佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/05/24 政治経済を読むシリーズ2 暴論に騙されないための経済入門書!辛坊治郎・辛坊正喜「日本経済の真実」
政治経済を読むシリーズ2は、今話題の本『日本経済の真実-ある日、この国は破産します』を取り上げます。4月25日発売後1ケ月で22万部突破した経済入門書である。読売テレビ解説委員長辛坊治郎氏と日本総研情報サービス代表取締役専務辛坊正記氏の兄弟が執筆した共著です。非常にわかりやすい日本経済の入門書だと思います。誰でも理解しやすいように工夫して編集しています。また、主要な政治経済のテーマ、論点を正面からデータを示して論じています。以下、読書メモを参考に記します。是非、一緒に論議したいものですね。
(1)発売1ケ月で22万部突破!国を滅ぼすメディアの「アホ」・「犯罪」に近い負の影響力に対し、読売テレビ解説委員長=メディア人自らが本で経済の真実を語る
私もメディアから流れる俗説に眉を顰めていた一人であったので、メディア人自らがその「アホさ」加減、「犯罪」に近い事態と述べる程の深刻な事態に、自分の感情や理論の提起ではなく事実のデータを持って経済の真実を述べた本の出版は、堂々としたメディア人の見識であると思う。「第4の権力」であるメディアの“暴走”が正常化されるのに役だってほしいと念願しています。一見激しい言葉は、著者の止むにやまれぬ思いがそうさせたのではないか?そう思います。それ程、日本の政治経済の実態は深刻なのだと語っています。日本人の一人として、我々国民に発した警告の書でもあります。
(2)「第1章 暴論に騙されないための日本経済入門」
~暴論に騙されないために、まず経済の基礎知識をわかりやすく説明しています。
・GNPとGDPの違いの意味する所の違いは重要です。給料はGDPに左右される。・名目GDPと実質GDPとの違いは?実質を強調する政府・メディアの危険な意味を見抜く。デフレでは、名目GDPがマイナスでも実質GDPプラスの時がある。
・経済成長の三要素(労働力・設備投資・技術力)の動向を見る。どうしたら設備投資は増えるのか。どうしたら労働力は増えるのか
・貯蓄は、元気度を決める設備投資に使われているか。
・政府借金は、国民の貯金を郵貯、銀行等が国債買って資金提供して補っている。郵貯の資金提供の80%は国債購入である。
・国民の家計貯蓄率は、1991年頃の約15%台から数%台に減っている。
(3)「第2章 歴史から学ぶ~なぜ日本はこんな国になったのか~」
~昔元気だった日本、高度成長後に何が起きたのかを解説しています
団塊の世代である私の成人から約20年(1968年~1989年)は、高成長の時代であった。40台から今までの約20年は、低成長の時代であった。そのことを私は2年前にBIエッセイで書いたことがあります。(BIエッセイ2008/02/04 『仕事・愛・未来-雪の鳴子温泉で朝まで熱い男女55名』詳細はこちら>>)20年以上たったが、1989年12月29日日経平均株価3万8915円87銭の史上最高値は、未だ一度も超えていない。・グロ-バルと少子高齢化で成長のエンジン(労働力・設備投資・技術)は?
・加工貿易の国ジャパンは、貿易収支が減少し海外所得と2005年逆転した。
・一人当たり名目総所得は、世界トップクラスから20位程に低下した。
(4)「第3章 日本沈没を食い止めた小泉・竹中改革」
~データから見ると、小泉・竹中改革で所得、失業率、経済成長率、財政、株価を改善した真実を示す
2001年に発足した小泉・竹中改革が経済悪化の元凶とする論調が、学者・メディア・ほとんどすべての政党(自民党の一部、民主党、国民新党、社民党、共産党等)で小泉首相退任後に暴風雨となった。そして、小泉改革を否定した自民党麻生内閣、鳩山民主党・社民党・国民新党 連立政権となった。本当はどうだったのだろうか?データが示す真実は経済悪化を食い止めたことが明白である。・傾向的に減少傾向の給料(名目雇用者報酬)は、2005年~2006年プラスに転じた。
・失業率、高校内定率が改善した。
・GDPがプラスに転じた。特に名目GDPがプラスとなった。
・継続上昇していた国債が均衡となり、税収が増加し、財政改善示した。
・その結果、成長期待から株価が大きく改善した。
・格差を示すジニ指数が急激に悪化したのは1997年金融危機から小泉政権誕生前夜まで。「小泉時代が格差の元凶」というのは間違いが明白である。
・国民に自立を求めた小泉政権の成長戦略
(5)「第4章 政権交代への失望」
~労働者保護で失業率UP、友愛政治と経済破綻、成長戦略が見えない夢物語等
病気の場合は、検査・診断して病名がはっきりして始めてターゲットを絞り込んだ治療で病気を治す。経済の病気をまずどう診断するかが重要だと思います。鳩山民主党・社民党・国民新党連立政権はどんな政策を実行し、経済はどうなっているのでしょうか?・公共事業削減は、小泉構造改革で導入済みの路線。
・郵政や道路の扱いは、「官から民へ」の動きは逆走。
・鳩山政権は、パイを大きくするよりまず配分を先行させる路線だが、問題は経済や財政を破綻させないでやれるかどうかが課題。ガソリン税暫定税率を実質維持して尚税収上回る国債発行。
・国内産業・設備投資なくして中小企業の事業、国内雇用、給料は生まれない。
・製造業への派遣禁止、登録型派遣禁止は、単純労働は日本での採用を止め、海外に行けと言うに等しい政策ではないか?一方で、正社員の流動化を事実上禁止する労働法制には手を付けない。
・結局、最も痛みを受けるのは、弱い家計や中小企業である。
(6)「第5章 日本を滅ぼす5つの「悪の呪文」」:「1 経済の豊かさより心の豊かさが大切」「2 大企業優遇はやめろ!」「3 金持ち優遇は不公正だ!」「4 外資に日本が乗っ取られる」「5 金をばらまけば、景気が良くなる」
メディア人が、メディアに対してこれ程厳しい言葉にはビックリする程です。「日本がこんなことになってしまったのには、メディアの責任もあります。ぬくぬくと既得権益のぬるま湯につかりながら、お題目のようにきれいごとを並べる政治家、ニュースキャスター、評論家が日本を破滅に導くのです。
そんな連中が口癖のように語る言葉がいかに間違っているか、ここで総まとめしておきます。これら「悪の呪文」から解き放たれることこそが、日本再生の原点です。」(参考文献1 192ページ)
辛坊氏は、日本を滅ぼす5つの「悪の呪文」」に対して、その間違いをわかりやすく説明しています。是非、読んでみてください。
悪の呪文1 「経済の豊かさより心の豊かさが大切」
悪の呪文2 「大企業優遇はやめろ!」
悪の呪文3 「金持ち優遇は不公正だ!」
悪の呪文4 「外資に日本が乗っ取られる」
悪の呪文5 「金をばらまけば、景気が良くなる」
辛坊氏は、「日本の最大問題は、海外に頼らず1億3000万人を食わす方法はないという点です。」と述べています。
日本の本質的生存課題を避けた議論が、俗説として一定の知識人の中でさえ横行する日本の現実に、辛坊氏は真実を武器に正論を展開しています。経営者・事業リーダーはもちろん、私たち国民全員に未来に立ち向かう勇気と行動を先頭に立って伝えていると強く感じました。やはり、経済学は学問的には元々政治経済学=ポリティカルエコノミーであるという言葉を改めて実感した次第です。(BIエッセイ2010/02/08 『日経2009年エコノミストが選ぶ経済図書第1位 猪木武徳『戦後世界経済史』を読んで』詳細はこちら>>)
以上
(参考文献)
1.辛坊治郎・辛坊正喜「日本経済の真実-ある日、この国は破産します-」(幻冬舎 2010年4月25日 第1刷)
2.佐々木昭美 2008年02月04日 BIエッセイ『仕事・愛・未来-雪の鳴子温泉で朝まで熱い男女55名』
3.佐々木昭美 2010年02月08日 BIエッセイ『日経2009年エコノミストが選ぶ経済図書第1位 猪木武徳『戦後世界経済史を読んで』
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