佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2011/12/19 2011年、「第九」に寄せる強い思い
今年の締めは、年末「第九」コンサートと決めています。どんな思いで聴くのか、自分でも予測がつきません。今秋、早めに予約しました。
2011年、故郷宮城県はじめ東日本は「1000年単位」の大地震、大津波、原発損傷によって未曾有の災害に見舞われました。今もって、心の多くが故郷への思いで占めています。
12月、日本中は「第九」の季節となります。先日届いた定期購読誌『モーストリー・クラシック』2012年1月号が「第九・交響曲ベスト10」を特集しています。
皆様も、コンサート、TV、CD、ダウンロードなど各人各様で結構ですが、「第九」に浸る時間をとってはいかがでしょうか!
(1)生のコンサートの迫力と感動
昨年末、初めて生の「第九コンサート」を聴く機会がありました。大変感動しました。
2008年年末に、『モーストリー・クラシック』2009年1月号「第九のすべて~永久保存版」特別付録CD<「歓喜の歌」聴き比べ>を聴いて、是非生のコンサートを一度体験したいと思っていたのですがやっと実現できました。
12月、「第九」は日本全国の風物詩と言われるようになっていますね。
日本では毎年12月だけでも100回以上「第九」が全国各地で演奏され、20万人以上の人々が「第九」を歌うとされています。回数だけでなく「一万人の第九」など壮大なスケールの演奏が恒例化しているのも日本だけのようです。
そのルーツと流れは、戦前NHKがラジオで暮れに毎年放送し、戦後N響が演奏し、続いて60年代に地方交響楽団が演奏し、80年代からは第4楽章を重視した「合唱曲」として盛大に開催されるようになったという。
ドイツには、12月31日大みそかに「第九」を演奏するオーケストラがありますが、日本のように
12月中ずっと「第九」のシーズンというわけではないようです。
(2)日本ならではの「年末の第九」の意味
東京フィルハーモニー交響楽団等多くの交響楽団で指揮者をされ、金城学院大学教授の小松長生氏は『リーダーシップは「第九」に学べ』の中で、日本ならではの「年末の第九」の意味についてこう述べています。
「第二次世界大戦で破壊されたウイーン国立劇場が1955年に再建され、「第九」が最初のコンサートに選ばれています。
日本では一足先に1947年、まだ大戦が終わって二年足らずの大変な時期に12月の第九演奏が恒例化(日本交響楽団、のちのNHK交響楽団)したとされます。
肉親、友人、隣人を失い、焼け野原となった日本は、戦後数十年のあいだ懸命に復興に努め、驚異の復興を遂げます。
「第九」合唱団の週1回の練習になんとしても駆け付ける人たち。そして、「師走」という独特の忙しさの真っ只中、「第九」を歌いあるいは「第九」を聴きに行く。
「第九」は、戦後を生きてきた人たちの多くににとって特別の意味をもつようになったのでしょう。
「戦後の大変な時期に自殺を考えたが、『第九』を聴いて救われた。折あるごとに『第九』を部屋に流している」という人が実に多いことに驚かされます。」(参考文献1)
(3)ドナルド・キーン「ベートーヴェンはわが人生と共に歩む」、長谷川初範「日本的な言霊のようなもの」
日本文学研究家であるドナルド・キーン氏は、『モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC』(産業経済新聞社 2012年1月号)に「ベートーヴェンはわが人生と共に歩む」を寄稿。その中で日本の第九の伝統について触れています。
「「第九」が毎日のように演奏されている光景は、世界広しといえども、師走の日本だけである。日本には“年中行事”ということに非常に強い伝統がある。毎年同じ時期に、同じものを食べ、同じ場所に行き、同じ喜びを分かち合う――。・・・ただ一つの曲を何十年も続けて演奏するのは尋常なことではない。何か特別な要素が必要なのであろう。」(参考文献2)
俳優の長谷川初範氏は、『モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC』(産業経済新聞社 2009年1月号)に「日本的な言霊のようなもの」を寄稿し、こう述べています。
「昨年の12月、バリトン歌手の宮本益光さんからお誘いを受けて聴きに行った読売交響楽団が、私が初めて聴いた生の第九でした。・・・
聴いていて、日本で第九が暮れに演奏されることに、初めて納得がいきました。ベートーヴェンが第九に込めた壮大な祈りは、日本人の、新しい年の幸せを祈る習慣と相通ずるものがあります。さらに言えば、日本的な「言霊」のようなものがあるように思えたのです。」(参考文献3)
寒さが厳しくなって来ました。ご自愛の上、年末をお過ごし下さい。
以上
(参考文献)
1.小松長生『リーダーシップは「第九」に学べ』(日経プレミアシリーズ新書 2011年9月)
2.『モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC』(産業経済新聞社 2012年1月号)
3.『モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC』(産業経済新聞社 2009年1月号)
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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