佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2017/09/01 夏休みハワイで、60代の私が人生100年時代を考えた
今年の夏休みは、3年ぶりにハワイ家族旅行を楽しみました。妻と娘2人の女子会3名がアクティビティに出かけている間、自分一人、部屋や浜辺で読書や自由に考えるゆったりした時間が取れたことは有益だった。
9月は私の誕生月。そのせいもあり、8~9月は自然に自分の人生を振り返り、将来を考える大事な季節になっています。今年の夏休みは、私の人生100年を思索しました。
日本は世界一の超高齢化国家。間もなく2025年には、最大人口世代である団塊世代が75歳を迎えます。リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』がベストセラーとなり、人生の100年戦略が話題となっていますね。40代までの若い方々にとっては刺さる内容であり、私も読んで好著と思いました。
ところで、既に60代後半となった私は、人生100年時代をどう考えたらよいのでしょうか?
80歳以上の日本人の先輩お2人の著書を読み返して学ぶ事がたくさんあり、今後の生き方を考える参考になりました。それから、心強くなる若いリーダーの言葉も。今回のエッセイでは人生100年時代を考え勇気をもらった3つの言葉をご紹介します。
【1】美しく生きる、そして「お山の大将」になる
短命社会時代の「老後は余生」という考えは、長命社会時代に似合わないのではないか?という年来の疑問に明確な答えをくれた書籍に出会い小躍りしました。
93歳「知の巨人」お茶の水女子大学名誉教授 外山滋比古先生の『知的な老い方』。(参考文献1)212万部突破『思考の整理学』の著者です。
「老後は余生にあらず、新しい人生、第二部である。二部は一部よりつまらないと限ったことではない。輝かしい第二部だってあるはずだ。」 私もYESだ!!
株式投資、晩学に取り組む等多くの実践例紹介が役立ちましたが、私は2つの事に特別惹かれました。
浜までは海女も蓑着る時雨かな 瓢水
この俳句は忘れないことにしようと強く私の心を打った。2つの意味があると言う。
「海女はいずれ海に入るのである。時雨が降っていても、どうせ、濡れるのだから構うことはないとしてもよいところだが、さすがにたしなみは忘れないで、蓑を着ていく。その心を美しいと見た句であろう。・・・(中略)・・・この「浜」は、死ということにもなる。人間、死ぬまで、生きている限りはせいぜい身をいとい、よく生きることを心がけなくてはいけない。」
もう1つは、「お山の大将」になる。
随所に主となれ 臨済義玄
誤解を受ける言葉であるが、外山先生は、頼まれて何かの大将になるのも良いが、それもなかなか難しいということを体験した。従って、自任の大将ならばうまくいくだろうと、外山先生自身が勉強会、趣味の会、株式投資研究会、起業等、そしてホストとなり人にご馳走することを実践しています。先生は80歳で出版社を起業しながら2年で閉じたが、お山の大将は生きがいになると述べています。私は50代後半でBIP(株)を起業して10年経ちました。いたく共感した次第です。
【2】いい人ぶらずに生きてみよう
凄い言葉だと思い、読みました。たくさんの欲望を抱えながら、無理やり善人ぶって生きるより、己の分に正直に生きる。まずはそれでいいではないか、と。
茶道裏千家第十五代家元で現在大宗匠である千玄室氏の著書『いい人ぶらずに生きてみよう』(参考文献2)。千氏が80代半ばになって執筆した本のタイトルです。日本人への人生を賭しての警句!!
私自身、前職ネットワンシテムズ(株)(三菱商事のコーポレートベンチャーでIPO、東証一部上場企業に超急速成長)役員時代はもとより、現在のシニアベンチャーBIP(株)を自ら起業し、シリアルイノベータっぽい性格でありながらも、経済人リーダーである日本人の身の処し方は事業に影響するので制約が避けられないという意識が抜け切れませんでした。それは何らかの欲望から来ているのですね。
「お茶の家元が、何を偉そうなことを、と思われる方もいるでしょう。
たしかに私自身、六十代、七十代の頃には、たとえ思うことがあっても飲み込んでいた言葉がたくさんあります。余計なことを言って人様から煙たがられたくはないとも思っていましたし、自分自身、偉そうに語る資格はまだないとも思っていました。
要するに、「いい人」でいたかったのです。
嫌なやつと思われるよりも、いい人だと思われたい。それは人としての自然な感情といえるでしょう。
ところが、本当にいい人なんて、この世の中、そうはいません。むしろ、人間なんて悪いものなのです。・・・(中略)・・・自分の中にそういう「悪さ」があることを知っているからこそ、人は「いい人」であろうとする。けれど、たいていの人はここで決定的な間違いを犯して、「いい人になる」よりも「いい人に見られよう」としてしまう。つまり、「いい人ぶって」しまうのです。」
「年をとるというのはありがたいことで、私も八十歳の半ばを越えて、ようやく、他人の視線よりも自分が真になすべきことを大切にしようと思えるようになりました。・・・(中略)・・・たとえ人からなんと言われようと、私のような立場の人間が、いまのこの日本にあえて苦言を呈すべきではないか。そんな義務感ともいうべき思いがふつふつと胸に湧いてきたのです。」
【3】起業家に5つの役割
上記の先輩世代の思いを既に実践している若い世代のリーダーがいる事も知り、心強くなりました。日経産業新聞2017年8月25日号「面白く生きる!」(参考文献3)に堀義人グロービス経営大学院学長の記事が掲載されています。私の次女がグロービスMBAコースに通っており、日本ベンチャーキャピタル協会パーティーで私も堀学長にお会いして面識がありましたが、この記事は素晴らしいメッセージに満ちています。
起業家の5つの役割への強い思いがありました。
起業家の5つの役割
第1は、イノベーションを通した価値創造をする
第2は、規模の拡大を通じた雇用や富を創出する
第3は、オピニオンリーダーとして社会変革に積極的に発言する
第4は、蓄積した富と能力を社会に還元する
第5は、ロールモデルとして「勇ましい高尚な生涯」を遺す
私が職業人として、40年を超える人生を過ごして一番思うのは、自己認識の如何を問わず、個人の人生はマクロ政治経済、技術、社会に大きな影響を受けるということです。
従って、その分野の未来調査・勉強を継続して進めています。改めて、沢山の皆様と意見交換したいテーマですね。
以上
<参考文献>
(1) お茶の水女子大学名誉教授 外山滋比古『知的な老い方』(大和書房 だいわ文庫 2017年2月 本体650円+税)
(2) 茶道裏千家第十五代家元 千玄室『いい人ぶらずに生きてみよう』(集英社新書 2010年5月 本体680円+税)
(3) グロービス経営大学院学長 堀義人「起業家に5つの役割」(日経産業新聞 2017年8月25日号)
≪BIP ブックモール≫
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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