2016/07/27 【FC】「法人企業がフランチャイズ加盟を検討する際のポイント」
こんにちは。BIPの高木 仁(たかぎ ひとし)です。
7月の頭に、「ビジネスモデル設計演習」の講師を務めました。
今回の演習では、「ホテル」のビジネスモデルを分析・設計していただきました。参加者全員、ビジネスモデルキャンバスは初めてでしたが、チーム力を発揮して大いに議論をしていただきました。
ホテルの経営方式や運営の仕方は、いくつかの類型に分けられますが、その中にはフランチャイズ方式によるものが存在します。すでにホテルを経営している法人企業が、チェーンのブランド力や運営ノウハウ、集客システムを得て、経営を安定化していくことを目的にフランチャイズに加盟するケースがあります。
最近、法人企業が事業多角化を図っていくために、フランチャイズに加盟することを検討するケースが増えているようで、私の元にも、そのような相談が多く来るようになりました。
第14回「フランチャイズ加盟による事業多角化とは」では、法人加盟の概略を解説しましたが、今回は、法人がフランチャイズ加盟を検討する場合のポイントも含め、もう少し解説を加えたいと思います。
■法人のFC加盟による事業多角化
事業の多角化を考える場合、下図のような成長戦略マトリクスで整理できます。「事業領域」と「顧客」の2軸を、「現状」「隣接」「異種」の3つに分類し、3×3マトリクスで事業戦略の方向性を考えます。
このマトリクスを元に、フランチャイズ加盟によって事業多角化を図る際の考え方や、その例を下に整理しました。
<A領域>
既存事業で顧客を増やしていく領域で、フランチャイズの場合、通常は既存事業の看板をおろして、加盟した本部の新たな看板で行っていくことになります。主には、コンバージョン型と呼ばれるタイプで、同業種の事業者を同一の商標・サービスマークの下にチェーン化するものです。自社のブランド力や情報収集力、経営ノウハウが不足している場合には、本部が保有するこれらの資源を活用することができます。不動産業や建築業に多くみられ、先に述べたホテルのケースもこの領域になります。
<B領域>
既存事業と比較的近い事業へ展開する領域で、フランチャイズの場合、飲食(宅配ピザ)→飲食(居酒屋)など、同じ業種の他業態へ加盟するタイプになります。異なる顧客特性を持った事業を組み合わせることで、企業全体として、売上を安定させることができます。例えば、宅配ピザ事業者が居酒屋フランチャイズに加盟するようなケースが考えられます(宅配ピザ:休日、悪天候時に注文が多い ⇔ 居酒屋:平日夜が中心。悪天候時は来客が少ない)
<C領域>
既存事業とは異なる事業へ展開する領域で、事業のリスク分散効果が最も発揮されるものです。例えば、建設業が学習塾フランチャイズに加盟するようなケースです。この領域で考える場合、新規事業に活用できる経営資源(ヒト・モノ・ノウハウ)が、基本的には自社内にはないため、フランチャイズ本部のノウハウ、指導力が不十分だとリスクばかりが高くなるので注意が必要です。
■シナジー効果の発揮か?リスク分散か?
※この観点は、以前のコラムでも解説していますが、重要な考え方なので再度解説します。
■シナジー効果? >>>
「シナジー」には、相乗効果や共同効果という意味があります。複数のものが作用しあって効果を高めることです。企業が新規事業を展開しようとする場合、通常、既存事業とのシナジーを考えます。例えば、「保有技術を活かした開発」「同一の製造ラインでの製造」「現在の販売チャネルの活用」「仕入や販売の共有化」などです。以前のコラムでは、富士フイルムを事例としてあげています。
■フランチャイズ加盟ではどうか? >>>
フランチャイズ加盟による多角化という手段を取る場合、既存事業とのシナジーをあまり考える必要は無いと言っても過言ではありません。むしろ、既存事業の弱みを補う、出来る限り離れた事業へ加盟したほうが良いとも言えます。つまり「リスク分散」という考え方です。
また、フランチャイズ本部は、加盟者が当該事業に関して未経験であることを前提として教育システムなどの設計をしています。このノウハウを素直に吸収することが重要です。フランチャイズ加盟によって事業を成功するためには、本部から提供されるノウハウをゼロから学び、吸収し、素直に実行していく姿勢が大事です。下手に経験や知識があると素直に指導を受けられず、結果的に失敗してしまうケースも多くなります。
ただし、前述したとおり、フランチャイズにも様々なタイプがあるため、自社の理念、戦略ドメイン、ビジョンなどと照らし合わせ、自社に最も適した方法を取る必要があります。
■法人企業が加盟を検討する際の5つのポイント
法人企業が、フランチャイズ加盟を検討する際のポイント(自社のチェックポイント)を5つ挙げました。
①FC加盟への目的は明確か >>>
● 目的が不明確であると、成功かどうかの線引き、伸長、撤退の判断もできない。
● このような状況は従業員の勤労意欲にまで悪影響を与える。
● なぜ加盟するのかという目的を明確にすることが重要。
②FC加盟の重要性と意義をトップ自ら社員に伝えているか >>>
● 経営者の持つFC加盟への考えが、FC部門に配属された従業員の意欲を左右する。
● FC加盟の将来への必要性、成功への確信を語ることが理想。
● FC加盟にかける意気込みを全従業員に伝えることが重要。
③将来構想、ビジョンを明示したか >>>
● 将来構想が重要であり、本部任せにすることなく自社で打ち立てることが大切。
● 将来像(ビジョン)が明確になると、従業員も安心感を持つ。
● ビジョンにより具体的な計画も立てやすくなり、PDCAサイクルも正確に回せる。
④エース的人材を投入できるか >>>
● FC部門に配属された従業員は疎外感を感じることが多くなる。
● 人員整理要員を配属すると、良いFCチェーンに加盟しても成功確率は極めて低くなる。
● 各部署のエース的な人物を配属させることが重要。全社的な意思の結束も可能に。
⑤情報収集に時間をかけたか >>>
● FC加盟までに十分に時間をかけ、よく検討することが重要。(段取り八分)
● 不安な側面を残したまま加盟に踏み切って失敗した例は数多くある。
● 経営資源(ヒト・モノ・カネ)を有効に活用することで多くの情報を入手することが可能。
今回は、法人企業がフランチャイズ加盟を検討する際のポイントについて解説しました。
次回以降のコラムでは、実際にフランチャイズ加盟を検討し、契約していくまでの流れや、本部を見極めるポイントなどについて解説したいと思います。
高木 仁(たかぎ ひとし)
コンサルタント(IT企業 企画提案力強化・人材育成、フランチャイズ本部構築)
私は、フランチャイズコンサルを専門領域の一つにしており、フランチャイズ本部の構築や本部機能の強化などの支援をしています。このコラムでは、フランチャイズビジネスの情報や、フランチャイズ事業化を検討中の皆様に役立つ情報を中心に発信していきます。
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