佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2008/04/01 4/1入社式ー入社教育に思うこと
本日4月1日は多くの企業で入社式が行われています。経営トップのスピーチは、翌日以降の新聞に順次掲載されるのでご覧頂きたい。私は、毎年なるべく多くの企業の記事を丹念に読みます。経済の情勢とトップの経営施策がよく分かり、大変勉強になっています。多くの企業は、当日或いは翌日より新入社員教育を実施します。業種や職種によりますが、短くて1週間、長い場合は半年の場合もあるでしょう。相当の時間と費用を投入して人材育成を行っています。日本の企業教育は、極めて有用であると思っています。また、必要であると思っています。
日本企業の多くは、職種別採用でないことが多く、新入社員は専門学校や大学修士卒業といっても、職業専門能力が不十分なのは明らかです。ドイツのようなマイスター大学は日本にはありません。もうひとつは、欧米のようにエリートとワーカーのように明確に区分された採用ではなく、総合職として、一応スタートは全員エリート候補者なのです。その点では、日本ほど身分格差の少ない国は、世界にないと思われます。
私はコープさっぽろ時代に教育MGR、TQCMGR、人事統括MGR、ネットワンシステムズ時代に総務人事部長、管理本部長の職にあった関係上、延べ数千人の採用や教育の現場に10数年接してきました。日本の人事・教育団体、企業の方とも一緒に勉強させて頂きました。
30数年の時代の変化の中で、中途採用も随分と増えましたが、多くの企業は依然として、新卒が人材の中心と思われます。
経営者も、新入社員も誤解しないでほしいのは、企業は「仕事」で成果をあげるために雇用しているということです。従って、新入社員教育は、まず一日も早く仕事をできる人材に教育訓練することです。
ところが、これがそう簡単ではありません。教育部門は、職業人意識への変革から仕事が始まるのです。欧米では、「キャリアデザインは、自己啓発と人生設計のイロハ」です。
第1に、日本の学生は、高校、大学でも欧米のように必死で勉強した体験をもっていない学生が多いのです。心身共に苦労するという体験が少ない「甘チャン」意識なのです。入学は難しいが卒業は楽なのが日本の高等教育の問題点です。私も中学、高校とスポーツマンでしたので、体育系の学生が良いと言って優先採用する企業の経営者や人事採用者の気持ちも良くわかるのです。
第2は、企業側の採用の手抜きです。1980年代後半のバブル以前は、職業能力の適正検査と人事面接、事業部長面接、役員面接を比較的オーソドックスに実施していました。バブルで採用が困難になると、面接のみになり、しかも先輩とのコミュニケーション、
グループ面接など人材評価の素人に任せてしまい、ひどいところは一次選考を専門会社に委託する事態が発生しました。多くの会社は、反省して元に戻りつつありますが、依然として尾を引いています。教育の前に、人事の強化が必要です。
教育内容で最近感じたことがあります。多くの企業で議論や講演をしていて、経営の基礎技法であるTQCの7つ道具、新7つ道具、問題解決手法等の言葉が通じない世代が出てきている感じです。私の世代は、製造業は当然ながら、流通業やサービス業でも小集団活動や改善活動を実施し、その科学的改善技法も実践しました。今や、欧米の大企業でもリーン方式とかシックスシグマなど名称は変えていますが、日本の改善運動と同じ内容を進めています。
BIPは、2月から「IC(イノベーション&コーポレートガバナンス)研究会」を毎月2回開催しています。3月28日まで第4回を実施しました。MOT(技術経営)専門教育の概論を勉強しましたが、そのツールはやはり試されずみの経営工学手法であるようです。
教育部門の役割について、改めて考える良い機会です。
言葉は、文化であり、技倆です。どういう哲学、行動、技術、技能、手法などを身につけた社員を育成するかという基本方針をもって人材育成する必要があります。それが、組織DNAにつながるのだと思います。
「改善・改革と変化のDNA」をもった人財の質量が、持続的成長の原動力だと痛感するこの頃です。