2021/05/19 【FC】「FC本部構築:立地診断3つの視点」
こんにちは。BIPの高木 仁(たかぎ ひとし)です。
フランチャイズ本部にとって、立地診断や売上予測は義務ではありません。
https://www.bi-p.co.jp/column/12576/(前回コラム)
しかし、店舗の出店場所は、業績に非常に大きな影響を及ぼすものです。そのため、加盟希望者は本部による立地診断や物件紹介などを期待します。
この立地診断をする場合に必要となるのが3つの視点です。
■3つの視点による立地の診断方法
立地は、「商圏(面)」「動線(線)」「地点(点)」の3つの視点で診断することができます。
立地診断で大切なことは、最初から物件(点)だけにとらわれないことです。[面]→[線]→[点]の順で、大きな視点から局所的な視点へと立地の情報を体系的に捉える必要があります。
また、3つの要素は全ての基準が満たされている必要があります。3つの要素のうち基準を満たしていない要素があっても、それを別の要素でカバーすることはできません。
商圏(面) | 動線(線) | 地点(点) |
来店する顧客が居住・勤務している地域の特性、商圏人口(店舗に集客できる商圏範囲の人口) | 候補地への近づきやすさ、競合店との位置関係、店舗までの動線や方向(駅や施設などから店舗までの経路)、接近性(駅や施設などからの近さ、利便性) | 候補地や近隣の特性、店頭通行量(店の前をどのような人がどれ位通るのか)、視認性(店舗がはっきり認識できるか)、店舗の構造(出入口や柱、店舗設備などの位置や造り) |
■商圏:『面』を診断する
まずは「商圏(面)」の診断です。商圏内に事業が成り立つための市場規模があるか、事業の性格に合ったマーケット特性を持っているかなど大きな視点で診断します。
事業が成立するだけのマーケットボリュームが存在するか 事業の性格にあったマーケット特性を持っているか |
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チェック項目 | 情報の収集方法 |
商圏人口・世帯数及び伸び率 | 住民基本台帳・国勢調査 |
人口ターゲット比率(年齢別) | 住民基本台帳・国勢調査 |
昼間人口 | 国勢調査 |
居住形態(持ち家・借家など) | 国勢調査 |
所得水準 | 地域経済総覧(東洋経済新報社) |
家計支出水準 | 家計調査年報 |
貯蓄水準 | 地域経済総覧(東洋経済新報社) |
地元購買率 | 消費購買行動調査(県) |
通勤通学先 | 国勢調査 |
自家用車保有率 | 地域経済総覧(東洋経済新報社) |
■動線:『線』を診断する
次に「動線(線)」を診断します。商圏内での候補地の配置に問題がないか、動線に乗っているか、周辺に障害物はないかなどについて実地調査を行います。
候補地の商圏内での配置は問題ないか 候補地は商圏内の動線に沿っているか(その動線の太さは太いか) 商圏内のお客様は候補地に近づきやすいか(周辺に障害物はないか) 候補地と競合店の位置関係はどうなっているか |
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チェック項目 | 情報の収集方法 |
場所のわかりやすさ | 実査・現地ヒアリング |
商圏内の消費者動線の方向 | 地図読み取り・実査 |
中心(マグネット)からの店舗位置 | 地図読み取り・実査 |
動線に対して車線の面する方向(順または逆) | 地図読み取り・実査 |
商圏分断要因(バリア)の存在 | 地図読み取り・実査 |
店前通行量(歩行者・車両)と道路の性格 | 実査・道路交通センサス |
競合店数 | 電話帳・業界リスト・実査 |
競合店と比較した場合の立地の優位性 | 実査 |
他に競合店が出る可能性の有無 |
■地点:『点』を診断する
最後に「地点(点)=物件」を診断します。物件の大きさや形状は事業に適しているか、視認性はよいか、入りやすく出やすいかなどミクロの視点で評価します。
物件自体は当該事業に適用できる規格(大きさ・形)か 物件自体の視認性はよいか 物件自体の道路付きはよいか |
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チェック項目 | 情報の収集方法 |
店前障害物の有無 | 実査 |
視認性 | 実査 |
角地か一面か | 実査 |
間口 | 公図・実査 |
地形 | 公図・実査 |
車のイン・アウトのし易さ | 実査 |
道路との段差 | 実査 |
駐車場の確保(同一敷地に可能か) | 実査 |
■立地診断に有効なITサービス
これまで商圏分析を行なうには、高額なGISソフトウェア(サービス)を利用する必要がありました。
しかし、独立行政法人統計センターが運用管理を行っている「jSTAT MAP」という、商圏分析を行なうためのITサービスが無料で提供されるようになりました。URL:https://jstatmap.e-stat.go.jp/
また、動線や地点の診断を行う場合には、googleマップの利用も有効です。位置表示や経路検索機能、ストリートビューなどが活用できます。
これらのITサービスを用いることで、実地ではわからない数値情報を得ることもできますし、効率よく診断を行うことができます。しかし、これらのサービスに用いられているデータや、マップ情報、画像などは、リアルタイムにアップされているものではなく正確性を欠いたものとなります。
「現場」「現物」「現実」の三現主義が大事であり、机上だけではなく、実際に現場で現物を観察して、現実を認識した情報をもとに判断することが重要です。
参考書籍:
『よくわかる!フランチャイズ入門』(同友館)
フランチャイズ研究会 著「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)
高木 仁(たかぎ ひとし)
コンサルタント(IT企業 企画提案力強化・人材育成、フランチャイズ本部構築)
私は、フランチャイズコンサルを専門領域の一つにしており、フランチャイズ本部の構築や本部機能の強化などの支援をしています。このコラムでは、フランチャイズビジネスの情報や、フランチャイズ事業化を検討中の皆様に役立つ情報を中心に発信していきます。
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