2016/03/04 第7回「コーチングとコンサルティングとの違い」
コーチングとコンサルティングでは、クライアント(受ける側)の姿勢に違いがあります。
コンサルティングでは、企業などのクライアントは受け身でいられますが、コーチングでは、クライアント(主に個人)は受け身ではいられません。クライアントに自ら問題を解決しようとする自己啓発力の姿勢が必要です。
コンサルティングでは、クライアント(特に企業)に対して、専門知識を活用して、客観的に現状業務を観察して現象を認識、問題点を指摘し、原因を分析して、対策案を示し、クライアントの手助けをします。この場合クライアントは、その対策案を理解し問題解決を実践する受け身の姿勢でいられます。
コーチングでは、クライアント(主に個人)は受け身の姿勢では始まりません。誰もがコーチを必要だと思っています。しかし、誰もがコーチを頼もうと望んでいません。また、「周囲の人があなたにはコーチが必要であると思っている」ことを知ろうとしません。クライアントが自己啓発を望む積極的姿勢がなければコーチを希望しません。
ところが、スポーツ界では、コーチの指導を歓迎しています。それは、クライアントがさらに良くなるためには、専門家の目が必要だと選手は認識しています。クライアントは誰にも負けたくないという自分の技術の向上を願い、コーチを依頼しています。
企業でのコーチング、特にエグゼクティブコーチングが日本の企業で歓迎されないのはなぜか。
その理由の一つが、対人関係の問題を扱うのでクライアント側にブライバシーが必要だと考えられています。
社外の人に自社の人間関係を見せたがらない。特に日本では社内を外部の人に見せたがらない。これは、アベグレーンが1958年に“Japanese Factory”を書いた時、日本の企業と関係を維持しているアメリカの経営者から、「彼は企業組織を専門とする有能な研究者だ」と紹介状を書いてもらった。また、日本の大学と正式な関係がないことも証明してもらい数社の大企業の観察を許可されました。
もう一つの理由は、「自分が変わる必要がある(もっと向上する―Good to Great )」ということを本人が知ろうとしない。
特にエグゼクティブコーチングでは、クライアント(社長もしくは次期社長候補)は「さらに良くなりたい(Good to Great)」とは感じていません。クライアントは企業での成功者です。成功者の「スキルがある」「自信がある」「動機をもっている」「みずから成功を選択している」という四つの信念が「変わることを選択しよう」としません。
たとえば、マーシャルが大企業のCEOから「後継者を決めているが、まだ3年は早いと思っている。彼のコーチングをお願いしたい」と依頼された。マーシャルが後継者と同僚の360度インタビューを終えた時、「後継者に、すぐにCEOになる準備をしなさい」と言った。現CEOに問題があった。インタビューをしたすべてのステークホルダーが「現CEOはすぐに会社を去るべきだ」と思っていた。
特にエグゼクティブコーチングでは、受ける側に自分の振る舞いが会社の運命を左右しているとの自覚が必要です。
日本の企業には、稟議制があり、そこで重要事項は稟議書として取締役会の承認が必要であるとの合議制を示し、社長の独断決済を認めていません。しかしながら社長の振る舞いによっては合議制が無視されていることが内部告発などで明白になりつつあります。
社長の振る舞いは、社長になる前の過去の実績を引き継ぐことが多いですが、社長は特別な存在で、会社の運命を握っています。社長はステークホルダーの意見を公正に吸い上げることが重要です。一方、ステークホルダーが何よりも気に掛けていることは「この人は信用できるのか」、「どんな価値観をもっているのか」、「仕事の上でどう対応すれば良いのか」ということです。その手助けがエグゼクティブコーチングです。
その結果、社長は、長期的に偉大な組織を築き、組織の使命を果たすために必要な正しい決定が、合意や人気とは関係なくくだされるようになります。
※マーシャル・ゴールドスミス博士
エグゼクティブ・コーチングの第一人者。”コーチングの神様”と呼ばれる。多くの世界的有名企業のCEOらを指導し、大企業でのエグゼクティブ開発にも携わる。上司だけでなく、部下や同僚など、仕事上のさまざまな関係者に評価をしてもらうことで、周囲からの貴重な評価を得る「360度フィードバック」手法を得意とする。360度フィードバックについては過去の記事もご参照ください。
山岸 敏彦(やまぎし としひこ)
コンサルタント 顧問(Stakeholder Centered Coaching)
Stakeholder Centered Coachingライセンスを取得し、社長や経営者のコーチング活動をしています。社内外に絶対的な影響を与える経営者の良き相談相手です。
このコラムでは、Stakeholder Centered Coachingについてご紹介してきます。
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