記事の詳細

最近の日経新聞でよくROEに関する記事を見かけます。ROEReturn on Equity)とは、自己資本利益率を意味し、当期純利益を自己資本(株主資本)の額で除して計算されます。自己資本を使ってどのくらいの利益を生み出したかを視るものです。

自己資本は株主資本とも言われます。日経新聞の表現を引用すると、ROEは「株主から預かった株主資本を経営者が事業に投資していかに効率よく利益を上げたか」を示す指標です。従って、投資家はROEを重視し、経営者に高いROEを実現することを期待します。昔は日本企業の経営者はROEに対する意識が低いと指摘された時代がありました。しかし、近年では投資家や株主の経営者に対する圧力は高まり、日本の経営者も自社のROEを強く意識し、ROEの向上を目指す企業が増えてきています。

その結果、企業の業績回復基調とも相まって、日本企業のROEの水準も上がってきています。525日付けの日経新聞記事によると、東証一部企業の32%ROE10%以上となっており、平均値は8.2%とのことです。米国の主要企業の平均ROE13%、欧州は9%ですので、欧米企業に比べるとまだ見劣りはしますが、以前と比べると差は大幅に縮まってきています。

日本企業のROEが改善されてきているという記事と並んで、ROEPBRの関係について大変興味深い分析をしている記事がありましたので、紹介したいと思います。417日付けの記事によると、ROEPBR(株価純資産倍率)には相関関係があるとのことです。ROE8%以下の水準ではPBR1倍前後で推移し、ROE8%を超えるとPBRが右肩上がりに上昇しているのがデータから読み取れると言います。

日経の記事を引用すると、「なぜ8%が分岐点かというと、株主が企業に求める期待リターン(株主資本コスト)が8%程度だからというのが定説。8%に達していなければ株価は解散価値でしか測られず、PBR1倍前後の水準で推移する。8%を超えて初めて収益力で評価されるようになり、PBRが切りあがる。」という分析をしています。

この「株主が企業に求める期待リターン(株主資本コスト)が8%程度」というのを、ファイナンスの理論で検証してみたいと思います。ファイナンス理論の資本資産評価モデル(Capital Asset Pricing ModelCAPM)で株主資本コストを計算してみましょう。株主資本コストをReとすると、Re = Rf + β(RmRf)で計算されます。ここで、Rfはリスクフリーレート、βは個別株式の株式市場の値動きへの感応度、RmRfはリスクプレミアム(投資家が株式のリスク分に求める超過収益率)を意味します。Rf10年国債利回りで代表されますので、最近の数字として0.415%とおきます。リスクプレミアムは株式市場の専門調査会社で統計データを使って算出しています。直近の数字を手にいれることはできませんが、Web検索すると、6.5%とか7%というような水準とされているようです。そしてβ値を1と置いてみると、Re7%7.4%となり、8%より若干低いですが、近い水準となります。こう見てくると、日経新聞で書かれている、投資家の株式に対する期待収益率は8%以上であり、ROE8%を超すと、その株式は評価されてPBRが上昇していくというのは、うなずけます。

上場企業はもちろんですが、未上場の企業においても、資本効率を向上させることは、経営の重要課題です。中小企業の多くはROEが低い水準で低迷しているのが実態かと思いますが、経営者としては資本効率の向上を目指すうえで、ROEを意識してみては如何でしょうか。

以 上

[page_content お問い合せボタンコラム]
[page_content プロフィール大塚直義] [page_content 無料相談会CTA]

BIPコラム

ページ上部へ戻る