2015/03/16 第12回「動機づけにつながらなくなってきている「○○満足」」
最近は「顧客満足(CS)」「従業員満足(ES)」など、“満足(Satisfaction)”と言うキーワードが出てくることが増えました。相手の感情に何らかの満足感が伴わなければ、その後の購買行動や業務へのやる気など、動機づけにつながっていかないということが一番の理由なのだと思います。
ただ、先日ある専門家の方からうかがったお話で興味深かったのは、「満足感では動機づけにつながらない」というものでした。
今はほとんどの人たちが、生活レベルや経済力にかかわらず、「幸せですか?」と聞かれれば「幸せです!」と答えるのだそうです。
多くの人がそれなりの満足感を持った中で生活していて、どうしても欲しい品物やサービスがある訳でもなく、どうしても実現したい仕事上の目的などがある訳でもないというようなことが多いのだそうです。
人間には、現状に満足していてもさらに上を目指そうとする「成長動機」があるということが、一般的には言われてきましたが、最近はこの「成長動機」というのは、実はそれほど強く存在しないのではないかと言われているのだそうです。
そうなると、すでに満足しているところに、さらにそれ以上の満足を注入する余地は少ないでしょうし、成長動機自体が少ないこととも相まって、「ただ満足感を与えていっても、それが行動の動機づけにはつながりづらくなっている」ということでした。
いろいろな企業の人事の現場でも、上昇志向の希薄さや、自分がグループから突出することを避ける態度、現状で良しとするような保守的な風潮などが多いことを見ていると、すでにある程度の満足感を持っていて、それが動機づけにはつながっていないという話には、納得する部分が多々あります。
ただ、このお話にはさらに続きがありました。それは、「こういう時代に人の行動を動機づけするためには、“満足”のさらに先の“幸福(Happiness)”を提供していかなければならない」というものでした。「顧客満足」から「顧客幸福(CH)」へ、「従業員満足」から「従業員幸福(EH)」へ、ということなのだそうです。
「満足感」というのは、与えられた物に対する感情なので、必ずしも成果と相関しないのに対して、「幸福感」は自分で創り上げた物に対する感情なので、成果と相関しやすい傾向があるということです。
こんなお話を、私自身はなるほどと思って共感した訳ですが、 “満足”と“幸福”の違いをそこまで理解できている訳ではありません。
それでも、自分のイメージとして、「“満足感”にはどこかにゴールがあるが、“幸福感”にはゴールと言えるものがない」という感覚でとらえています。線引きされた到達点がないということは、その分動機づけにはつながりやすいという気がします。
また、自分で創り上げた物に対する感情が「幸福感」であるならば、行き過ぎた指示命令、強制、アメとムチによる外的報酬ではなく、自律的な判断、組織への帰属や貢献、それに伴う内的な報酬が大事ということになります。心理学的に言う「内発的動機づけ」が、今後ますます重要になってくるということです。
企業人事の世界でいえば、社員個々の内面に対して、さらに目を向けていかなければならない時代になっているのだと感じています。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
◆ご質問・お問い合わせはこちらから
専門コンサルタントへの、ご質問、ご相談等、お気軽にお問い合わせ下さい。