2015/07/22 第14回「社会人が語る「不平不満」の一番の理由」
偶然目にとまったウェブサイトに、ちょっと気になることが書いてありました。
「学生はお金を払っているにもかかわらず、(学校の)文句をあまり言わないが、社会人はお金をもらっているのに(会社の)文句を言う」という言葉です。
振り返ってみて、自分にとっての学校は、基本的に楽しい場所で、苦情や文句を言おうとする対象と思ったことは確かにありません。まぁ学校に要求しようと思うほどのことがなかったということもあります。
しかし、会社に対してはちょっと違っていたと思います。行くと仕事がある、給料がもらえるということは当たり前で、それに感謝するという感覚は、特に若い頃は全くなく、それ以外の不満の方が圧倒的に多かったです。やはり、会社に対するいろいろな「不平不満」を言っていました。
この違いは何なのか・・・? 私の結論は、「最終的に自分の意志で決めているかどうか」ということです。
学生のうちは、授業に出るか出ないか、勉強するかしないか、付き合う友人、サークル活動、バイト先、その他自分の身の回りの多くのことを、自分の意志で決めることができたように思います。
もちろんイヤな事も制約もありますが、しょせん自分に返ってくることですから、放置することも逃げることもできるわけで、最終的には自分次第でした。
その一方、社会人の場合は、一日のうち最も長い仕事時間を会社で過ごします。雇われて働いている限り、イヤな仕事でも逃げられないし、苦手な人でも付き合わなければならないし、自分の意志に反したことでもやらなければならないことがあります。自分では決められないこと、自分の意志ではどうしようもないことにたくさん遭遇します。権限が少ない一般社員であれば、なおさらそうでしょう。
学生だってそんなに楽ではないとは思いますが、自分の生活全体の中で、自己判断できる自由度ということでいえば、相対的に社会人の方が少ないことは間違いないと思います。
私の専門分野の一つである人事制度では、こんな状況を改善するために、この「自分で決める」というプロセスを、制度の中に取り入れるような取り組みがされています。
多くの会社で取り入れられている「目標管理制度」は、自分で納得した自己管理目標に主体的に取り組むことが動機づけにつながるということですから、導入の主旨などはこの典型でしょう。自己決定を手助けするようなコーチング、カウンセリングなどというものも同様です。
ただ実際には、十分な時間が与えられなかったり、形骸化していたり、上意下達のムードがあったり、コミュニケーションスキルが足りなかったりと、制度があってもなかなかうまく機能しないのが実情です。組織と個人の意識のすり合わせというのは、それくらい難しいことなのだと思います。
目にしたウェブサイトの最後にあった一文は、「社会人でも、事業主や自営業の人は、仕事をくれる人に感謝するようになる」と書かれていました。私も独立して仕事をしている今の立場だからこそ、自分で決めているからこそ、わかるようになったことがたくさんあります。仕事をさせて頂くことへの感謝もそうです。
人間は、「そもそも他人の命令には従いたくないもの」という話を聞いたことがあります。命令に従っているのではなく、この命令には従っておこうと自分で決めているのだといいます。このあたりは主観によるところも大きく、全く同じ状況だとしても、自分で決めたと思えば我が事でしょうし、強制と思えば強制です。
組織としての方針、考え方を維持しながら、「自分で決めさせる」というプロセスをきちんと踏んでいくと、社員が会社に対して不平不満を言う頻度は確実に減っていきます。もちろん簡単な事ではありませんが、いろいろな場面で「自分で決めさせること」を意識するだけでも、様子は大きく違ってくると思います。今までよりもさらにもう一歩だけ、意識的に取り組んでみてはいかがかと思います。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
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