2016/03/15 第17回「過度だと感じることがある「人事制度への期待」」
それぞれの会社には、いろいろな社内制度があると思います。
私が関わることが多いのは人事制度ですが、これを整備しようと考えるきっかけをみていると、大きく二つのことがあります。
一つ目は、会社の規模拡大や組織化の必要性に伴って、企業ステージの新たなステップを考えている場合です。
事業範囲が拡大すれば会社として取り組む仕事の幅が広がり、社員数が増えればそれに伴って分業化も進むのが一般的です。会社の将来を展望したときに、今のままの仕組みでは不足や不都合が見えていて、それを整備していくことの必要性に迫られているような場合です。
二つ目としては、すでに運用している制度があるものの、方向性が合わない、思うように機能しないなど、当初の目論見と実態との不整合が生じてきた場合です。
人事制度やその他社内の仕組みを作るには、必ずそれなりの目的があり、その実現を目指して仕組みづくりをする訳ですが、そのすべてが当初の思惑通りに行くことはほとんどありません。やはり実際に運用してみなければわからないことはたくさんあり、それなりの試行錯誤はどうしても必要になります。
そんな中でときどき見受けられるのは、制度を作ったり変えたりするということによって、“すべての問題が解決する”、“画期的に変わる”など、過度に効果を期待している場合があることです。中小規模の企業や、比較的社歴の浅い企業ほどそのような傾向があります。
「制度を作れば、直せば解決する」と、過大評価して捉えているように感じることがあります。
過度な期待を持つ企業を見ていると、いろいろなことがまだまだ属人的に動いていることが多く、仕組みや制度を作って組織を動かすという経験値が必ずしも多いとはいえないために、出てきた課題の原因を「制度が悪いから」「仕組みがないから」と考えがちなところがあるように思います。
また、現場の事情をあまり把握できていない経営者や管理者も、これと同じような考え方をする傾向があります。たぶん現場で行われている仕事のプロセスや人の様子などがよくわからないため、形になっていて自分の目にも留まりやすい「制度」や「仕組み」の方に目が向きがちなのだろうと思います。
しかし、人事制度の場合でいえば、対象としているのは「人」なので、最後の部分は個人の感情までつながってきます。制度で決まっているからといっても、自分の役割や評価や給料について、それだけで納得できるわけではありません。
誰が評価したか、どんな説明をされたか、話す姿勢や態度、評価する側とされる側の人間関係、その他いろいろな要素によって、制度がもたらす効果は変わってきます。
毎回機械的に同じように対応しても、相手の反応は違ってきます。やはり「人」が対象ということで、運用面に左右される要素が大きいということがあります。
人事制度だけでなく、社内の制度や仕組みというのは、それができたからといって、課題が解決されて一件落着になることはほぼありません。仕組みと運用が相まって、時間をかけて徐々に変わっていくものです。
人事制度をはじめとする社内制度に対しては、それができたからといってあまり過大な期待をせず、できたところから初めてスタートになるという認識を持っておくことが必要だと思います。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
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