2018/01/09 第23回「「働き方改革」の成否は取り組みの「バランス」と「継続」にかかっている」
「働き方改革」に伴う企業の動きが活発になっています。
ただし、その中身としては、残業削減や時間短縮ばかりをひたすら追いかけていたり、とりあえず副業を認めることであったり、とにかく在宅勤務を始めることであったり、どうも目先の局所的なことだけに矮小化された動きがまだまだ多いと感じます。「働き方改革」イコール「時短」「副業」「在宅勤務」のような取り組みになっている企業がたくさんあります。
もちろん、経営者や人事担当者たちの中には、それではダメだと気づき始めている人はたくさんいて、もっと総合的な取り組みを模索し始めていますが、何をすべきかを考えれば考えるほど、その難しさに直面していろいろ悩んでいるのが実態ではないでしょうか。
この「働き方改革」には、それぞれ置かれた立場によって、大きく二つの側面があります。
まず、会社側から見れば、「働き方改革」で目指す主題は「高付加価値」と「高生産性」です。社員の働き方が今までと同じままでは企業の競争力が高められないので、それを変えていかなければなりません。
一方、働く人の側は、「働き方改革」によって自分たちが働く上での制約条件を回避して、より働きやすい環境を作ることが主題になります。ここでいう制約条件とは、一般的なものでは育児、介護、持病などによる、働く時間や場所、仕事内容に関する制約です。
例えば、決められた就業時間帯に合わせることが難しかったり、何かあったときに自宅にすぐ戻れる場所でなければならなかったり、他にも大学などでの学び直しや地域活動などが理由になることもあります。
「働き方改革」の難しさというのは、この二つの側面がトレードオフの関係になりがちだということにあります。
例えば時短であれば、会社側は生産性を重視しているので、要求する仕事量を簡単に減らそうとはしません。結果として働く人の側が多くの負担を背負うこととなり、隠れて仕事をするサービス残業が増えたとか、残業対象でない管理職に仕事が集中するといったことがおこります。時間を短くすることばかりが優先されて、仕事が放置されるケースも見られますが、これは会社側のマイナスが大きいでしょう。
このような偏った負担は長続きせず、本質的な問題解決にはなりません。
ここ最近、「在宅勤務」や「副業解禁」が進んでいますが、なぜかと言えば、会社側と働く人の側の双方にメリットがあるからです。
働き方や時間の使い方での自由度が増す働く側のメリットはわかりやすいですが、会社側にとっても「在宅勤務」には通勤費削減のようなメリットがありますし、「副業」には自社内では経験できない人材開発上のメリットが考えられます。また、これらの制度導入で企業イメージを向上させて、より優秀な人材を求めたいという意図もあります。もちろんデメリットもありますが、両者ともにメリットが見出せるからこそ、物事が進むのです。
「生産性」があがって「付加価値」が高まれば、会社の業績は上がり、仕事はやりやすく楽になり、それは会社と働く人のどちらにとってもメリットしかありません。しかし、どちらか片方に負担が偏ると、その取り組みは進まなくなります。
「働き方改革」を進めるには、“背反”しがちなことを“両立”させなければなりません。
また、このメリットと負担は、その時の状況によってどんどん変化していきます。「時短」「副業」「在宅勤務」も、改革のきっかけとしては大切ですが、例えば世間一般への普及度合いや社内の状況によって、やるべきことは変わってきます。様々な状況を見極めながら見直しを継続していかなければなりません。
私たちのような専門コンサルタントへのご依頼も、この「バランス」を見るための第三者視点での情報提供、「継続」のための総合的な施策の企画や実行支援といったところが多くなっています。
これらの取り組みは会社主導でおこなうことが大半なので、ともすればそちらの都合が優先されてしまいます。会社としては、より強く「バランス」を意識しなければなりません。
「働き方改革」の成否は、すべての関係者にとって好ましい状況を作り続けることができるかどうかにかかっています。常に「バランス」を見極める目と「継続」した取り組みが必要です。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
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