佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2012/07/30 佐々木流 BI経営進化論 第12回 トヨタ産業技術記念館で豊田佐吉・喜一郎の精神と出会う
先週末、名古屋駅近くに建つトヨタテクノミュージアム『産業技術記念館』を訪れました。明治以降の重要産業であった繊維機械産業と自動車産業の世界・日本・そしてトヨタの変遷を動態展示で見ることができ、多くの触発を得た素晴らしい視察体験となりました。
更に、その場で購入した『豊田佐吉』『劇画 トヨタ喜一郎』を早速帰路に読みました。トヨタを創った人物の高い志と激動に満ちた人生に強く感銘を受けました。
(1)トヨタ産業技術記念館~「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを伝える
産業技術記念館理事長豊田英二氏は、開館の趣旨をこう述べています。
「この記念館は、豊田佐吉が明治44年に自動織機の研究開発のために創設した試験工場の場所と建物を利用して建設したもので、建築史的に評価された赤レンガの建物をグループ全体の歴史的遺産として保存しながら、広く社会の皆様にご利用いただくことにいたしました。
そのような建設の趣旨から、この記念館は豊かな社会づくりを目指すトヨタグループが「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを、次の世代を担う若い人々をはじめ、広く社会にお伝えし、内外の経済、社会の健全な発展に役立ていただくことを目的として設立したものであります。」(参考文献1)
私は主に繊維機械館と自動車館を中心に見ましたが驚きと学びの連続でした。
世界と日本、そしてトヨタの主要機械実物が技術と産業の発展に沿って展示されています。高価な機械の実物中心のラインナップは壮観です。おそらく企業が常設した展示としては世界一だと思われます。広く世界的、歴史的視点で企画したその姿勢に感銘しました。
更に、若い女性ガイドが実際に機械を動かして見せる動態展示・実演ガイドツアーは素晴らしかった。自動織機が目に見えない程速い動きで織物を織る様子に目をこらす。車が始動し、左右に動き、停止するメカニズム、その裏側をしっかりとした解説と共に生で見る事ができた。その他にも館内では常時幾つものテーマでガイドツアーや実演が行われており、誰にでも大変理解しやすい形で展示を行っている。
私がこの産業技術記念館の中で「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを強く感じた場所は材料試験室、試作工場。生産技術に先行して設置し、材料、部品含めた国産化へ技術開発、総合自動車産業への取り組みにトヨタの本質と強さを感じました。トヨタというよりはトヨタグループ、古い言葉でいえばトヨタコンツェルンと言った方が全体像の把握は出来やすいかもしれません。
(2)国産二大工業成功させた二人の創業者~楫西光速『豊田佐吉』、木本正次・影丸譲也『劇画 トヨタ喜一郎』
産業技術記念館のミュージアムショップで「産業技術記念館」ガイドブックと共に楫西光速『豊田佐吉』、木本正次・影丸譲也『劇画 トヨタ喜一郎』を購入しました。広義の伝記です。早速、帰路の新幹線の中で読みました。感動し、翌日自宅で読み返しました。
明治時代に繊維機械事業を興した豊田佐吉翁。昭和初期に自動車事業を興した佐吉の長男トヨタ豊田喜一郎氏。本書2冊を一体で読むことで、トヨタグループの前史とその不屈の精神の根源を知りました。
トヨタの経営技術に関する著作や研究論文は世界でも日本ででも多く出版され、これまで私もその中の多くを読んできました。それぞれ役立つことが多いですが、事業家、企業家の研究、企業史の研究の重要性を深く考えさせられた出来事でもありました。
今回二人の創業者豊田佐吉翁と豊田喜一郎氏の伝記を読んで、特に深く感じた2点を記します。
第1は、お二人共に、国のために何か貢献しようという思想が基盤に存在していた。繊維機械産業の国産化と世界進出、自動車産業の国産化と世界進出。「研究と創造の精神」と「モノづくり」によって世界企業へと発展したトヨタグループ。日本の発展への貢献は計り知れないと驚くばかりです。
第2は、貧しい時代に貧しい境遇の中で、不法でなく豊かになるためには広く言えば発明、現代的にいうと研究開発で技術力を生かすしかないと自覚し、困難な道に向かいあった不屈の精神と多くの協力者の存在。戦前戦後の貧しい体験は私も私の両親も実感しており、子供に高等教育を受けさせるため努力する親の姿に共感する気持ちは当然であるが、発明を継続し続ける強靱さには流石に敬服するしかありません。
これから夏休みの季節にもなります。会社仲間はもちろん、家族や友人と連れだって、トヨタグループ「産業技術記念館」の見学、視察を是非お勧めします。
以上
(参考情報)
トヨタテクノミュージアム 産業技術記念館
http://www.tcmit.org/
(参考文献)
1.「産業技術記念館」ガイドブック 改訂版(産業技術記念館 2010年4月 改定第2版)
2.楫西光速『豊田佐吉』(吉川弘文館 2007年10月 新装版第三刷)
3.木本正次・影丸譲也『劇画 トヨタ喜一郎』(産業技術記念館 1994年6月 復刻版)
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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