佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2010/11/15 野村克也楽天名誉監督が、「巨人軍V9=持続的勝利」の真髄を語っています

 野村克也東北楽天ゴールデンイーグルス名誉監督(南海、ヤクルト、阪神、シダックス、楽天監督を歴任。以下、野村監督と称します)が人間学を学ぶ月刊誌『致知』12月号に登場。村上和雄筑波大学名誉教授との対談で、縦横無尽に野球道、野球人生を語っています。

 東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地がある宮城県出身である私は、そのせいだけではありませんが、プロ野球界60年の野村監督が語る多くのことに大変興味を持ち、大いに刺激を受けました。その中から、以下3点をご紹介します。

 一つは、「巨人軍V9=持続的勝利」をどう見ているかです。民間企業でいうと「持続的成長」する強い会社の真髄は何かということに通じているような気がします。

 もう一つは、同時に弱いチームの特徴について語っていることです。野球と民間企業とは違う面もあると思いますが、同じ人工的人間組織として学ぶ面が多いにあると思っています。

 3つ目は、この対談のタイトルでもある「持続心こそ、運命をひらく鍵である」との信念に惹かれるものがありました。
参考資料

(1)「巨人軍V9=持続的勝利」から見えてくるものは何か

 野村監督は、「巨人軍V9=持続的勝利」について、王・長嶋選手ら選手の野球熱心さを指摘しています。当たり前のことですが、それができる組織が強いのですね。皆様の会社は当然幹部先頭に仕事熱心ですよね?
 
 「やっぱり、中心なき組織は機能しません。鑑(かがみ)になる人が組織にいるといないとでは、チームづくりが全然違う。
 鑑というのは、例えば王や長嶋のことです。巨人から南海にトレードされてきた選手が何人かいましたが、彼らが口を揃えて言ったのは、「王さんや長嶋さんがあれだけやるから、我々もボヤボヤできないですよ」と。
 要するに野球の技術はもちろん、私生活も含め、模範となる選手です。「王に見習え」「長嶋を見習え」と言える選手がいると、チームづくりがしやすいんですよ。
だからあの巨人のV9という偉業は、単にいい選手が揃ったからでなく、いい選手たちがみんな熱心に取り組んだんでしょう。」

同時に指揮官つまりリーダーの重要性を語っています。

「また、その指揮官だった川上さんも偉かったと思います。ある時ミーティングに長嶋が遅れてきて、しかも筆記用具を持たず、手ぶらだったそうです。川上さんは長嶋を注意して、筆記用具を取りに行かせて、その間、ミーティングは中断したと聞きました。
鑑となる選手とはいえ特別扱いせず、礼節を乱した時はきちんと叱る。また、そうすることで他の選手も引き締まるんです。だから、強いチームには節度、いい意味での厳しさがあります。」(参考文献1:P18)

(2)弱いチームに共通するものは何か

 逆に弱いチームは厳しさがなく、仲良し組織の傾向が強いと警告を発しています。

 「仲良しチームになるんですよ。ヤクルトに行ったばかりの頃、ミスした選手がベンチに帰ってきた時、「ドンマイ」と声を掛けた選手がいたんです。「何がドンマイじゃ、このバカやろう」って烈火の如く怒ったんですよ。プロはミスが許されない世界です。その感覚がなくなっていくんです。
 優勝を目指して戦っていることはもちろん、プロは高度な技術をお客様に見てもらわなければいけない。どう考えても、プロの世界ではミスは許されないし、厳しくて当たり前なんです。その後、ヤクルトでは慰めの言葉は一切禁止しました。」

 そして、やはり組織はリーダー以上にならない。一番成長すべきはリーダーであると述べています。

 「あと、これは強い、弱いに限らず、どのチームにも言えることですが、組織はリーダーの力量以上にはならない。これは当たっていると思います。
 強いチームにするにはスカウトや育成、フロントの体制などいろいろ要件があるけれども、一番力を注ぐべきは監督が成長すること。そうでないとチームのレベルが上がっていきませんね。」(参考文献1:P19)

(3)「持続心こそ、運命をひらく鍵である」

 超一流の人物に共通するのは謙虚さだと対談のお二人は共感しています。

野村監督は、父親が戦死し、病弱な母親が貧しさの中で育ててくれた少年時代の厳しかった体験が発奮の原点になった。また不器用な自分を自覚してからは、勝つために24時間考え、練習し、研究し続けたと述べて、後輩にこう諭す。鈍感になっていないか?

 「人間の最大の悪は何か、それは鈍感だそうです。超一流の素質を持っていても、思想が二流で鈍感だと成長がとまります。・・(略)・・人間が鈍感になるのは、親を思う気持ちとか、感謝とかが薄いからなんじゃないのかと最近感じますよ。鋭い感性の原点は親を思う心が起点になると思います。」

 そして、自分の野球人生に対する姿勢をこう結んでいます。

 「そう、止めるのが一番よくない。私は六十年間野球を続けてきましたが、何度も何度も逆境に落とされてきました。しかし、南海をクビになってもロッテや西武が拾ってくれたし、阪神をクビになってもシダックスや楽天が迎え入れてくれた。それは「見てくれている人がいる」と信じて、真摯に野球道を求めてきたからです。何度跳ね返されても、諦めず、能力のすべてを尽くして挑戦し続けることが、運命をひらく鍵であることを実感しています。“努力に即効性なし”と心得ておいたほうがいいいです。」(参考文献1:P20)

 プロの生き方の厳しさに心が洗われました。感謝!!

以上

(参考文献)
1.『致知』2010年12月号(致知出版社 2010年11月1日発行)

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