2014/05/16 第7回「「人事施策」を考える際の他社事例の使い方」
人事制度だけに限らず、社内での人事の関わる企画や施策というのは、それぞれの会社でいろいろ工夫をしています。そんな様々な会社で行われている「他社事例」というのは、私もいろいろ調べて何かと参考にします。
様々な会社の事例を見ていると、中には奇抜なもの、シャレか冗談かと思うようなもの、遊びやゲーム感覚のものまで多種多様にあります。ただ、ほとんどの場合は、一つ一つ行われている施策や活動自体はそれほど目新しいものではなく、すでにいろいろな場所で紹介されているような比較的ポピュラーなものを、自社なりにアレンジして取り入れているような例です。
人事上の施策というのは、「様々な価値観を持った社員たち」を扱うという性質上、それほど奇抜だったりユニークだったりするものはなかなか見出しづらいですし、特にちょっと変わった他社事例というのは、いざ取り入れようとしても難しいものも多く、“奇抜イコールちょっと乱暴?”という場合もあるので、結局は一般的、常識的と言われる範囲に落ち着くことが多いものです。
また、これは人事上の施策全般に言えることですが、それらを実行した結果というのは、何かが画期的に、または急激に良くなるというよりは、「その制度を取り入れたおかげで良くなったのだろう」という程度の、マイルドな変化を肌感覚で感じられることの方が多いように思います。
そもそも「他社事例」で見つけ出したような、ちょっと奇抜な人事施策や制度を導入してみようと考える背景には、急激な変化やインパクトを求めているような場合が多いですが、この手の他社事例を自社の前提条件を考えずに導入したとしても、効果が得られるどころか逆に混乱してしまうことも、大いに考えられます。
人事施策を実施した結果には、その施策とは直接関わらないような様々な要因がかかわってきます。大きな変化を求めている場合は物足りなさを感じるかもしれませんが、そもそも人事施策や人事制度に即効性を求めると、それなりの副作用が出てきます。
そう考えると、「うーん、この施策を取り入れてから徐々に変わっては来ているから、まあ効果はあるんだろうなあ・・・」という程度の評価で、導入当初は良いのではないかと思います。
いろいろな会社で行われている人事施策や制度の中で、成功事例として紹介されているものに共通しているのは、「一人一人の社員やその他ステークホルダーの人達と、できる限り真摯に向き合うため」の施策を考え、それを「効果があると信じて確実に実行、継続している」ということです。
要は自分たちが良かれと思ったこと(人事上の原理原則を踏まえた施策)を、徹底してやり続けているということです。ここには経営者や人事担当者の思い入れ、思い込みも多分にあると思いますが、施策自体の評価が感覚的になりがちな理由としては、こういう部分も影響しているでしょう。
私がいろいろな人事施策の「他社事例」で参考にすべきと思うのは、施策そのものだけでなく、「会社として良いと思ったこと」を、「目的を忘れずにやり続ける」という基本姿勢です。また、施策として「自社で続けられること」を、選んで取り入れるということです。
「他社事例」を表面的に真似しても、基本姿勢と続けられる内容かどうかの判断が伴っていなければ、たぶん効果は出ません。
「他社事例」は大いに参考にすべきですが、自社に取り入れるにあたって、この点を間違ってはいけないと思います。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
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