2015/09/18 第15回「「個」に注目しなければなり立たないこれからの時代」
私自身、仕事の打ち合わせやちょっとした作業、その他いろいろな方とお会いする中で、カフェや飲食店を利用する機会がありますが、最近のサービスを見ていて思うのは、マニュアルだけで済ませないサービスの比率が増えているのではないかということです。
必要なマナーや、言葉づかいといったことでの基本はありますが、それ以上は個々のスタッフが、それぞれの顧客の様子を見て、それぞれの事情に合わせ、より良い対応を考えながら接しています。
マニュアル的な要素が強いと、訓練されたことによる安心感はありますが、笑顔や丁寧さがあったとしても、少し事務的な印象は否めません。また、マニュアルで想定された道筋からちょっと外れると、急にスムーズさがなくなります。
これに対して、個別対応を許容しているところは、スタッフによる個人差や多少のゆるさを感じるときはありますが、何となく温かい感じがします。
この違いが何かを考えると、自分に対する意思確認をどのくらいしてくれたか、自分の話をどのくらい聞いてくれたかという、プロセスへの手間のかけ方の違いという気がします。
初めから枠をはめ、やり方を決めてしまっていると、人の価値観が多様化している中では、その枠からはみ出す人が増えてきます。それを防ぐためには、現場レベルで臨機応変に判断するような、個別対応のサービスが必要になってきているということでしょう。
このような「個人への注目」ということでは、一般的な組織マネジメントでも同じことが言えます。
ほんの少し前までは、地位や肩書、高額報酬、「昔はこうだった」という過去の経験、もう少しレベルが低いと、気合と根性のような精神論など、ある枠にはめ込んだ上でのモチベーション施策、キャリアデザインが行われてきました。
近年では、個人の資質や性格、適性、経験といった点に目を向け、キャリアデザインや人材育成の方法も、その人に応じた個別対応の形がどんどん増えてきています。この個別対応の流れについていけないような人たちが、「今どきの若い奴は・・・」「昔だったら・・・」と言っている頻度が多いように思います。
社員の職業観やモチベーションの源泉は、どんどん変わってきており、なおかつ多様化しています。そのため、現場を預かるリーダーにとっては、マネジメントにおける手間がどんどん増えてきています。
しかし、会社全体としての取り組みは、いまだに過去の画一的なマネジメントと同じ意識のままであることが多いように思います。それほどの対策はとられておらず、しわ寄せは現場のリーダー、マネージャーに行ってしまいます。
これが、ある程度マネジメントに専念できるような、余力があるリーダーやマネージャーであれば何とか対応しますが、プレイングも担っているようなマネージャーは、そもそも今まで以上に手間をかける余力などはありません。
ただ、これらを制度化ばかりで対応しようとしたり、リーダーやマネージャーの数を増やしたりしても、今度は管理コストが増えてしまうなど、それはそれで好ましいことではありません。
これからは、手取り足取り指示しなくてもよい自律した人材、セルフマネジメントができる人材をどうやって育てていくかが、企業としての大きなテーマになってきます。
どんな分野であっても、これからは「個」に注目しなければなりたたない時代です。
企業の中での人材マネジメントにおいても、個別対応を念頭に置いた仕組み作り、体制作りを考えていかなければならないと思います。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
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