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2023/06/08 「経済安全保障」第11回 有識者会議で大きく前進!セキュリティ・クリアランス制度

こんにちは。経済安全保障コンサルタントで弁理士の児嶋秀平です。
この講座では、現内閣の最重要政策の一つである「経済安全保障」を巡る最近の動向等について、私見を交えつつ解説します。

目 次

今年5月、経済安保上重要な二つの会議が開催された

この5月にはG7広島サミットが開催されました。各国首脳は3日間の会議を通じて、国際秩序を脅かす国々に対して一枚岩の結束姿勢を示すことに成功しました。

会議で行われた議論の内容とその意義については既に様々なメディアで報道されていますのでここでは繰り返しませんが、我が国は間違いなく経済安全保障上の大きな成果を得ることができたと言えるでしょう。

5月にはもう一つ、重要な会議が開催されました。5月29日に開催された「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」です。

広島サミットに比べると、会議の規模もメディアの注目度も無きに等しいくらい小さいですが、我が国の経済安全保障上の重要性は極めて高いものがあります。

本稿ではこちらにフォーカスしたいと思います。

セキュリティ・クリアランス制度の中間論点整理がまとまる

高市経済安全保障担当大臣の出席の下で開催されたこの有識者会議では、セキュリティ・クリアランス制度に関する中間論点整理が取りまとめられました。

中間論点整理において、セキュリティ・クリアランス制度とは、

政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報(CIClassified Information)にアクセスする必要がある者(政府職員及び必要に応じ民間事業者の従業者等)に対して、政府による調査を実施し、当該者の信頼性を確認した上でアクセスを認める制度
と定義されています。

この中間論点整理に基づき、政府は有識者会議でさらに議論を続け、来年の通常国会でセキュリティ・クリアランス制度を法制化することを目指すものと思われます。

したがって、セキュリティ・クリアランス制度の影響を直接的又は間接的に受ける可能性のある民間企業としては、今回の中間論点整理の内容を確実にフォローしておくべきでしょう。

中間論点整理は、以下の4項目で構成されています。

  1. セキュリティ・クリアランス制度に関する必要性
  2. 新たな制度の方向性
  3. 具体的な方向性
  4. その他

以下にその概要(要約)を示します。なお、全文はネット上で閲覧することができます。

▼内閣官房サイト「資料1 中間論点整理(骨子案)」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyo_sc/dai6/siryou1.pdf

中間論点整理の概要

1.セキュリティ・クリアランス制度に関する必要性

セキュリティ・クリアランス制度を導入し、情報保全を強化する必要がある。民間事業者も情報保全が必要で、国際的な枠組み整備と協力して情報保全制度を活用し国力を向上させる。企業は同盟国の政府調達などで情報不足や開示の遅れ、会議への参加制約などの困難を抱えており、国際的な制度や枠組みがあれば改善できる。宇宙分野の入札やサイバー関連情報の共有は企業だけでなく国のセキュリティレベル向上や国際共同開発の機会につながる。セキュリティ・クリアランス制度は信頼の証となり、経済・技術分野でも通用する。

2.新たな制度の方向性

新制度はCIを前提に検討する。民間事業者も含め、個人や施設について信頼性の確認が必要である。実効性ある制度を目指し、同盟国や同志国の制度を考慮して検討する。国際的な枠組みについても検討が必要である。政府と民間事業者の両方の運用・管理コストを増やさず、新たな分野も含めた政府横断的・分野横断的な視点で制度を検討する。既存制度や他法令との整合性にも留意する。

3.具体的な方向性

経済安全保障上重要な情報は政府が保有する情報に限定し、厳重に管理することが基本的な考え方である。経済制裁やサイバー分野に関連する情報や重要技術情報なども管理対象として検討する。複層的な情報管理の導入や他国の情報保護制度との整合性も考慮される。信頼性の確認と調査に関しては、効率性を追求しつつ、政府と民間事業者の従業者の評価と調査を統一的に行うことが望ましい。民間事業者に対する情報保全も重要であり、米国の国家産業保全計画やサイバーセキュリティに関する規定を参考に検討する。重要情報を取り扱う従業者の信頼性確認には、本人の了解を得ることとプライバシーの尊重が必要であり、適切な情報管理が求められる。官民双方で適切な体制と設備を整備する必要があり、民間事業者への支援方法も検討する。

4.その他

CI以外の重要な情報についても情報保全措置が必要であるが、民間事業者の情報に対しては一方的な規制を課すことには懸念がある。民間事業者の自主的な調査や情報保全措置の重要性が指摘されており、政府が指針を示す。関連制度やプライバシーや労働法令との関係を考慮しながら検討を進める。信頼性の確認に関しては、諸外国を参考にして理解を促進することが重要である。

制度の必要性と方向性が具体的に定まり、大きな前進

以上が、政府の有識者会議がとりまとめた中間論点整理の概要です。

私としては、このようにセキュリティ・クリアランス制度導入の必要性と方向性が具体的に定まったことは、我が国の経済安全保障にとって大きな前進であると考えます。

捉え方によっては「国家が犯罪者でもない民間人のプライバシーを探る」というセンシティブな制度の導入に対し、ここまで特段の反対運動等が生じることもなく、粛々と議論が進んでいるのはなによりです。

透明性と公正さを確保しつつ制度を活用することで、我が国の経済安全保障の向上と経済・技術分野の発展が一層促進されることを期待して、法制化までの議論を引き続き注視していきたいと思います。

 

BIP株式会社は、「企業様と共に事業開発・経営改善に取り組み、第2・第3の成長を創るパートナー」であることをビジョンとしています。

この講座では「経済安全保障」に関して、企業経営者自らの大胆な決断に結びつけるお手伝いができることを目指して連載を進めます。

以上

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第10回 米国とともに日本を守るには不可欠!セキュリティ・クリアランス制度

thumbnail_kojima児嶋 秀平(こじま しゅうへい)

弁理士 経済安全保障コンサルタント

このミニ講座では、急速にクローズアップされている「経済安全保障」を巡る法律の立案と関連する動向、それが企業に与えるであろうインパクト等について、私見を交えつつご説明していきたいと思います。
私は現在、知的財産の専門家である弁理士として特許事務所を経営しています。弁理士になる前は、国家公務員として経済産業省、中小企業庁、資源エネルギー庁、警察庁、外務省、内閣官房等で30年間勤務しました。多様な経験を活かして企業の皆様に貢献したいと思っています。

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