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企業の採用活動の現場にいると、「優秀な人材を採用したい!」という言葉を必ず耳にします。どんな会社でも共通の想いということでしょう。

経営者も管理者も、採用担当の人たちも、みんなこの「優秀な人材」を、いかにして自社に入社させるかということに懸命に取り組んでいる訳ですが、こんな企業の方々に、「では優秀な人材とは、いったいどんな人か?」と尋ねると、意外にはっきり答えられないことが多いように思います。

よく挙げられることとしては、「リーダーシップがある」「コミュニケーション能力が高い」「協調性がある」「積極性がある」「地頭が良い」「打たれ強い」などといったキャラクターに関することや、時に「有名大学出身」「○○資格を持っている」「テストの点数」「学校の成績」などという人もいらっしゃいます。

どれもそれなりに理解できるものではありますが、前段は抽象的で主観的な基準ですし、後段は過去の成果やブランドによるものなので、これだけで「優秀な人材」と言い切るには、少々不確実でしょう。

このように、かなり感覚的なところが多い「優秀な人材」ですが、私がこれを定義する時には「自社の事業内容、仕事内容に親和性が高く、これを発展させることができる人」と言っています。

例えば一流大学出身のMBAホルダーは、世間一般から見ればものすごく優秀な人材ですが、零細企業の町工場などからすれば、「何をやってもらえばいいのかわからない人」「どこに活躍の場を与えれば良いのかがイメージできない人」などとなってしまうことも多いでしょう。

そうであったとすれば、この町工場にとって、一流大学出身のMBAホルダーは、必ずしも「優秀な人材」ではないということになります。

個人作業が中心の研究職の仕事であれば、そこまで「コミュニケーション能力」にこだわる必要はないでしょうし、人見知りの人やあがり症の人に、飛び込み営業などのような仕事をさせても、なかなか成果は上がらないでしょう。本人は相当につらいでしょうし、うまくいくにしても相当の時間と労力が必要でしょう。

採用のミスマッチというのは、実はこんな単純なところに原因があるものです。

“世間一般でいう優秀さ”をそのまま自社に持ち込んでしまい、実際の仕事内容と本人の特性が合っていないということです。

これは多くの企業でよく見かける光景ですが、例えば、明るく快活な性格と行動力に魅せられて採用したものの、自社の仕事は地味で単調なことが多かったため、本人はそこにやりがいを見出すことができずに、結局辞めてしまったというようなことがあります。

実際の仕事の上で、会社として見込んだ長所を活かす場が少なく、何よりも本人は自分の強みを活かせない訳ですから、それではやる気を失ってしまうのは当然でしょう。

過去の経歴やその人のブランドばかりに注目してしまったような場合も、同じようなミスマッチが往々にして起こりがちです。

ただ、「優秀な人材」を明確に答えられないとは言いながらも、ほとんどの会社では自社に合った人材をおおむね適切に採用しています。具体的な人材が目の前にいれば、それなりの判断基準は持っているということです。

こういう会社でやっておくと良いことは、関係者同士で一度自社が考える「優秀な人材」の認識合わせをすることです。できれば全員のイメージが共有できる言葉に落とし込んだ、「自社にとっての優秀な人材の定義」を作ることが望ましく、それによって認識ギャップはずいぶん減らすことができます。

もしも早期離職や入社時の過大評価、仕事上のミスマッチが見受けられるならば、自社にとっての「優秀な人材」は、いったいどんな人なのかを、今一度しっかりと見直す必要があると思います。

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