佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

 INDEX 

2009/11/30 “マネジメントの父”ドラッカー生誕100年:今も経営を動かすドラッカー

今月11月は、“マネジメントの父”と称されるドラッカー生誕100年である。

皆様もご存知のように、経営者・組織人・ビジネスマン・学者等でドラッカーを知らない人は世界中にいないと言われる程有名な方である。1909年11月19日、オーストリア=ハンガリー帝国のウイーンで生まれ、米国に移住して活躍し、2005年11月11日に亡くなった。文字通り20世紀経営学の巨人と言われる。

ドラッカーは亡くなったが、その知識は現在に生きている。21世紀は知識が社会を動かし、経営を動かす割合が益々増大する「知識社会」であるとされる。

日経産業新聞2009年11月19日号は、「マネジメントの父生誕100年」特集で3人の識者によるドラッカーの言葉と解説を掲載しています。

(1)ドラッカー百科:上田惇生著『ドラッカー 時代を超える言葉~洞察力を鍛える160の英知』とピーター・ドラッカー著、牧野 洋訳・解説『ドラッカー 20世紀を生きて-私の履歴書』

参考文献
ドラッカーの生い立ちと人生を自ら語った絶好の著作が日本にある。2005年2月に日本経済新聞紙面「私の履歴書」に27回連載された。その連載に、牧野 洋氏の解説・人生年表・著作一覧・論文一覧を加えたピーター・ドラッカー著、牧野 洋訳・解説『ドラッカー 20世紀を生きて-私の履歴書』(参考文献9)である。

最近、膨大で広範なドラッカー英知の百科全書を目指した好著が出版されました。今年10月に出版されたドラッカー学会代表で、ドラッカー主要著作の翻訳者である上田惇生氏著『ドラッカー 時代を超える言葉~洞察力を鍛える160の英知』(参考文献10)である。学生、新入社員の方も気軽に読めます。この本を起点に一層深める卓越した良書と思います。是非、おすすめです。

経営の常識として良く知っている言葉の何と多いことか。これもあれもドラッカーの言葉かとその観察眼と現実に生きる言葉に唸る、驚く。お読みになった方は同じ思いの方が多いのではないでしょうか。

(2)未来の変化を今にみる社会生態学者という慧眼

参考文献 私の本棚
私の本棚にもドラッカーの著作が多くあります。(写真参照)私がドラッカーの著作を初めて読んだのは、30数年前の野田一夫監修・現代経営研究会訳『現代の経営』上・下巻(ダイヤモンド社)である。20代に読んだ色褪せた上・下2冊は、今でも大事にしています。(写真参照)その後の膨大な著作も多く読んだ。私もこれ程読み続けた経営学の著者は他にないと思います。

ドラッカーが観察し、発信し続けた知の範囲は広い。生誕100年に当たって、主要な著作を整理することで、ドラッカーへのささやかな補助線を書いてみます。

・『現代の経営』(1954年発表)
事業の経営機能はマーケティングとイノベーションであり、それを担うマネジャー(経営担当層)の役割、組織、人事等を論じた。ドラッカー経営学の原典と称される。

・『創造する経営者』(1964年発表)
事業を営む企業を中心に、経営担当層(Manager)が成果を達成するための経営戦略の多く(コア・コンピタンス、ABC会計等)を提案した。

・『断絶の時代』(1969年発表)
断絶とは地殻変動の意。グローバル化、多元化、知識の時代、企業家の時代と特徴づけた。
先進国政府部門の民営化の動きが本書から始まったとされる。

・『マネジメント-課題、責任、実践』(1973年発表)
マネジメントは能力・技能・知識だけでなく責任・実践等広い課題を持つ。企業だけでなく病院・大学・政府機関のマネンジメントの重要性や普遍性と多極性の統一を指摘。

・『見えざる革命』(1976年発表)
年金基金が株式過半所有の時代到来、人口構造の激変と高齢化の未来を描いた。階級間の所得分配から、就業者と退職者高齢者との間の問題に移行することを指摘した。

・『イノベーションと企業家精神』(1985年発表)
イノベーションと企業家精神は、天才や気質でなく、誰でも血と汗でできるとした。 企業家精神は小企業だけという19世紀の考えを否定し、大企業の多様な企業家を指摘。

・『新しい現実』(1989年発表)
人的資源の中心が組立ラインの肉体労働者からテクノロジスト(高度技能技術者)へ。
セポイの反乱、明治維新による非植民地化の意義、「社会の救済」というソ連崩壊見通す。

・『ネクスト・ソサイエティ』(2002年発表)
歴史に見られない未来が到来し始まっている。若年人口の減少、テクノロジスト・知識労働者が主流。事業の発展は内部からでなく、提携・合弁・ノウハウ契約等から発生。企業形態がシンジケートや連邦に変わり、トップマネジメントの責任と仕事が変わる。
経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変える時代が来た。

・『プロフェッショナルの原点』(2005年発表)
ドラッカーの遺作。仕事で成果をあげるための95のアドバイス。第1章 成果をあげる能力は習得できる 第2章 汝時間を知れ 第3章 いかなる貢献ができるか 第4章 強みを生かす 第5章 最も重要なことに集中する 第6章 意志決定を的確に行う 結論 成果をあげる能力は習得しなければならない

ドラッカーが20世紀に創造し続ける膨大な知的活動の原動力・本質については長い間不確かであった。今回、上田惇生著『ドラッカー 時代を超える言葉~洞察力を鍛える160の英知』に気づかされた思いがします。

『ドラッカー自身は自らを社会生態学者と定義する。自然生態学者が自然を見て変化を教えるように、ドラッカーは社会を見て変化を教える。その変化が本物の変化かどうかを見、いかに使うかを教える。・・(略)・・つまるところ、ドラッカーとは見る人である。』(参考図書10:はじめにⅤ)

ドラッカーは、予測ではなく、現在既に起きている未来への変化を見る人であった。
そして、未来を創造する自己刷新の意義を説き続ける人であった。

(参考文献)
1.日経産業新聞2009年11月19日号 18面(日本経済新聞社)
2.P・F・ドラッカー著、野田一夫監修・現代経営研究会訳『現代の経営』上巻(ダイヤモンド社 1975年 35版)
3.P・F・ドラッカー著、野田一夫監修・現代経営研究会訳『現代の経営』下巻(ダイヤモンド社 1976年 35版)
4.P・F・ドラッカー著、犬田充・村上和子訳『マネジメント-課題・責任・実践』(自由国民社 1975年 第1版)
5.P・F・ドラッカー著、佐々木実智男・上田惇生訳『見えざる革命』(ダイヤモンド社 1976年 初版)
6.P・F・ドラッカー著、上田惇生訳 ドラッカー選書⑩『[新訳]新しい現実』(ダイヤモンド社 2004年 第1刷)
7.P・F・ドラッカー著、上田惇生訳『ネクスト・ソサイエティ-歴史が見たことのない未来がはじまる』(ダイヤモンド社 2002年 第1刷)
8.P・F・ドラッカー・ジョゼフ・A・マチャレロ著、上田惇生訳『プロフェッショナルの原点』(ダイヤモンド社 2008年 第3刷)
9.ピーター・ドラッカー著、牧野 洋訳・解説『ドラッカー 20世紀を生きて-私の履歴書』(日本経済新聞社 2005年8月8日 1版1刷)
10.上田惇生著『ドラッカー 時代を超える言葉~洞察力を鍛える160の英知』(ダイヤモンド社 2009年10月8日 第1刷)

=================================================================

≪BIP ブックモール≫
読者の皆様へより便利に参考情報・参考書籍をご紹介するために、Amazon.co.jpアソシエイト・プログラムを採用しています。


トップへ

サービスのご案内

無料相談会

お問い合わせ

コラム「ミニ講座」

BIエッセイ

特集コラム

採用情報

無料メルマガ

無料メルマガ
BIPニュース
配信中!

BIPからのお知らせ、ビジネスに役立つ情報、佐々木昭美のBIエッセイ要約等、月2回配信!

メールアドレス:

東北復興支援

ページ上部へ戻る
Top