佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/04/16 佐々木流BI経営 進化論 第5回 「するべきこと」がわかっているのに何故実行できないのか?

BI経営進化論
 「するべきこと」はわかっているのに何故実行できないのか?

 企業リーダーやマネージャーの方々からよく聞くテーマの一つです。

 多くの企業が4月から新年度。年度計画の実践が始まっている現在、このテーマを理解し直すことは意味があると思いました。
 
実は、この問題を4年間にわたって実証研究した名著があります。一度読んでみることをお薦めします。

ジェフリー・フェファー+ロバート・サットン『実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか』

この本は、2000年に流通科学大学出版から発刊された『変われる会社、変われない会社―知識と行動が矛盾する経営』を編集し、2005年に復刊された隠れたベストセラーです。

ネットワーク業界最大手シスコシステムズ社長兼CEOジョン・チェンバース氏が次のような推薦の言葉を寄せています。「新たなルールで動く現代経済のもと、専門知識を活かして成功を手に入れたいのなら、本書のアドバイスに耳を澄ませてほしい。」

(1)THE KNOWING―DOING GAP 「知識と行動のギャップ」

参考資料
 ジェフリー・フェファー氏は、スタンフォード・ビジネススクール教授で専門は組織行動論。
 ロバート・サットン氏は、スタンフォード・エンジニアリングスクール教授で専門は組織行動論。

 「するべきこと」はわかっているのに何故実行できないのか? 本書ではこのテーマを知識と行動の問題-業績を上げるための知識を行動に移す問題と呼んでいる。意外にもこの問題の先行研究がほとんどなかったことが、4年間の実証研究を生むことになった。

【1】知識と行動のギャップを生む原因
 この回答は、本書の目次に明確であるが、意外に思われるかもしれない。

第1章 知識は実行して価値がある。
第2章 言葉を行動と錯覚していないか?
第3章 前例が思考を妨げる
第4章 恐怖心が行動をはばむ
第5章 評価方法が判断力を狂わせる
第6章 内部競争が敵をつくる
第7章 知識と行動のギャップを乗り越えた企業
第8章 知識を行動に変えよう

結論を端的に言うと、①とにかく、考えつつもっと行動せよ。行動を起こせば、経験から何かを学べる。②実行の格差は、総じて個人の差ではない。マネジメントシステムの差にある。その内容は誤解を避けるために本書を読んでほしい。

【2】知識を実行に移して成功する企業の特徴
 成功企業を調べた結果は、欧米系コンサルタント偏重の向きには意外だが日本の経営者には当然と思える王道であった。

業績への影響は、知識を行動に移す能力より、知識の中身の違いではないだろうか? 本書は、それは業績を左右する一因に過ぎず、知識を行動に移す能力の違いのほうがはるかに影響力が大きいと、述べている。その理由も鋭い筆鋒で語る。

①情報伝達だけのコンサルタントや研修プログラムが多い。

「経営の「秘訣」などと称して、どこかで知識を拾いあさっては、ばらまいている商売が多すぎることである。・・・それらはすべて、情報の伝達が目的である。いわゆる「情報ブローカー」が、経営に関する情報を収集し蓄えては、顧客に伝えている。大手コンサルテイング会社のアクセンチェアやマッキンゼー・アンド・カンパニーなどにも、顧客とのかかわりから手に入れた経営のノウハウを、情報をもたない顧客や、情報をまだ使っていない顧客に伝える部門がある。」(参考文献1)
 
②成功例は公知の王道が多い。

 「成功例を調べてみると、たいていだれでも知っているやり方を実行していた。まったく目新しい、難しいことをしたわけではない。」(参考文献1)

 その事例として、ホンダを取り上げています。

 「ホンダの協力会社の経営強化策を考えてみよう。同社のBPプログラム(最高の経営・生産工程・
実績をめざすプログラム)に参加した53の協力会社は、生産性を平均50%アップさせている。ホンダのやり方を研究すると「生産ラインのリエンジニアリングに必要なのは、抽象的で複雑な知識ではなく、具体的で単純な知識だった。」ホンダは「カイゼン」という考えをつらぬき、小さな、単純でごく常識的な改革を日常的に積み重ねた。ホンダ方式がすぐれていたのは、複雑で新しい技術やアイデアではなく、実行力だった。」(参考文献1)

 1980年代までの日本製造業の競争力について、米国の経営研究学術界は1990年代に正確に実証分析を完了していた。欧米経営学の理論知は、実は日本企業の実践知に近づいていました。

成功した欧米企業は、日本経営の長所をしっかりと学び、それを上回る努力が1990年代以降に行われていたことがわかります。

 日本企業が、欧米経営論への偏重を反省し始めたのは業績悪化が続いた最近のことですね。実は日本には知識と実践に関する長い伝統がありました。陽明学の「知行合一」という実践哲学です。戦後、軽視或いは敵視され、アカデミズムと実業界の乖離をもたらし、高等教育が実業に役立つ研究を軽視する悪しき風潮を生み出しました。やっと、最近反省が起きている段階ですね。

(2)BIP事業リーダー実践塾で学ぶ改革実践力

 会社全体でも、部門でも、個人でも実践できる改革実践力をBIP事業リーダー実践塾で講義し、各社への展開支援をお手伝いしています。

「四画面思考の成功宣言」フレームワークです。コミットメント経営と改善活動を組みあわせ、改善と改革の成功を生み出し、多くの成功事例が広がる試され済みのマネジメントシステムです。簡単に紹介します。
詳細はこちら>>

◆現在の事業と中長期の事業を同時に進化させる「四画面思考の成功宣言」 近藤修司氏(前北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科教授、元日本能率協会コンサルテイング(株)代表取締役社長)
近藤修司氏
『永続する企業進化のフレームワーク! 実績広がる「四画面思考」による改革実践力!』


猶予できない時代の変化を先取りして、持続的進化をし続けるフレームワークがあります。日本有数のコンサルタント会社社長の実践経験と、世界初の知識科学科教授のMOT(技術経営)理論研究で深められた「四画面思考の成功宣言」。塾生が当初誰でも簡単にできると思うシンプルなフレームワークだが、やって見るとその一表が改革実践力の共通思考言語になる深さに驚く。私は、「四画面思考の成功宣言」は日本発の「公共財」だと思っています。

ご関心の方は、BIPまで電話またはメールでお問い合わせ願います。

以上

(参考文献)
1.ジェフリー・フェファー+ロバート・サットン『実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか』(ランダムハウス講談社 2005年12月)
2.近藤修司&成功の宣言文コミュニティ『四画面思考の基本』(成功の宣言文文庫 2009年)

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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