佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2012/01/23 『もしドラ』と共に『もしフリ』の時代 ―2012年、「複眼二刀流」で不変・変化を探る(後編 日本目線)―
先週の「(1)複眼二刀流~日本・世界(マクロ)と企業・個人(ミクロ)の関係を探る」に続いて、今週は日本目線で世の変化の本質を探りたいと思います。
一言でいうと『もしドラ』と共に『もしフリ』の時代ではないか?!
300万部に近い大ベストセラー『もしドラ』(岩崎夏海『もし高校野球の女子マネジャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』は、ご存じの方が多いと思います。プロのビジネスマンへの本格的勉強の必要性が意識された反映として歓迎すべき現象ですよね。
今、注目するのは昨年末に出版された日本未来小説マンガ『もしフリ』(池田信夫原作『もし小泉進次郎がフリードマンの「資本主義と自由」を読んだら』の示唆である。日本の政治経済の未来を正面から取り上げたマンガです。
2012年、日本目線で考えるテーマはこの『もしフリ』に端的に示されています。リアルでわかりやすい凄いマンガですね。日本の明るい将来を考え、国民が意思決定する時期が近づいている。
「政治には夢がある。こんな日本をつくろうよ!
2015年。首相となった小泉ジュニアは国家破綻の危機にどう対処したか。」(『もしフリ』帯より)
(2)複眼二刀流~ビジネスマンとステイツマンの両面持つ日本人になるために
①ビジネスマンと共にステイツマンであれ!
私は今、痛恨の反省の中でこのエッセイを書いています。
第1は、ミクロ経済のビジネスリーダーの端くれとして一定の貢献をしてきたと思う反面、ミクロ経済の基盤となるマクロ政治経済の改革への意識や行動が弱かったと思う。特に、ビジネスリーダーは、マクロ政治経済にどう関わるべきかという意外に重い問に応えるべきだが、少し引いていた結果、日本政治経済の危機が深刻になった責任の一部があるのではないかという自責の念があります。
第2は、戦後貧しい時代に育った中で、団塊の世代として自分の未来と人生のために一生懸命に生きてきたと思うが、選挙権やお金のない子供や孫の世代をどこまで考えてきたのだろうかという自戒である。ある意味、自由経済は間違った動きもするが正直に正当な復讐もする。
端的に言うと、ビジネスマンと共にステイツマンであれ! という反省である。
その問題意識から、2010年「政治経済を学び、考えるシリーズ」6回、2011年「政治経済書を読む」2回を執筆しました。3.11宮城県沖太平洋岸大地震の後は中断していますが、再開し、皆さんと一緒に学び考えたいと思います。
②日本の政治経済はどこに向かうべきなのか~小泉改革/民主党の政権交代体験が示す真実
2013年8月に衆議院の任期が終了する。2012年か2013年に衆議院選挙は確実です。日本人は、「小泉改革」「民主党政権交代」を支持して、既に正反対の両方の政治経済を体験した。
結果は明確です。すべて「低迷した20年」ではない。
過去の自民党政権と決別したデフレ化の小泉改革時代は、金融危機を解決し、公共事業を減らしながら「官から民」への経済改革で過去20年の中で唯一経済成長し、失業率も改善した。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を数兆円の赤字まで詰めた。
民主党の多く、自民党の半分、多くのメディアが「格差」が拡大したと批判したが、実体は違っていた。その前から続いていた「格差拡大」は止まり、「グローバル競争」「世代間格差」の大きいことが本質であることが専門家・ジャーナリストの研究書の出版で明らかにされた。「貧困」の増大は、経済成長戦略の欠如でもたらされたことも今や明白である。(詳細は2010/05/24 政治経済を読むシリーズ2 暴論に騙されないための経済入門書!辛坊治郎・辛坊正喜「日本経済の真実」
自民党麻生政権、民主党政権は「バラまき政治」と呼ばれる社会主義的配分優先政策を大々的に展開した。結果は経済停滞、円高、社会保障「聖域化」支出継続、公共事業再開、国債発行増大。そして実行しないと公約した消費税増税路線に転換している。パイを広げないでの配分優先とは、結局他人の財布から税金として巻き上げて、全体が貧しくなる「大きな政府」の社会主義的政策に近い。人類は長い悲惨な実践の結果、ほとんどの国が大失敗で約20年前に止めた政治である。(詳細は 2010/06/28 政治経済を読むシリーズ4~民主党ブレーン榊原英資氏と小泉内閣の経済財政大臣竹中平蔵氏の対談“絶対こうなる!日本経済”)
自民党、民主党の「行政財政改革」「地方分権」などの消極的姿勢を拒否した自民党・民主党の有志が結成した「みんなの党」が第三党に躍進しています。小泉改革の精神をある程度受け継いだ政党に見え、無党派や若手経済人の支持を広げていますね。大阪維新の会との連携も進めています。
橋本徹大阪市長・元知事率いる大阪維新の会が圧勝した。明治の廃藩置県以来の日本の統治制度を大変革するという。世界文明は大都市間競争の時代。公務員制度も抜本改革するという。橋本市長と元自民党地方議員有志が中心で結成した大阪維新の会。みんなの党と多くの無党派と若者が支持をした。国政への進出如何も注目されます。
ロバート・フェルドマン氏によると米国の財政問題は実は「小さな政府」と「大きな政府」の戦いが本質だと述べています。そして、日本はダイナミックなビジネス大国への復活の提言をしています。
マクロ政治経済から目が離せないというだけでの姿勢ではなく、どういう日本をつくるかという議論が大切な時期にいます。日本はどういう路線の選択が大事なのでしょうか。
(3)複眼二刀流~ジュニアとシニアの生き方が「世界の未来島」日本を救う
図:「人生3分法」のライフステージイメージ
準備期( 0~20歳)動物から人間への家庭教育、学校教育、地域教育で成長する時代
Ⅰ期 (21~40歳)大人として仕事で生きる職業能力実践習得、家族形成の時代
Ⅱ期 (41~55歳)領域一番で日本・世界で活躍し、子供の高等教育をする時代
Ⅲ期 (56歳~生涯)個人の適性・生き方に沿って、「生涯現役社会」に生きる時代
昨年の新生児は105万人。私たち団塊の世代の半分以下です。日本は世界で最も少子高齢化が進んだ国ですね。上記の政治経済と合わせて、ジュニアとシニアの生き方を考える必要があると実感しています。
①健康寿命75歳となった意味をジュニアもシニアもよく考えてみよう
定年は昔55歳、現在60歳。更に65歳までに雇用が求められていますがこれ事態大変なのは実情でしょう。だから、年金支給年齢を68歳にしたいという厚生省案は大きな批判にさらされました。しかし、それでは年金財政は立ちゆかないのは明らかです。
健康寿命75歳となった現在、ジュニアもシニアも抜本的に生き方を考える時期に来ているのではないでしょうか。
②シニアは「弱者」? 「強者」?――お金持つシニアが、お金持たない子供、孫の財布に頼り過ぎではないか
そのためには生き方の考えを変えればできると思います。
シニアは「弱者」とされ保護される世代と考えられていますが、かつてはそうだったと思いますが今も一律にそうでしょうか。
21日日経新聞夕刊報道によるとシニア世代(60歳以上)の多くは旺盛な消費で今や年間消費支出の44%を占めているそうです。健康寿命75歳となった現在、健康でお金も持ち、年金、医療も支給されている世代なのです。
しかし、年金は現役世代が働いて納める年金、医療費は健康保険での高齢者負担の別途徴収で支えられています。現在のシニアと若い世代の社会保障負担と給付の格差は数千万円以上ということがやっと明らかになり知られるようになりました。
健康なシニアは、税金を使う立場から税金を払う立場に考えを変えたらいかがでしょうか。子供や孫の世代の財布から先食いして心苦しく暮らすのではなく、可能な限り自分で働いたお金で気持ちよく生きる方がよいのではないでしょうか。
雇用制度、起業制度、賃金体系、年金方式などに大きく影響するので、結果ジュニアにマイナスとならないだけでなく投資・給付する制度・政策が必要でしょう。
ジュニアの方は、今や世界が舞台という現実を理解し、スイス、オランダのように一人当たりGNPが高い仕事と国づくりの先頭に立ってほしいと思います。
③「75歳現役」はすばらしい生き方――三喜(働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び)に満ちたゴールデンエイジ
文明の発展、政治経済の未来、生き方など多くの面で、日本は「世界の未来島」だと思っています。
日本人の新しい生き方、幸福の一案として、2010年新春に『三喜(働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び)計画』を提言し、実践しています。(詳細は 2010/01/12 2010年初夢(個人編):「働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び」の生きる喜び「三喜計画」を描く)
2012年初頭に当たり、大変化に備え、一緒に考え、準備を進めたいと思います。
誤謬、誤解、未熟な点が多々あるかもしれません。ご厚誼、ご指導、ご意見を賜れば幸いです。
以上
(参考文献)
1.池田信夫原作『もし小泉進次郎がフリードマンの「資本主義と自由」を読んだら』
(日経BP社 2011年11月 )
2.岩崎夏海『もし高校野球の女子マネジャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』
(ダイヤモンド社 2009年12月)
3.橋本徹・堺屋太一『体制維新-大阪都』(文春新書 2011年11月)
4.猪木武徳『戦後世界経済史』(中公新書 2009年5月初版、2010年1月5版)
5.戸堂康之『日本経済の底力』(中公新書 2011年8月)
6.ロバートフェルドマン・財部誠一『日本経済 起死回生のストーリー』
(PHPビジネス新書 2012年1月)
7.竹中平蔵・船橋洋一編『日本大災害の教訓』(東洋経済新報社 2011年12月)
8.辛坊治郎・辛坊正喜「日本経済の真実-ある日、この国は破産します-」(幻冬舎 2010年4月 第1刷)
9.著者 榊原英資・竹中平蔵 責任編集 田原総一朗『田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済 この国は破産なんかしない!?』(アスコム 2010年6月 第一版)
10.竹中平蔵・池田信夫・鈴木亘・土居丈朗『日本経済「余命3年」 <徹底討論>財政危機をどう乗り越えるか』(PHP研究所 2010年12月 第1版第1刷)
11.PHP研究所『VOICE』2012年1月号
12.日本経済新聞2012年1月21日号(夕刊)
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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