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連載【電経新聞】第10回「経営リーダーから学んだこと」BIP代表取締役社長 手塚里美
情報通信系の業界紙【電経新聞】のコラムコーナーPoint Of Viewにて、弊社代表取締役社長の手塚がコラムを連載中です。最終回の第10回が掲載されましたのでご紹介します。
経営コンサルティング会社の女性社長の視点から、さまざまな業界、大小企業の変革現場の実情や、急増する事業承継・M&A、新たな人材育成・活用推進などを発信していきます。
2020/5/25紙面より 連載第10回 「経営リーダーから学んだこと」
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【記事全文】
経営コンサルティングの業界で働くようになって11年余、仕事を通じてさまざまな業界業種の経営リーダーとの出会いがあった。
上場企業、地域中核企業など、さまざまな経営の現場において、課題を抱え、悩み、立ち向かっている姿に、経営リーダーも一人の人間なのだなと感じることが多かった。とくに印象深いのは長期視点での意思決定の姿だ。
ある製造業トップの上場企業でイノベーション推進に取り組まれていた研究開発本部リーダーは、研究部門の改革課題に直面していた。
部門メンバーは修士・博士出身者が多く、大学の研究室に近い雰囲気で既存技術の深堀り中心となっており、営業部門と連携した事業化や長期的ビジネス視点でのイノベーション創出が課題となっていた。打開策を探す中で、私たち第3者外部コンサルの情報に目を留め助言を求めて、ご連絡下さった。
社内での抵抗もある中、自部門数百名に向けてビジネスモデル設計・ビジネスプランニング演習を導入するなど、イノベーション意識醸成と実践力育成まで実行。変革人材育成への長期投資を決めるとなると勇気もいる。リーダーとしての責任感と部門メンバーへの信頼があってこその決断だ。将来のビジネスを描き、変革のための決断を下すのは並大抵のことではない。
関東郊外の駅前にある複合商業施設の社長からは、高度成長期、地元商店街の一店舗経営から商店街を統合した大きなショッピングセンターへと転換させ、現在まで地元商業を支えてきたドラマチックな人生に感嘆した。
当時地元からは大転換への不安の声や反対も多かったというが、先進的な米国の商業視察など冷静な調査から、地元の将来のためにはと決断。地道な説得を重ね責任を持って実行したという。
その約40年後、経営陣や株主が高齢化する中で、金融機関を通じて当社に今後の事業展開についての相談が寄せられた。いろいろな選択肢があった中、結果的に上場企業デペロッパーへの事業譲渡を選択することとなった。
共に歩んできた地域をさらに豊かにし続けられるよう、未来世代に託すという決断だ。地元への貢献にかける責任と思いの深さは、なかなかマネできないものだと感じた。
東北では経産省の公共案件を通して、地方の人材不足や東日本大震災の影響に課題を抱えているたくさんの地元経営者さんの支援を体験した。
地域の中核企業として持続的に生き残るための決断を重ねている経営リーダーからは、地元での細かな人的つながりと、たくましさ、現実から学ぶ実践知を強く感じた。
20代-30代の時期にさまざまな経営リーダーたちの姿を間近で見られた経験は、私にとって大きな宝だ。
はっきりと先が見えない中、長期視点で決断し実行していくパワーから、経営リーダーとして必要な姿勢を多く学び、自分を省みるきっかけとなった。
今後も経営リーダーとの出会いを大切にしていきたい。
>>前回の記事:第9回 「人生100年時代に ~人的ネットワーク、個人の『社会資本』の大切さ」
>>電経新聞社ホームページ