佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

 INDEX 

2013/09/17 読書の秋~鳥の眼で日本再成長の論点を考える:竹中平蔵『ニッポン再起動』

今年の読書の秋は、消費税導入時期の結論、成長戦略国会等日本再成長の正念場の秋となった。アベノミクスは日本再成長のチャンスをもたらしつつあるが、第2の矢(財政戦略)、第3の矢(成長戦略)の中核はこれから決まる。論点を理解し、再び正しい世論を強くする必要がありますね。

 

【はじめに】電車の中で簡単に読める竹中平蔵『ニッポン再起動 こうすれば日本はよくなる!』

ズバっと、単刀直入に「こうすれば日本はよくなる」と提言。事実に即し、具体的政策があり、国民がどう考えるべきかをわかりやすく簡単に読める本です。電車の中でも一気に読めます。

ご存じの方が多いと思いますが、竹中平蔵氏の略歴を簡単に紹介します。

1951年生まれ。現在は、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所所長・総合政策学部教授。(株)パソナグループ取締役会長。アカデミーヒルズ理事長。

2001年には小泉内閣で経済財政政策担当大臣に就任し、2002年金融担当大臣・経済財政政策担当大臣、2004年経済財政政策・郵政民営化担当大臣、2005年総務大臣・郵政民営化担当大臣。2013年第二次安倍内閣が新設した「産業競争力会議」メンバー。

本書は、3つの章立てとなっています。その中で、私なりにポイントを列挙してみます。

 

【第1章】 最も失われた五年――なぜ日本経済は異常事態に陥っていたか

図 日本経済の推移(本書P196より引用)

多くの政党やマスコミの流す幻影でなく、経済の事実を正確に認識する良書です。学問レベルの論争も、現実の比較数字で多くは決着済みですね。

「回復の6年(2002~2007年)」と「最も失われた5年(2008年~2012年」を比較して誰でもわかる指標の変化を示しています。日本は一律に「失われた20年」ではなく、政権の処方箋によっては元気で健全な時代があったことを明白にしてくれている。

 

◆「回復の6年(2002~2007年)」(小泉・第一次安倍・福田内閣)

平均成長率 + 1.8%

株価変化率 +45.2%(同期間のアメリカの株価上昇率32.4%を上回る)

基礎的財政収支 2002年 28兆円 ――> 2007年 6.4兆円

 

◆「最も失われた5年(2008年~2012年)」(麻生・鳩山・菅・野田内閣)

平均成長率 - 0.2%

株価変化率 -32.1%

政府予算 小泉内閣 82兆円 ――> 民主党内閣 95兆円 +13兆円

為替   円はドルに対して4割上昇。韓国ウォンに対して5割上昇( 2006年3月に日銀が量的緩和解除。)

輸出額 2007年 83.9兆円 ――>2012年 63.7兆円 -20.2兆円

就業者 2007年12月 6450万人 ――>2012年12月 6255万人-195万人

失業者 2013年2月 280万人 企業内失業者 2011年9月 465万人

 

まず、数字の現実を知ることが大切だと思います。

その上で、これはどういう政策で大きな違いが起きたのかを冷静に見つめる必要があります。

 

【第2章】 ニッポン再起動への道

この章は、ニッポン再起動の本質論です。これまで日本人は、上記の現実数字の認識と本質的議論を避けて来た傾向があると思います。或いは、意図的に否定する勢力のキャンペーンの力に相当影響受けた面も大きかったと思います。しかし、もう時間がないという危機感を持って議論することが必要です。竹中氏の提起する論点のキーワードのみ記載します。

1.世界はアベノミックスをどう見ているか?⇒世界が歓迎したアベノミックス。何故か?

2.イノベーションはどうすれば起こせるか?⇒世界はシュンペーター的グローバル競争時代。異端児が社会を引っ張る。イノベーションには金融力が欠かせない。何故か?

3.イノベーションを起こす人をどう育てるか⇒イノベーターをつくるための大学を。東大を民営化すべき。何故か?

4.「TPP参加」は日本に何をもたらすのか?⇒TPP参加は成長戦略の一環。日本は輸出が少ない国。何故か?

5.雇用と労働をどうする?⇒「同一労働・同一条件」ですべての人に雇用保険と年金を。何故か?

6.日本の景色を変える成長戦略⇒国家戦略特区。経済を活性化する「一丁目一番地」は政府が民間の邪魔をしないこと。何故か?

 

【第3章】「東京特区」が日本経済の景色を変える--「アベノミックス戦略特区」(仮称)と「コンセッション(インフラ運営権の民間売却)」

産業競争力会議メンバーである竹中氏は、成長戦略の中核として、規制改革の突破口としての「アベノミックス戦略特区」(仮称)および、官業の民間開放の象徴としての「コンセッション(インフラ運営権の民間売却)」を提言しています。

<今度の東京特区は凄い>
先般、2020年東京オリンピックが決まりました。80%以上の国民が支持しています。東京を中心とした関東圏は今でも世界最大の富の集積地です。東京オリンピックは、東京・日本がスポーツ精神を日本、世界に伝える大会です。同時に、「東京特区」は日本が再び経済成長のあり方や経済・社会のあり方のモデルとなるように変革する象徴にもなると思われます。

今回の特区は、総理が国家戦略として特区を決める。総理の命を受けた特区大臣が、地方の首長、そして民間企業などで「三者統合本部」を設け、ここが全権を持って規制改革を進めていく。いわば、ミニ独立政府です。

<「コンセッション(インフラ運営権の民間売却)」も凄い>
「コンセッション(インフラ運営権の民間売却)」も素晴らしい提言だと思います。全国に建設された地方のインフラ資産は膨大です。その多くは、国や自治体・第3セクター等が担っています。そのメンテナンスと共に未来の地域づくりを官民共同で担う制度ができると思います。地方の民間活性化にも貢献できると思われます。

「空港・道路・上下水道などキャシュフローを生むインフラの簿価はネット(資産マイナス負債)で約90兆円の規模に達すること。たとえばこの半分の運営を十年で民間に開放すると、四五兆円のコンセッションが可能となります。それだけ民間のビジネスチャンスが増え、かつ財政資金が捻出されるのです。」(参考文献1)

 

私含め日本人が、虫の眼に強く元気で稼ぐビジネスマン(ミクロ経済)と共に、鳥の眼にも強い元気で知恵持つステイツマン(マクロ政治経済)となり、日本再起動を推進する力になるように頑張りましょう。

以上

(参考文献)

1.竹中平蔵『ニッポン再起動 こうすれば日本はよくなる!』(PHP研究所 2013年8月)

2.竹中平蔵・池田信夫・鈴木亘・土居丈朗『日本経済「余命3年」 <徹底討論>財政危機をどう乗り越えるか』(PHP研究所 2010年12月 )

3.著者 榊原英資・竹中平蔵 責任編集 田原総一朗『田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる! 絶対こうなる!日本経済 この国は破産なんかしない!?』(アスコム 2010年6月)

4.佐々木昭美のBIエッセイ 2011/02/21 政治経済書を読む-第2回-私たち納税者、必読の一冊!経済学者4名が経済財政を縦横に語る『日本経済「余命3年」』。

5.佐々木昭美のBIエッセイ 2010/06/28 政治経済を読むシリーズ4~民主党ブレーン榊原英資氏と小泉内閣の経済財政大臣竹中平蔵氏の対談“絶対こうなる!日本経済”

≪BIP ブックモール≫
読者の皆様へより便利に参考情報・参考書籍をご紹介するために、Amazon.co.jpアソシエイト・プログラムを採用しています。

>>佐々木昭美へのご相談はこちら


thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

>>詳しいプロフィールはこちら

◆ご質問・お問い合せはこちらから
専門コンサルタントへの、ご質問、ご相談等、お気軽にお問い合せ下さい。

BIPコンサルティング無料相談会のご案内 IT系企業/フランチャイズビジネス/M&A/組織・人事/小売業/建設業関連企業

各分野プロコンサルタントとの無料相談会を実施しています。
お気軽にお申し込みください。

受付中の無料相談会はこちら

トップへ

サービスのご案内

無料相談会

お問い合わせ

コラム「ミニ講座」

BIエッセイ

特集コラム

採用情報

無料メルマガ

無料メルマガ
BIPニュース
配信中!

BIPからのお知らせ、ビジネスに役立つ情報、佐々木昭美のBIエッセイ要約等、月2回配信!

メールアドレス:

東北復興支援

ページ上部へ戻る
Top