コラム「ミニ講座」

2021/03/10　【FC】「FC本部構築：本部による立地診断、売上予測」

こんにちは。BIPの高木 仁（たかぎ ひとし）です。

店舗型の事業において出店場所の選定は非常に重要なことです。そのため、加盟者は、自身が選んだ物件の立地診断や売上予測、物件の紹介などについて、本部によるサポートを期待します。

今回は、本部による立地診断、売上予測について解説します。

■FC本部による立地診断、売上予測は義務なのか

結論からお伝えすると、本部による立地診断・売上予測は義務ではありません。

売上予測の精度を上げるためには、相当数のデータが必要になります。しかし、本部としてアーリーステージの企業では、分析のために必要なデータをそろえることは困難でしょう。また、出店予定地が加盟者の地元であれば、本部よりも近隣の情報に精通しており、より詳しい状況を把握していることもあります。

さらに、売上予測は、あくまでも将来の予測であり、経済動向、市場環境、加盟者の経営努力などによって大きく左右されます。正確な予測は無理なことです。

中小小売商業振興法やFCガイドラインにおいても、加盟希望者に対する情報開示事項に、立地診断や売上予測値は含んでいません。

https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/franchise.html

このようなことから、本部としては、その責任を回避するため、売上予測や売上保証はしないことをFC契約書に記載します。

しかし、加盟者はその開業にあたり本部による立地診断や売上予測、物件紹介などのサポートを期待します。また、一般的には加盟希望者に対して収支シミュレーションなどを提示します。FCガイドラインでは、

“予想売上げ又は予想収益の額を提示する場合、その額の算定根拠又は算定方法が合理性を欠くものでないか。また、実際には達成できない額又は達成困難である額を予想額として示していないか。”

としています。そのため、収支シミュレーションや立地診断結果の基礎データとして根拠のある資料が必要になります。その算出過程や根拠となる数値に客観性、合理性、正確性を持たせることが必要です。さらに、具体的な調査方法や調査日時、時間帯などの調査状況についての説明も必要です。

■本部による立地診断方法の整備

アーリーステージの本部には十分なデータがないため、出店候補地の立地評価などは本部の経験則で行うケースがほとんどでしょう。この場合、加盟希望者に対して立地診断結果などを提示する場合には、「類似する条件の店舗が無いこと」「本部としてはデータの蓄積が少ないこと」「本部所有のデータでは正確な売上予測が困難であること」等の実情を加盟希望者に伝えてください。また、出店候補地と類似の条件の店舗を例示することは困難なため、比較的近い条件の直営実績や、全店舗の平均値などの数値を提示することになります。

ただ、本部としては、いつまでもそのような方法に頼っているわけには行きません。加盟店の増加に伴い、データに裏付けされた立地基準を整備していく必要があります。

立地基準の設定方法や売上予測については、改めて解説したいと思いますが、最後に、立地診断の３つの視点「商圏」「動線」「地点」について下記に紹介しておきます。

①商圏
来店する顧客が居住・勤務している地域の特性、商圏人口（店舗に集客できる商圏範囲の人口）

②動線
候補地への近づきやすさ、競合店との位置関係、店舗までの動線や方向（駅や施設などから店舗までの経路）、接近性（駅や施設などからの近さ、利便性）

③地点
候補地や近隣の特性、店頭通行量（店の前をどのような人がどれ位通るのか）、視認性（店舗がはっきり認識できるか）、店舗の構造（出入口や柱、店舗設備などの位置や造り）

参考書籍：フランチャイズ研究会 著「フランチャイズ本部構築ガイドブック」（同友館）

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高木 仁（たかぎ ひとし）

コンサルタント（IT企業 企画提案力強化・人材育成、フランチャイズ本部構築）

私は、フランチャイズコンサルを専門領域の一つにしており、フランチャイズ本部の構築や本部機能の強化などの支援をしています。このコラムでは、フランチャイズビジネスの情報や、フランチャイズ事業化を検討中の皆様に役立つ情報を中心に発信していきます。

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