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人事評価を行う一般的な方法は、設けられた評価項目に対して、所定の基準で点数をつけていくことで、よくあるのは「5段階評価」だろうと思います。

評価制度を考える上では、どうすれば評価結果の客観性が高まるか、どうすればより公正な結果にたどり着くことができるか、そうすることで評価の納得性を高めて、社員のモチベーションにつなげたいと考えます。

どんな評価方法をとるかは、この点に影響する大事なファクターであり、制度を運用する中の状況によって、各社で試行錯誤をしながら様々な工夫をしています。

そんな中で、この「評価段階の数」に関わるテーマは、議論の対象として取り上げられることが意外に多いものです。 

例えば、

何でも標準、普通、まん中と評価しがちなので、それをさせないために4段階評価(または6段階評価)にする。

標準、普通と評価される人数が多いが、その中には良い普通と悪い普通があるから、それを分けて全部で7段階評価にする。

評価段階の境目に近い人に損得が出るから、100点満点の点数制にする。(要するに100段階評価)

などが代表的なものです。
このやり方を、対象の等級や職種ごとに変えてみたり、賞与の評価と昇給の評価で変えてみたり、いろいろな組み合わせもあります。

このように内容はいろいろですが、その多くは一般的な評価誤差としていわれる「寛大化傾向(評価全般が甘くなる傾向)」「中心化傾向(何でも中心に評価して差をつけない傾向)」が見られるので、それを改善しようと考えてのことです。

では、それは果たして効果的なことなのでしょうか?

これは私が経験した例ですが、ある会社でまん中を無くす4段階評価を導入したところ、評価平均が上がってしまう「評価のインフレ化」が起こってしまいました。今までまん中についていた人の評価が、さらに甘くなって上の段階にシフトしてしまったということです。

それではダメだということで、今までよりも詳細な評価基準を定め、様々な指導や通達をしたところ、今度は評価平均が下の段階にシフトしました。厳格に評価させようとしたところで、その薬が効き過ぎたということです。
結局は評価がしにくいという話になって、もともとやっていた5段階評価に戻したという経緯がありました。

他の例でも、評価段階の数を変えてはみたものの、思ったような評価分布にはならず、さらに試行錯誤を続けたり、結局元に戻したりということが多かったです。

これはあくまで私の経験の範囲からですが、私自身は、「結局どれも大差はないし、画期的な効果もない」と考えています。私が人事制度構築をする際には、一般的な「5段階評価」とすることが多いですが、結局それが一番イメージしやすく、そこでノウハウを積み上げた方が、評価の納得性が高まることにつなげやすいということです。

評価結果の偏りというのは、基本的に「評価基準のあいまいさ」「評価者のスキル不足」「部下の仕事内容やパフォーマンスの理解不足」などが原因で起こります。これを放置したまま、評価段階の数を変えて分布を操作しようとしても、結局は裏読みのばかし合いのようになってしまいます。

評価誤差の中には、結果ありきで考える「逆算化傾向」というものがありますが、こんなことも含めて、小手先の制度の操作ではあまり効果がないということでしょう。
当たり前の結論ですが、起こっている現象についての原因をしっかり把握し、その原因に見合った対策を、制度と運用の両面から行うのが大切だということです。

「評価段階の数」は、議論が必要なテーマではありますが、小手先の駆け引きにならないように、くれぐれも注意が必要だと思います。

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