佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

 INDEX 

2009/07/06 経営品質・現場品質統合経営の時代②:遠藤功氏“現場力三部作”30万部ベストセラーの伝えるもの

 “遠藤功氏の現場力三部作”『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』が合計30万部のベストセラーであるという。皆さんの中にはもうお読みになった方もいらっしゃることと思います。今、何故改めて企業は“現場力”なのか?“現場力復権”が話題となるのか?

それは、日本の企業経営におけるミドル(現場)の重要性の再認識にあると思う。同時に現場力向上への経営品質を改めて問いただしているのではないか。

 先般、ある研究会で、著者である遠藤功氏の講演をお聞きし、引き続いたパーティーで直接お話をする機会があった。今年2月に『現場力復権~現場力を「計画」で終わらせないために』を出版された思いを伺った。お話を伺って、改めて4冊を読みました。
 
 現場力三部作30万部ロングセラーの理由の大半はその優れた内容にある。同時に現場の教科書として即実践的に使えるいわば「現場力あるテキスト」としての構想力・表現力にもあると思う。

 私は、本は本棚に飾るものもあるが、総じて即「ノート」として使うように数年前から考え方を変えて良かったと思っている。多読にも同時にアウトプット(経営、企画、実践、指導、講演、論文、エッセイ等)にも効果的である。遠藤氏の著作は、その点でもお勧めである。

(1) 遠藤功氏の現場力三部作『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』

参考文献”現場力三部作”

 遠藤氏は、早稲田大學ビジネススクール教授で教鞭をとり、株式会社ローランド・ベルガー会長として経営コンサルティングにも従事している。ご存知の方も多いと思います。

 2004年に『現場力を鍛える』を出版してから、現場力三部作『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』は30万部のベストセラーである。私は、現場力三部作の魅力は、現場力の最前線にいる現場リーダーと同時に経営者にも共感するものがあったのではないかと思う。

 遠藤氏は、経営品質の3要素を「競争戦略の品質」「オペレーションの品質」「リーダーシップの品質」と述べている。『私はオペレーションを、戦略を遂行する「組織能力」と定義している。オペレーションに内包される組織能力こそが「現場力」である。』(参考文献1:8ページ)

現場力三部作について、私からの稚拙な説明は避け、三冊の目次構成を紹介する。

『現場力を鍛える』(2004年)の目次は、次の通りである
 第1章 「強い現場」とは何か
 第2章 「強い現場」の7つの条件
 第3章 「強い現場」をどうつくるのか

『見える化』(2005年)の目次は、以下である。
 序 章 「見えない現場」と「見える現場」
 第1章 「見える化」とは何か
 第2章 「見える化」の体系と事例紹介
 第3章 「よい見える化」を実現するために

『ねばちっこい経営』(2006年)の目次は以下である。
 序 章 続けられる会社、続けられない会社
 第1章 「粘り」という競争力
 第2章 「黄金のかめ」を目指せ
 第3章 組織の粘着力を高める
 第4章 浸潤・感染・熟成が、組織の粘着力を生む
 第5章 個人の粘着力を高める

 私と共通する認識があった。私は、先週のエッセイで『日本全体で日本全体は低成長で“失われた10年”と言われるが、成長した企業と衰退した企業があり、その和が日本である。』と述べた。(BIエッセイ2009年6月29日号「経営品質・現場品質統合経営の時代①:『TQM21世紀の総合「質」経営』と『シックスシグマ』を読み返して思うこと」 詳細はこちら>>

遠藤氏は、こう述べる。「ある意味で、「失われた10年」は「現場力の喪失」と同じことを意味していると私は考えている。・・(略)・・しかしその一方で、日本にはトヨタや花王のような世界に冠たる「現場力」を誇る企業が引き続き存在する。」(参考文献1:はじめに)

現場力三部作は、その格差の要因と解決方法を示している。

(2) 遠藤功氏の最新著作『現場力復権』~日本企業の「現場力」は「日本の宝」

参考文献 旭山動物園物語

 遠藤氏の日本企業の現場力についての認識をまず紹介します。
 『私は、日本企業がもつ「現場力」は独自の優位性の源泉であり、「日本の宝」だと断言できる。20年に及ぶ経営コンサルタンントのキャリアの中で、日本のみならず数多くの海外企業の現場を訪問してきたが、日本企業の現場ほど、自ら知恵やアイデアを生みだし、創意工夫をしながらオペレーションを進化させている例はきわめて稀である。与えられたこと、決められたことをルーティン業務としてこなすだけでなく、現場自らが能動的に改善や改良をおこない、問題解決を進めるのは、世界的に見ても類がない。』(参考文献4:4ページ)

 我々日本人は当然だと思っているが、「現場力」は世界的に見ると日本企業の競争上の優位な組織価値として捉えるべきと率直に指摘している。トヨタ、コマツ、花王等日本を代表する製造業だけでなく、高収益を誇る食品スーパーのオオゼキや、年間来園者300万を超える旭山動物園を事例として紹介している。尚、旭山動物園の改革は、BIエッセイでも一度紹介し、大きな反響があった。(BIエッセイ2009年2月16日号 映画『旭山動物園物語―ペンギンが空をとぶ』を見ましたか 詳細はこちら>>

 私自身、2年間の短いコンサルテイングの経験からも、日本企業ではトップと同時にミドルの役割の大きさを実感した。30~40代のミドルを対象に2008年11月より2009年3月まで「BIPビーアイピー第1期事業リーダー実践塾」を開催した思いにも共通点がある。(詳細はこちら>>

『現場力復権』の目次は、以下の通りとなっている。
 序 章 再び、素朴な疑問
 第1章 現場力再考
 第2章 現場力強化の最前線
 第3章 組織の「くせ」づくり
 第4章 「見える化」はなぜ機能しないのか
 第5章 現場力強化の論点
 第6章 根源的組織能力としての現場力

 現場力三部作の影響もあり、多くの日本企業は「現場力強化」を経営課題に掲げるようになった。しかし、「計画倒れ」に終わってしまう企業も少なくない。その根本的打開への思想と提案が『現場力復権』である。

 『「計画倒れ」の理由はいろいろあげられるが、共通する根本的理由のひとつは、経営としての「覚悟の欠如」である。現場力という組織能力は、一朝一夕には実現できない。地道な活動を粘り強く積み重ね、一歩一歩自分たちの組織能力を高めていくという不断の努力なくしては、現場力を手に入れることなど不可能である。これまで数多くの企業から現場力強化の支援の要請を受けてきたが、受諾する際、私は必ずひとつの条件をつけている。それは、「10年続けるつもりがありますか」という問いかけである。』(参考文献4:6ページ)

 現場力復権とは、私の言う経営品質・現場品質統合経営の本質の一つを提示していると思うのである。遠藤氏は、競争力は「戦略2割、現場力8割」と表現している。

(3) 本をノートにする効用。齋藤孝『原稿用紙10枚を書く力』、松岡正剛『多読術』に学ぶ。

参考文献

 現場力三部作30万部ロングセラーの理由の大半はその優れた内容にあるが、同時に遠藤氏の著書は、現場の教科書として即実践的に使える「現場力あるテキスト」としての構想力・表現力にもあるのではないかと述べた。

 本に対する上記のような視点が生まれたのは、数年前からの習慣があったからかもしれない。長年私は多読であるが、多読の割に本を有効に読んで使っていないのではないかと疑問を持ちながら解決策が見えなかった。今は、本は本棚に飾るものもあるが、総じて即「ノート」として使うように数年前から考え方・行動を変えて良かったと思っている。4色ボールペンや多色マーカーで線を引き、メモを書く。多読のためにも同時にアウトプット(経営、企画、実践、指導、講演、論文、エッセイ等)にも実に効果的であると実感している。本は過去の集積であり、実に安い特別の媒体だと考えるようになった。
 
 数年前に、齋藤孝『原稿用紙10枚を書く力』(参考文献5)のアイデアに刺激されたことは確かである。

「私は趣味のときと仕事のときとでは、まったく違う本の読み方をする。書くことを前提にして本を読む場合には、三色ボールペンを使って、後で引用できる部分など重要な部分は赤、次いでまあまあ重要な部分を青、個人的におもしろいと感じた部分、興味を抱いた部分を緑で線を引いておく。それらのページに附箋を貼ったり、ページを折っておいて、後で探しやすいようにしておく。・・(略)・・私は、本を読みながら、感じたことや考えたことなどを見返しの部分やページの余白に書き込んでいき、日付をつけておく。こうすると本自体が読書ノートも兼ねることになる。」(参考文献5:76ページ)

 今年4月出版の松岡正剛『多読術』(参考文献6)には同様の考え方が記述されており確信は強まっている。本はノートである。セイゴオ式マーキング法の意味をこう述べている。

 『では、ここからは、ぼくの読書術や多読術の方法の案内になりますが、まずは二つのことをススメておきたいと思います。ひとつには自分の気になることがテキストの“どの部分”に入っているのか、それを予想しながら読むということです。この、「予想しながら」というところがとても大事ですね。もうひとつは、読書によって読み手は新たな時空に入ったんだという実感をもつことです。そのことを読みながらリアルタイムに感じることです。この「リアルタイムに感じる」ということが大事です。・・(略)・・そこで、ぼくはこの二つのことをあらかじめはっきりさせるための方法として、読みながらマーキングすることを勧めています。』(参考文献6:82ページ)
以上

(参考文献)
1. 遠藤功『現場力を鍛える~「強い現場」をつくる7つの条件』(東洋経済新報社 2004年2月)
2. 遠藤功『見える化~強い企業をつくる「見える」仕組み』(東洋経済新報社 2005年10月)
3. 遠藤功『ねばちっこい経営~粘り強い「人と組織」をつくる技術』(東洋経済新報社 2006年12月)
4. 遠藤功『現場力復権~現場力を「計画」で終わらせないために』(東洋経済新報社 2009年2月)
5. 齋藤孝『原稿用紙10枚を書く力』(大和書房 2004年10月)
6. 松岡正剛『多読術』(筑摩書房 ちくまプリマー新書 2009年4月)

トップへ

サービスのご案内

無料相談会

お問い合わせ

コラム「ミニ講座」

BIエッセイ

特集コラム

採用情報

無料メルマガ

無料メルマガ
BIPニュース
配信中!

BIPからのお知らせ、ビジネスに役立つ情報、佐々木昭美のBIエッセイ要約等、月2回配信!

メールアドレス:

東北復興支援

ページ上部へ戻る
Top