佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2013/01/07 「複眼二刀流」の初稽古
新年おめでとうございます。 旧年中は、大変お世話になりました。
本年も引き続き、ご愛顧・ご指導の程、よろしくお願い申し上げます。
新春に当たり、皆様が健康で明るい年となりますように心よりご祈念申し上げます。
昨年の新春に、「複眼二刀流」という切り口で、特にミクロ経済(個人・企業)とマクロ政治経済との関係をテーマに①世界目線 ②日本目線と2回に渡ってエッセイを書きました。そして、ビジネスマンと共にステイツマンたれと自戒の念も述べました。
・2012/01/16 2012年、「複眼二刀流」で不変・変化を探る(前編 世界目線)
・2012/01/23 『もしドラ』と共に『もしフリ』の時代-2012年、「複眼二刀流」で不変・変化を探る(後編 日本目線)-
1年振り返ってみると、その仮説がほぼ予想通りに展開しつつあります。しかし今年も、ミクロ経済(個人・企業)とマクロ政治経済、日本と世界、人間と技術、仕事と遊びなど「複眼二刀流」が試される重要な年になりつつあります。
(1)日本は、経済・外交の厳しい危機の中で画期的好機も迎えている。
私たちは、経済と外交の厳しい危機から生ずる不安と疑念に埋没することなく、画期的好機を見逃してはならないと思います。
日本は、戦後初めて、国内世論と米国世論が一致する画期的好機を迎えています。
【新金融緩和、新経済財政、新国土公共政策を推進する自民党、日本維新、みんなの党、公明党が多数世論となった】
2012年12月16日は、新与党と主要新野党が日本のマクロ経済政策と国家・自治体運営についてほぼ一致する画期的選挙結果となりました。
世界標準から離れ間違った日銀の金融政策によって、デフレと行き過ぎた円高が放置され、国民と企業が窮乏化する事態からやっと脱却する機会が訪れました。デフレ政策を糊塗して推進してきた日銀総裁の任期も4月8日で満了します。
国民にとって大事な雇用と賃金は、古い自民党政権(小泉・安倍政権を除く)と民主党政権の借金による社会主義的配分優先政策では継続不可能なことは高い授業料を払って証明されました。
雇用と賃金の上昇には、経済成長と生産性向上が必須です。同時に国家・自治体財政の健全化も求められています。経済成長への期待による民間企業の投資や規制改革、税制改革による民間企業の業績拡大及び効率的政府・自治体運営によってしか経済成長と財政健全化の実現はできないと思います。この金融・経済・財政と国家・自治体運営の王道をまず実施することが先決です。もちろん、適切なセイフテーネットや税制による社会的公正の政策も大事ですが、今は経済のパイを優先して増やさない限りはその多くを実行できないのも自明です。
しかし、実現するかどうかは国民自身の自己努力と政治選択への意思表明によるのが民主主義のルールです。今年は、7月21日頃に参議院選挙もあります。国民生活と日本経済再生めざす政党への国民の選択が重要だと思います。
【米国世論は、戦後初めて共和党も民主党も「日本=敵、中国=仲間」派が少数になった】
2012年は、隣国である中国・韓国・ロシアによる日本領土占拠誇示、領土領海領空侵入が続発し、日本人の多くの老若男女が驚き、安全保障環境の厳しい現実を知ることとなりました。国連決議違反の北朝鮮による長距離ミサイル発射も起きました。
しかし、その現実を体験しているのは日本人だけではありません。中国による領土侵入と戦うベトナムやフィリピンも同じです。
何が起きているのでしょうか。
主要な要因は、米国・日本を先頭に自由・民主主義・法の支配を尊重する国際社会に対する中国の世界支配拡張への乱暴な歴史的挑戦だと思います。
米国の国際的地位の相対的低下、国内経済財政の困難と民主党第一期オバマ政権の中国融和政策、日本の民主党政権による中国への宥和政策、欧州の経済財政困難による国際的関与への後退等の国際環境。
中国はGNP世界第2位の経済達成と急増する軍事力への自信、国内社会不安への拝外主義政策等の国内環境。
結局、中国は21世紀に新帝国主義的世界超大国への君臨を明確に意図していると考えた方が良い。讀賣新聞1月5日夕刊の中で佐伯聡士論説委員は、中国国家海洋局の“海外発展報告”を紹介しながら以下のように指摘しています。
「報告の結びに収められた“中国と太平洋の世紀”と題する文章は“21世紀は海洋の世紀で、その中心は太平洋である。太平洋の問題の中心は、海上での米中両大国の戦略的競争と協力だ”と主張。中国と米国の関係は“ゾウとクジラの関係ではなく、竜とクジラの関係であるべきだ”と論じている。米国をクジラになぞえる一方で、自らは大陸国家をイメージするゾウではなく、海と空を縦横無尽に疾走する竜だというのだ。」
中国による日本領土尖閣への侵入は一時的なものではないと考えるべきでしょう。
安全保障環境は、被占領時代以来の戦後最悪の厳しい危機にあります。しかし、好機も見逃してならないと思います。
米国オバマ政権は間もなく第2期目に入ります。1期目のスタートは民主党の伝統的中国宥和政策であったが、中国の威圧的な戦後国際秩序への挑戦の現実に直面し、2012年後半よりG2幻想を転換しつつある。共和党はキッシンジャー博士等一部の中国支持者を除き中国には厳しい態度が多い。米国の特に民主党系は、伝統的に「日本=敵、中国=仲間」派を多く有していたが、米国世論は戦後初めて共和党はもちろん、民主党も含め日米同盟基軸への多数派が形成されつつある。
これは、日本にとって歴史的にも画期的好機である。
但し、米国は日本の施政権にある領土は日米同盟で守ると改めて国益的立場で決議した。まずは、日本の自衛隊が守るのが前提である。当然である。日本が自衛しないで米国の青年だけが血を流すことはないこともはっきりと含意していることを我々日本人は銘記すべきである。
「平和は唱えれば守られる」という幻想的見解は現実によって破綻しつつあります。領土は1センチでも譲れば、支配されるか国が自己崩壊することを歴史が教えています。
日本を守ると公言する友人は米国以外にいるだろうか。アジアの方々に、日米同盟は世界の「公共財」であると日本人が胸張って言う時が今ではないだろうか。
(2)仕事に「プロとアマ」の区別はない。プロ1級か10級かの違いではないか!
私は、個人の評伝や自伝が好きです。学び、励まされることが素直に嬉しい。私も論理と共に情理で動く普通の人間だと思う。
正月、小松成美『逃げない-13人のプロの生き方』を読んだ。東日本震災後の2011年7月より産経新聞で開始された人物ノンフクション『彼らの心が折れない理由』単行本化作品です。新聞で読んでいたく感動し、切り抜いたものもあった程で早速購入。
アスリート・宇宙飛行士・棋士・アーティスト・俳優・作詞家・演出家・作家中心に13名に小松成美さんがインタビューしています。相手は、プロ中のプロである。
プロサッカー選手 香川 真司
「心を無にすると、理想的なゴールやアシストが難なく生まれる」
大相撲横綱 白鵬 翔
「大関と横綱、地位は一つしか違わない。しかし背負うものが全く違う」
俳優 渡辺 謙
「僕の代わりに二十人が待機していた。プロの世界はここまで壮絶なのだと心が奮い立った」
歌手 さだまさし
「どん底まで落ちたら、とりあえず四十五歳までは生きてみるかと思えた」
宇宙飛行士 野口 聡一
「正式に出発が決まると、私は遺書を書いた」
マラソンランナー 藤原 新
「走るとは、自分の知らない世界に行けること」
ラグビー指導者 清宮 克幸
「火花を散るようなレギュラー争いが、選手間の絆を強める」
歌舞伎俳優 中村 勘九郎
「勘九郎の名前は憧れであり、尊敬であり、恐怖だった」
演出家 蜷川 幸雄
「歴史に残る戯曲じゃなく、時代に消費される演劇でいい」
ミュージシャン YOSHIKI
「ステージに上がりピアノを弾く自分は、こんなにも自然なんだ」
棋士 谷川 浩司
「対局は勝負だが、指し手は会話である」
作家 伊集院 静
「悲しみは、これまで流れた多くの時間が解決してくれた」
作詞家 秋元 康
「壁は無理に乗り越えなくていい。右か左に動けば低くなっていたり、途切れていたりする」
私はそれぞれの職業の違いを知ると同時に1級のプロへの道の厳しさを痛感し、感動の連続であった。プロに共通するのは、「逃げない」ことだと小松成美さんが語っています。
また、自分自身の大きな思い違いを発見しました。スポーツにも、音楽活動にもプロとアマはいる。しかし、仕事=報酬をもらう職業にはプロしかいない。プロ同士の競争とその流動的順番しかない。言ってみればプロ1級とプロ10級と称すべきなのだと知った。
正月、酒の酔いが吹っ飛んだ読書は初めてでした。
以上
(参考文献)
1.イェール大学名誉教授 浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』
(講談社 2013年1月 本体1600円+税別)
2.日本経済新聞社編集局国際部編集委員、日本経済研究センター・グローバル研究室長春原剛『米中百年戦争 新・冷戦構造と日本の命運』
(新潮社 2012年12月 本体1600円+税別)
3.讀賣新聞 2013年1月5日号夕刊3版 「とれんど」
4.ノンフィクション作家 小松成美『逃げない 13人のプロの生き方』
(産経新聞出版 2012年11月 本体1600円+税別)
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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