佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/07/12 中・高・大学生、大人の日本人は見る価値大。写真で見る国立博物館『誕生!中国文明』特別展!
7月6日より東京国立博物館、九州国立博物館、奈良国立博物館の順で、『誕生!中国文明』特別展が始まりました。先日、上野・東京国立博物館平成館での開会式、内覧会に参加しました。日本に大きな影響を与えた中国文明。今回は、中国文明の発祥の地であり、中国文明前半の都があった河南省で出土した文物が約150件展示されています。その半数は一級文物(日本の国宝に相当する)の名品という近年随一の中国展です。
伝説の夏王朝から北宋に至る中国約3000年を辿ります。「第一部 王朝の誕生 第二部 技の誕生 第三部 美の誕生」という3つの新しい視点で構成されています。
東京国立博物館での華やかな開会式の模様もお伝えします。開会式・内覧会に参加させて頂き、また公式画像11点をお貸し頂き、今回BIPWEBサイトでご紹介することが出きました。弊社編集スタッフ撮影の写真と共にご覧頂きたいと思います。
『誕生!中国文明』展は、九州、関西でも開催されますので、全国の読者の皆様に是非参加頂きたいと思います。
(1)華やかな開会式!ジャーナリスト田原総一郎さん・女優鳳蘭さんのスピーチ、チェンミンさんの二胡演奏、木下真理子さんの書。
今回の展覧会では、多くの文化人等の応援団が組織され、華やかな開会式でした。
ジャーナリスト田原総一郎さんは、日中ジャーナリスト交流シンポジウムでの印象を率直に話し、会場を沸かせました。「中国は、自国が弱いと思っていた時代は、“靖国”というカードで日本を攻撃した。今や中国は強いと自覚したので、日本とは“友好”という姿勢で接するようになったと述べていた。中国人は実に懐が深い国民ですね。」
女優鳳蘭(おおとりらん)さんは、インタビューに応えて中国への思いをこう述べていました。「私は、日本生まれで日本育ちですが、貧しかった父が中国大使館への寄付を続けていた姿を見て、自分のアイデンティティーを考えた記憶があります。」
二胡アーティストのチェンミンさんは、『誕生!中国文明』展覧会のテーマ曲を担当しています。7月23日(金)には、国立博物館平成館大講堂をステージにスペシャルコンサートが計画されています。
書家の木下真理子さんは、今回のテーマ『誕生!中国文明』の揮毫を担当されました。開会式では、チェンミンさんのテーマ曲演奏に合わせて、実際に招待客の目の前で大きな揮毫を実演され、盛んに拍手を浴びていました。
(2)「三国志」の英雄・曹操のものとみられる墓が発見された中国の中心地河南省。伝説の夏王朝から中国3000年の展示とは? ちょっと歴史スケールを調べてみました。
※ 岡田英弘『中国文明の歴史』(参考文献2)と読売新聞(参考文献3)の図を参考に佐々木が編集合成したもの
「河南省は南北を黄河と長江に挟まれ、西に山、東に平原が広がる交通の要衝だった。そのため、政治経済の中心地となり、商(殷)から北宋まで多くの王朝が都を置いた。司馬遷が編纂した歴史書「史記」に記される夏王朝もこの地で誕生したとの説が有力だ。」(参考文献3)
今回の特別展は、紀元前2000年の夏王朝誕生から1127年北宋まで約3000年間の流れを対象としています。中学・高校で学んだ歴史の記憶を思い出すために、会場で販売していた岡田英弘『中国文明の歴史』を読んでみました。
岡田史学は、中国史を五つの時代に区分しています。今回の展覧会は、岡田氏の区分によると中国以前の時代から中国史のほぼ第二期までとなりますね。
(3)一級文物に見入る『第一部 王朝の誕生』『第二部 技の誕生』『第三部 美の誕生』
古代文明の指標は何でしょうか? 宮殿等の大規模建築、金属器、文字などが挙げられ、中国では前18世紀頃に宮殿や金属器が登場し、前13世紀頃甲骨文字が始まったとされています。『第一部 王朝の誕生』
青銅器や玉器など王者の権威を示す作品から、古代王朝の誕生と歴史を振り返っています。
【幻の夏(か)王朝・前17~16世紀 動物紋飾板(どうぶつもんかざりいた)】
※動物紋飾板(どうぶつもんかざりいた)洛陽博物館蔵
有力な夏王朝説の二里頭(にりとう)遺跡から発見された高貴な古人の装身具。「青銅製の板にトルコ石の小片を嵌め込んで、動物の姿を真上からみたさまを表している。」(参考文献1:26ページ)
【商王朝・前13~12世紀、都であった殷墟(いんきょ) 方カ(ほうか)】
※方カ(ほうか)河南博物院蔵
祭祀用の酒を温める容器らしい青銅器。甲骨文に登場する商王の妃とされる「婦好」の銘文が内底にある。殷墟を都とする商王朝は青銅器文化の最盛期であったという。
【西周時代・前9~8世紀、埋葬した玉器 玉製胸飾り】
君主婦人の墓から出土した。中国では、新石器時代以来、死者を葬るとき玉器を身につけさせることがおこなわれたという。玉器1個、玉黄5個と多数のメノウ製丸玉を糸で綴ったもの。
【春秋時代・前7~6世紀、料理を盛る器 九鼎(きゅうてい)】
※ 九鼎(きゅうてい)河南省文物考古研究所蔵
「鼎は、肉類の料理を盛って、神々や先祖の霊に捧げた器。」(参考文献1:56ページ)九鼎は西周時代には王が使用したが、春秋時代には諸侯が権威を競って九鼎を使ったとされる。
【大帝国を形成した漢王朝・前1世紀、権威者の埋葬 金縷玉衣(きんるぎょくい)】
※金縷玉衣(きんるぎょくい)河南博物院蔵
玉衣とは玉を札状に加工し、糸を通して縫いあわせた服で、材質は金・銀・銅・絹。大帝国に拡大し400年安定的に支配した漢。その皇族や有力な王侯貴族は、亡くなると玉衣で覆った。
『第二部 技の誕生』
金銀器や陶磁器など、豊かな暮らしを彩る高度な工芸技術の誕生の姿が現物でみられます。【夏】
【戦国時代・前4~3世紀、暮らしの漆器 案(あん)】
長方形の板状の木胎漆器。四隅はL字形の青銅製金具で補強し、底部には低い足が付いている。上面は四つの渦が旋回する紋様を規則的に配置している。枠にも、黒地に赤を含む複数の色で紋様を描いている。暮らしに使う道具としては、工芸品に匹敵する出来映えですね。
【後漢時代・2世紀、楼閣建築模型 七層楼閣(しちそうろうかく)】
※七層楼閣(しちそうろうかく)焦作市博物館蔵
七階建ての楼閣の模型である。後漢時代の墓から大型楼閣の模型が出土している。空中通路技術や窓・欄干の精巧な装飾から、首都洛陽の繁栄と有力者層の豪奢な暮らしを伺い知れる。
【唐時代・8世紀、ギリシャ風の器形する貯蔵器 三彩双龍耳瓶(さんさいそうりゅうじへい)】
※三彩双龍耳瓶(さんさいそうりゅうじへい)鄭州市文物考古研究院蔵
「白い陶胎に緑釉と褐釉を流し掛けし、胴の下半分は露胎である。」(参考文献1:99ページ)北斉の白釉緑彩の器を起源に、7~8世紀に興隆。器形は、ギリシャより東西交流で伝わった。
【北宋時代・11~12世紀、細密な高度技法 金製アクセサリー 】
※金製(きんせい)アクセサリー 洛陽博物館蔵
北宋時代の貴族の墓から発見。超細密な技法である。金の針金の枠の内側に複雑な文様。枠の金線上に微少な金の粒を溶接。中心にトルコ石などの貴石を嵌め込んでいる。
『第三部 美の誕生』
書画、彫刻など中国伝統芸術の誕生と発展を貴重な文物を通じて触れることができます。
【西商時代・前11~10世紀の神仙世界 神面(しんめん)】
中国文化の伝統は多神教であったという。天上にも地上にも神々がいると信じられた。特に人間に近い姿で物語にも登場する仙人は永遠の願望であった。いずれも人がかぶるのは小さいので、馬か馬車につけて邪悪な気を払う鬼神の類の面飾りか。
【春秋戦国時代・前6~5世紀、トルコ石埋め込む象嵌技法 神獣(しんじゅう)】
※神獣(しんじゅう)河南省文物考古研究所蔵
春秋から戦国時代、河南省南部の楚国人は鬼神を崇拝したという。長首とひれ状足の怪獣が舌を出す。頭上には6匹の龍。背中の台には龍を咥えた別の動物が躍る。「表面全体には龍・鳳凰・虎などの紋様が、トルコ石の小片を嵌め込む象嵌(ぞうがん)技法で表されている。」(参考文献1:118ページ)
【唐時代・8世紀、土製で細密な表現技術 御者(ぎょしゃ)と馬(うま)】
※御者と馬(ぎょしゃとうま)洛陽博物館蔵
唐代の加彩俑は躍動的な表現が多いという。俑(よう)は、死者を埋葬するときに、殉死者の代わりに埋めた、木や陶器の人形を言います。型に粘土を挿入して制作。衣服や馬の飾りに朱色の彩色がよく残っているのがわかります。
【北宋時代・10世紀、宋三彩の焼き物 三彩舎利容器(さんさいしゃりようき)】
※三彩舎利容器(さんさいしゃりようき)河南博物院蔵
窯で焼成された陶器である。「型抜きした獅子と仁王が四面を囲むはこの形に表される。蓋、身、台の三つの部分から成り、表面にははなやかな貼花の装飾が施されている。」(参考文献1:147ページ)
【北宋時代・11世紀、石製書画 王尚恭墓誌(おうしょうきょうぼし)】
※王尚恭墓誌 (おうしょうきょうぼし)河南博物院蔵
隷書体の文字で端正な書画。朝儀太夫まで出世した官僚王尚恭の石製墓誌。文は、王尚恭と旧知の間柄の氾純仁、文字は司馬光である。司馬光は、誉れ高い中国の歴史書『資治通鑑』を編纂した知識人です。
以上
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『特別展「誕生!中国文明」』
会 期 2010年7月6日(火)~9月5日(日)
会 場 東京国立博物館 平成館 (上野公園)
開館時間 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
(ただし、会期中の金曜日は20:00まで、土・日・祝日は18:00まで開館)
休館日 月曜日
(ただし7月19日(月・祝)、8月16日(月)は開館、7月20日(火)は休館)
お問い合わせ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
展覧会ホームページ http://tanjochina.jp/
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(参考文献)
1.編集 東京国立博物館 読売新聞社 『誕生!中国文明』カタログ(発行 読売新聞社 太広 2010年7月6日)
2.岡田英弘『中国文明の歴史』(講談社現代新書 2004年2月20日)
3.読売新聞 2010年6月30日号 第19面
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