしれませんね。
(2)ビジネスモデル競争でも興味がつきない4社の動向
・日経ビジネス2010/10/11号より
・日経ビジネス2010/11/22号より
4社の電子書籍サービスに強く関心を持ったのは趣味である読書の新しいスタイルへの興味という視点が一番ですが、同時に、数年来調査研究してきた対象の会社でもあることも大きいと思います。
11月18日、BIP「第3期事業リーダー実践塾」が開講しました。第1回は私が講師で『企業業績を抜本的に変えるビジネスモデル創造の事例と理論』を講義し、ケーススタディー、Q&Aをしました。
そのケーススタディーで4社取り上げましたが、その内2社が製造業のシャープとアップルです。
シャープは、1998年ブラウン管TV7位だったがその脱却を決意、2000年液晶TVを発売し、2005年“液晶のシャープ”トップブランドになり、ビジネスモデル創造、関連産業の創造もしました。今年秋より、世界初4原色の製品「AQUOSクアトロン」を発売開始しました。吉永小百合さんが登場するTV広告でご存知ですね。
また、太陽光発電システム販売では先発であったが、海外企業との競争に直面し、最近は欧州や米国で太陽光発電事業自体を事業化するビジネスモデル開発に積極的に取り組み始めています。
よくご存じの通り、1999年最後発の携帯電話事業では2005年携帯電話国内シェア第1位となり、2010年より米国モバイルキャリア向けスマートフォンを発売し、来年には3Gカメラを搭載したスマートフォンを国内、海外で発売予定です。
更に上述の通り、2010年12月10日より電子書籍専用端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」を発売し、電子ブックサービス合弁会社TSUTAYA GALAPAGOSと一体事業モデルでアップル、アマゾンを追撃する。事業名称もGALAPAGOSと名付けたこのサービスは、ネットワークサービスに特化した「クラウドメディア事業」第1弾のサービスと商品で、来年春には第2弾として、映像やゲームなどにフォーカスした商品やサービスを検討しているといわれる。そのためのスマートフォンを発売する予定である。
電子ブックストアサービスの特徴の一つは「自動定期配信サービス」です。新聞や月刊誌なども定期購読できるという。フォーマットは、シャープが自社開発した表現言語「XMDF」に改良を加えた「次世代XMDF」に加え、ePUB、HTML、PDFなどに対応する。XDMFは多くのキャリアの携帯電話に採用されおり、電子書籍のフォーマットとして実績があり、日本独自の縦書きやルビなどもサポートしているのも強みであると言われるのも頷くところです。NTTドコモ、大日本印刷等との連合も発足し、ネットワークプラットフォーム市場でのイニシャティブを取るという野心的ビジネスモデルへの挑戦が見えてきますね。
アップルのiPod・iPhone による製造業と情報配信サービス業一体型ビジネスモデル変革については、BIエッセイ2009/09/14 「読書の秋③ iPod・iPhoneと連続するAppleビジネスモデル創造の秘密を探る」(詳細はこちら>>)をお読み頂ければ幸いです。日経ビジネスが先週11月22号で「アップルの真実」という特集もしています。
ソニーは、2004年に日本で「リブリエ」名称で電子書籍端末を発売したが3年で撤退した。その後、米国を中心に最大手のアマゾン「キンドル」に「Reader(リーダー)」で対抗し、2009年には約30%のシェアまで迫り、欧州や豪州など13ケ国で展開し、この12月満を持して日本市場に再参入する。配信サービスで今年、凸版印刷、KDDI等と共同出資会社を設立した。ソニーも製品とコンテンンツサービス一体型ビジネスモデルでの挑戦である。
私たちの身近な製品やサービスの変化には驚くばかりですが、利用者が使いやすく、スマート(かっこいい)なライフサタイルであることが大きな要素になりつつあるようです。
その点では、昔から「お客様第一」ということは言われ続けてきましたが、最近「顧客感動」という言葉が多く使われるようになりつつあります。「顧客満足」では不足で「顧客感動」が事業成功に必要なのだという意味です。「顧客満足」を100%得ること自体が簡単なことではありませんが、更にそれ以上の「顧客感動」をめざして、世界で多くの企業が産業間の領域を超え再編成する激烈な競争をしているのですね。
表面化していない顧客の潜在ニーズを先導し、感動をもたらす製品やサービスを創造するためにはどうしたらよいのでしょうか? 私は、多面的視野と多様な専門家ネットワークの粘り強い努力が大切であると痛感する昨今です。皆様はどうお考えでしょうか?
以上
(参考文献)
1.日経産業新聞 2010年11月26日号
2.佐々木昭美 BIエッセイ2008/10/06 「シャープ町田会長が語る液晶TV、携帯電話、太陽電池への連続改革」
3.町田勝彦『オンリーワンは創意である』(文春新書 2008年9月)
4.組織学会『組織科学』(白桃書房 2008年9月)
*特集 イノベーションを創造する人と組織-「シャープ技法」から分析した同社のイノベーションシステム
5.『日経ビジネス』2009年7月6日号「シャープ維新」、2010年11月1日号「シャープ、加速する構造転換」
6.北田秀人『シャープ「AQUOS」ブランド戦略』(東洋経済新報社 2010年5月)
7.佐々木昭美 BIエッセイ2009/09/14 「読書の秋③ iPod・iPhoneと連続するAppleビジネスモデル創造の秘密を探る」
8.スティーブン・レヴィ『iPodは何を変えたのか?』(ソフトバンク クリエイティブ(株) 2007年4月)
9.大谷和利『iPodをつくった男』(アスキー新書 2008年1月)
10.竹内一正『スティーブ・ジョブズ 人を動かす神』(経済界 2008年12月)
11.『日経ビジネス』2010年11月22日号「アップルの真実」
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