佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2012/04/23 待望!必見! ボストン美術館史上最大規模の日本美術 特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」
東京国立博物館 平成館で開催中の特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」(2012年3月20日~6月10日)内覧会に出席し、先週日曜日に再度見てきました。朝一番で訪ねましたが、大人気でした。公式の作品画像と共にご紹介いたします。是非お出かけ下さい。
欧米最大の日本美術コレクションを所有し、“東洋美術の殿堂”と称されるアメリカのボストン美術館の日本美術品コレクションの中から、名品92点が海を渡って故郷日本で(里帰り)公開されています。ボストン美術館史上最大規模の日本美術展です。東京展の後、名古屋展、福岡展、大阪展と1年以上にわたって日本で鑑賞できる画期的な特別展です。
私は、ボストン美術館作品との再会を待望していました。6年ほど前にアメリカのボストン美術館を訪ね、その質量と網羅性に魅了されました。世界に誇る広大な建物のボストン美術館と2日間穏やかに過ごした時間が懐かしく思い出されます。
今回の展示では、図録の表紙を飾る18世紀の奇才・曽我蕭白<雲龍図>、色鮮やかな重命<四天王寺像>など世界初公開となる大型の作品もあり必見です。在外二大絵巻といわれる「吉備大臣入唐絵巻」、「平治物語絵巻」や屏風、長谷川等伯や尾形光琳の近世絵画、仏像、日本刀に染織と多彩な国宝・重文級の作品が勢揃いで見どころ満載です。
海外でも愛されている日本美術の名品を通し、奈良時代から近代までの日本文化を改めて体感し、友人・恋人・家族と話し合う機会にもなることでしょう。
※美術館の許可を得て撮影しています。
(1)ボストン美術館と欧米最大の日本美術コレクション
そもそも、なぜ遠くアメリカ東部のボストン美術館がそれほどまでに多くの日本美術名品を収集することになったのでしょう。ちょっと長くなりますが、そのアメリカ側の歴史を知って頂くとその素晴らしさがよりご理解頂けると思います。
「アメリカで最も古い美術館の一つに数えられるボストン美術館は、1870年に設立され、アメリカの独立記念百周年にあたる1876年7月4日に開館した。・・(略)・・美術館の収蔵品は開館時に5600点であったが、・・・(略)・・以来、世界中から多様な時代・ジャンルの作品収集が続けられ、現在の収蔵作品は45万点以上にも及び、来館者は毎年約100万人を数える。
その中でも、欧米において質・量ともに最高を誇るのが、日本美術コレクションである。明治10年代に相次いで来日したアーネスト・フランシスコ・フェノロサやウィリアム・スタージス・ビゲロー、そして彼らと交流のあった岡倉天心(覚三)により積極的な収集が行われた。現在、日本美術の収蔵作品は10万点を超え、日本の寺院を再現した「寺院の間」など、館内ギャラリーで広く公開されている。」(参考文献1)
また、ボストン美術館開館と時を同じくして開催された「フィラデルフィア万国博覧会」が、美術品の収集に影響を及ぼしたという。
「フィラデルフィア万国博覧会が開催されていたことも好都合であった。・・略・・美術館の最優先課題の1つに、「あまりよく知られていない国固有の芸術的価値が見出せる」作品の獲得があった。・・略・・ 万国博覧会によってニューイングランドにもたらされた日本への関心と熱狂が、コレクションの将来的発展に影響を与えたことは間違いない。・・(略)・・多くの欧米人にとって、フィラデルフィア万博博覧会のような場が、日本と直に接触する唯一の機会であった。」(参考文献1)
なによりも、ボストン美術館関係者の類い希なる信念と努力がもたらした奇跡ともいえる。
「さらに、続く世代のコレクターたちは、現代に至るまでの日本美術の展開を効果的に説明できる作品収集を継続して検討するよう、美術館に示唆を与える。普遍的なことは、岡倉が表明した「東と西は互いをよく知るべきである。(ボストン美術館のような)素晴らしいコレクションは、この目的達成を助ける」という信念なのだ。」(参考文献1)
時代の移り変わりと共に、様々な理由から日本を離れ、ボストン美術館へと辿り着いた美術品の数々、日本に保管されていない事は少し寂しい気持ちにもなるが、今こうして素晴らしい展示会として日本で再会できる事は、率直に嬉しく貴重な機会だと思う。
(2)修復を終え、世界初公開となる18世紀の奇才 曽我蕭白の最高傑作<雲龍図>
エネルギーいっぱいに屏風に大きく龍を描いた作品が、会場でも特に来場者の目を引いていた。修復を終え、今回世界初公開となる<雲龍図>は必見ですよ。
<雲龍図>(部分) 曽我蕭白筆 江戸時代・宝歴13年(1763)ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
今回、ウィリアム・スタージス・ビゲローのコレクション寄贈100年記念事業として、ボストン美術館では、日本とアメリカの協力により、大規模な修復作業を行ってきたという。海外に渡った日本美術を蘇らせ後世に伝えることは日本文化の理解を深め、日米友好関係の一層の発展を促すことにもなると思います。
曽我蕭白の最初期から晩年の襖絵・屏風絵10点と掛軸1点が展示されています。
<虎渓三笑図屏風>曽我蕭白筆 江戸時代・18世紀後半 ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
<ホウ(广に龍)居士居士・霊昭女図屏風(見立久米仙人>曽我蕭白筆 江戸時代・宝歴9年(1759) ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
(3)ユーモア溢れる在外二大絵巻全場面を一挙公開!「吉備大臣入唐絵巻」、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」
今回特別全場面展示された2作品。会場内での長編絵巻展示は見応えがある。どちらの作品も場面ごとに細かく描かれ、子供から大人まで楽しめる絵巻物ではないかと思う。<平治物語絵巻>は、他の2巻もこの後都内会場で公開中だ。現存する3巻を鑑賞できる貴重な機会となっている。
<平治物語絵巻>3巻の展示予定
1.「三条殿夜討巻」今回のボストン美術館 日本美術の至宝展 東京国立博物館 平成館
2.「信西巻」静嘉堂文庫美術館 東洋絵画の精華展 4/14~5/20
3.「六波羅行幸巻」東京国立博物館 総合文化展 本館2室・国宝室 4/17~5/27
<平治物語絵巻 三条殿夜討巻>(部分) 鎌倉時代・13世紀後半 ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
<吉備大臣入唐絵巻>(部分) 平安時代・12世紀後半 ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
それにしても、日本美術の至宝が何故たくさん海を渡ったのか? と誰でも素朴な疑問を感じますね。その日本側の歴史もありました。
「二つの絵巻は、いずれも天皇や公家、社寺などにより厳重に守り伝えられていた什宝[じゅうほう]であった。しかし幕末以降の社会情勢の急変により美術市場へと放出されてしまう。特に「吉備大臣入唐絵巻」は、関東大震災や世界恐慌の影響、また茶掛けに不向きな内容もあいまって、実に9年もの間買い手がつかずにいたという。やがて「吉備大臣入唐絵巻」は天心の弟子でボストン美術館の東洋部長を務めた富田幸次郎に見出され海を渡り、「平治物語絵巻」とともに、ボストン美術館を代表するコレクションとなった。」(参考資料2)
(4)日本にあれば国宝級、重文級の海外で評価される日本美術品の数々
ボストン美術館の史上最大規模となる今回の日本美術展、他にも国宝級、重文級の至宝が沢山展示されています。一部ご紹介します。
<法華堂根本曼荼羅図>奈良時代・8世紀 ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
「霊鷲山[りょうじゅせん]で釈迦が諸尊や衆生[しゅじょう]に囲まれ法華経を説く光景をあらわしており、日本のみならず東洋美術の歴史を語る上で重要な作品。背面にある久安4年(1148)の銘文により、かつて奈良・東大寺法華堂(三月堂)に伝わっていたことがしられ、「法華堂根本曼荼羅図」と称される。」(参考文献1)
鎌倉時代から室町時代、僧侶画家を中心に発展した水墨画。江戸時代、初期狩野派の美しい絵画も。
<松に麝香猫図屏風>伝狩野雅楽助筆 室町時代・16世紀中頃 ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
<龍虎図屏風>長谷川等伯筆 江戸時代・慶長11年(1606)ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
明治時代海外へ渡った工芸品は、高い工芸技術により多くの人を魅了したそうです。世界誇れる日本の匠の技ですね。美術品として見ても素晴らしい作品の数々。
<短刀 尻懸則長>尻懸則長作 鎌倉時代・文保3年(1319)ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
<唐織 紅地流水芦菊槌車模様> 江戸時代・18世紀 ボストン美術館蔵
(Photograph©2012 Museum of Fine Arts, Boston.)
「ボストンを見ずして日本美術は語れない」とまでいわれるボストン美術館。JALもボストン直行航空便を昨日4月22日就航しました。再び、ボストンへの旅をしたい気持ちになった。
(追記)昨年、日本で公開された肉筆浮世絵と浮世絵版画の分野は今回除かれています。
東京 山種美術館で『ボストン美術館 浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽』(2011年2月26日~4月17)が開催されました。
会期:2012年3月20日(火・祝)~6月10日(日)
会場:東京国立博物館 平成館 [上野公園]開館時間:午前9時30分~午後5時
※ 金曜日は午後8時、土日祝休日は午後6時まで開館
※ 入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日※ ただし、4月30日(月・休)は開館
主催:東京国立博物館、ボストン美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式HP:http://www.boston-nippon.jp/
以上
(参考文献)
1.「ボストン美術館 日本美術の至宝展」図録
2.「ボストン美術館 日本美術の至宝展」公式HP http://www.boston-nippon.jp/
3.BIエッセイ2011/02/28 錦絵黄金時代の清長・歌麿・写楽初公開作品に満ちた「ボストン美術館 浮世絵名品展」
佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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