2013/11/15 第4回「「目標管理制度」を有効活用するために」
人事制度の中に「成果主義」を取り入れるにあたり、当初は、「目標管理制度」を評価ツールとして使う企業が多く見られました。しかし、そもそもの「目標管理制度」は、動機づけを行うためのマネジメントツールとして考えられたもので、各人が目標設定やその進捗と実行の管理を自主的に行うことで、主体性が発揮されて成果につながるという考えに基づくものです。
これを評価ツールとするには、各人の目標レベルや難易度が統一される必要があり、そのような運用が大切であると強調されてきましたが、理屈通りにいくことは、残念ながらそう多くはありませんでした。
仕事内容、部門、評価者、その他諸々が各人バラバラな環境の中で、目標のレベルや難易度を合わせ、達成度を客観的に評価するということは、あまりにも難しかったのです。例えてみれば、それぞれのチーム毎、選手毎にルールが違うサッカーで、公平にジャッジしろというようなものでしょう。
異なる条件、基準のもとで評価をすれば、結果は当然不透明なものとなり、それが直接給与に反映されるとなれば、到底納得されるはずはありません。
また「目標管理制度」での目標は、あくまで重点目標ですから、当たり前に行わなければならない仕事や定型的な仕事は、目標には取り上げにくいものです。“取り上げた目標で評価される”ということは、裏を返せば“それ以外のことでは評価されない”ということで、結果として「目標と関係ないことはやらない」という者も出てきてしまいました。
最近は多くの企業で「目標管理制度」の運用見直しが行われていて、いろいろ試行錯誤がされています。運用スキル向上の研修を行う、記入書式を変える、評価との関連性を減らす、制度自体を止めるなど、やり方はいろいろです。私は「目標管理制度」の主旨は肯定しつつ、結果を直接的に評価反映することは、経験上あまりお勧めしませんが、これも各社の事情(企業体力、事業内容、社風、人員構成、マネジメントスキル、経験値・・・.etc)によって違うでしょう。いずれにしても、「目標管理制度」を有効活用するのは、きちんとした用途とそれなりの工夫が必要である事は確かです。
人事評価のポイントとしてよく言われるのは、“納得性”、“透明性”、“公正性”ですが、これは「目標管理制度」の中でも同様の部分があります。有効活用のためのポイントを、3つほど挙げておきたいと思います。
・自社にとっての成果が何かをしっかり定義する
“結果がすべて”の考え方もありますが、会社にとっての成果は、単純な売上利益だけではありません。プロセス改善のような間接的で地味なこともあるし、人脈作りのような将来に向けた取り組みもあります。個人成果もチーム成果もあります。どんな事柄を「成果」として捉えるのかをしっかり定義し、みんなで共有することが大切です。
・自社の運用能力を考慮する
“自社に合った制度”ということに通じますが、実際にその制度を使えるだけの運用能力があるのかということを考慮する必要があります。いくら「公正な評価を!」と言ってもしょせんは人間がやることで、制度で決めればできるというほど簡単ではありません。社員の能力的に見て、使いこなせないような制度は、会社にとっても社員にとっても何の得にもなりません。
・他社事例をうわべだけでマネしない
いろいろな会社の人事制度の事例が、多くは成功事例としてネットや書籍で紹介されています。これらを参考にすることは多いと思いますが、反面、会社毎の環境の違いも大きく、事例をそのままマネしたり、トレンドや一般論を鵜呑みにして取り入れても機能しないことが多々あります。参考事例の背景をよく考え、自分たちに合わせてアレンジすることを前提にした方が良いでしょう。
「目標管理制度」は、あくまでマネジメントツールの一つと理解した上で、自社なりに有効活用のしかたを考えて行くことが、最も大切であろうと思います。
小笠原 隆夫(おがさわら たかお)
コンサルタント(人事制度、組織活性化、採用支援)
人事制度構築、組織活性化といった人事の悩みは、多くの企業で抱えている のではないでしょうか。
人事コンサルタントとして直面した課題事例や、人の感情ややる気・ムードといった人間の感覚的な切り口を合わせ、みんながハッピーになれる人事、組織とはどんなものなのかを考えて行きたいと思っています。
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