佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2012/03/05 今年必見のフェルメール展鑑賞。5つのフェルメール名画と東京で会える贅沢!
先週末、開催中のBunkamura ザ・ミュージアム「フェルメールからのラブレター展」を鑑賞してきました。絶対お薦めなので公式画像含めてご紹介します。会期は来週3月14日(水)まで。まだ間に合いますので、是非足を運んでほしいと思います。
『日経おとなのOFF』(参考文献5)によると、今年は10年に一度の西洋美術展ラッシュ。フェルメール、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ゴヤ、セザンヌ、ボストン美術館展、大エルミタージュ美術館展、ベルリン国立美術館展、マウリッツハウス美術館展、メトロポリタン美術館展など。
その中で、とりわけ私が注目している企画展の一つが、3つの「フェルメール展」です。国内外で人気の高い画家フェルメール。今年は、フェルメールの作品を扱った企画展が東京で3つ予定されている。Bunkamura ザ・ミュージアムで開催「フェルメールからのラブレター展」(2011/12/23~2012/3/14)、国立西洋美術館で開催「ベルリン国立美術館展~学べるヨーロッパ美術の400年~」(2012/6/13~2012/9/17)、東京都美術館で開催「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」(2012/6/30~2012/9/17)。
フェルメールの作品は現在世界中に37点しか現存していないといわれています。そんな貴重なフェルメールの名画が多く見られるこの機会、全て見たいと楽しみにしています。
(1)「フェルメールからのラブレター展」-3つのフェルメール名画と共に、手紙をテーマに17世紀オランダの暮らしやコミュニケーションの様子を垣間見る
やはり、フェルメールは大人気で、手紙をモチーフにした3作品のエリアは大勢のお客様が並んでご覧になっていました。
同時に、同時代17世紀オランダで活躍した画家たちの名画を、手紙というコミュニケーションをテーマに展示した画期的展示会です。フェルメールに影響を与えた素晴らしい名画の数々はもちろん、当時のオランダの様子や人々の生活・文化・宗教・思想を知ることができる貴重な機会となりました。
「スペイン支配から独立を果たしたオランダは、ヨーロッパ諸国の中で先駆ける市民社会を確立しました。さらに世界貿易の活性化はこの国を豊かにし、市民たちの生活も次第に潤ってゆきます。そのような時代の中で、当時の人々がどのような形でコミュニケーションを交わしていたのか、本展覧会では4つの章に分けてその様子を絵画的、文学的側面を持って展観します。」(参考文献1より)
「フェルメールの時代、手紙を書くことは、芸術という形式のひとつとして認識されていた。もはや、ことばを書くことは単なる情報伝達の手段ではなかった。むしろ、個人的な感情をかよわせるための方法となったのである。手紙を書くということが詩や演劇の主題となり、また手紙を書くための入門書も書かれた。フェルメールは、・・・(略)・・・手紙を書くという主題がもつ絵画としての可能性に魅力を感じて、彼の全作品の少なくとも5分の1をこの主題に捧げたのであった。」(参考文献1より)
・ヨハネ・フェルメール≪手紙を書く女≫
ヨハネ・フェルメール≪手紙を書く女≫(A Lady Writing)1665年頃 油彩・キャンヴァス、ワシントン・ナショナル・ギャラリー
ⓒNational Gallery of Art, Washington, Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer, Jr. , in memory of their father, Horace Havemeyer.
・日本初公開 ヨハネ・フェルメール≪手紙を読む青衣の女≫
ヨハネ・フェルメール≪手紙を読む青衣の女≫(Girl Reading a Lette)1663年-64年頃 油彩・キャンヴァス、アムステルダム国立美術館、アムステルダム市寄託
ⓒRijksmuseum, Amsterdam. On loan from the City of Amsterdam (A. van der Hoop Bequest)
「2010年、2011年にかけて行われた修復作業を終え、世界に先駆けて本展にて初公開される事となりました。この修復作業により、作品が受けてきた加筆や修復、そしてダメージなど、多くの発見がなされました。科学的な検証と最先端の修復技術によって、このたび、フェルメール自身の描いた当時の色合い、明るい光の表現がよみがえりました。長年、ベールに包まれてきたこの作品の魅力を心ゆくまでお楽しみいただければ幸いです。」(参考文献1より)
修復によって蘇った、「フェルメールブルー」とも呼ばれる、ラピス・ラズリの美しい天然ウルトラマリンブルーを是非生でご鑑賞頂きたい。
・ヨハネ・フェルメール≪手紙を書く女と召使い≫
ヨハネ・フェルメール≪手紙を書く女と召使い≫(A Lady Writing a Letter with her Maid)1670年頃 油彩・キャンヴァス、アイルランド・ナショナル・ギャラリー、ダブリン
ⓒNational Gallery of Ireland, Dublin, Sir Alfred and Lady Beit Gift, 1987 (Beit Collection) Photo ⓒNational Gallery of Ireland. Photographer: Roy Hewson
光の表現を効果的に使ったフェルメールの美しい3作品を一度に鑑賞できました。また、当時のオランダの人々の暮らしぶりにはいたく感心した。プロテスタントの教えの影響から3歳頃から勉強を始め、当時から欧州一識字率が高く、水準の高い教育体制が進められていた事がわかる。
また、手紙というコミュニケーションを大切にして、人と人との絆も大切にしていた様子も感じられた。PCや携帯でメールが普及した現代、手紙(それも手書きの)を出すことはとても少なくなってしまった。今回の展示を通して、直接相手に自分の言葉でメッセージを伝えることの出来る手紙は、いつの時代もやはり心がこもっていると感じた。BIPでも毎年2回、1月の創業記念と7月の暑中見舞いに葉書を郵送している。現代においてはアナログなコミュニケーション手段かもしれないが、アナログこそ心がこもっているのではないだろうか。時代を超えてこれからも手紙を大切にしていきたいと思った。
(2)私のフェルメールとの出会いの旅-パリ、ニューヨーク、オランダそして今年日本
私のフェルメールとの出会いは、海外の旅から始まった。
【パリ・ルーヴル美術館 ≪レースを編む女≫≪『天文学者』≫
私の初めてのフェルメールとの出会いは、約20年前のパリに遡る。ルーブル美術館で≪レースを編む女≫』と≪天文学者≫を見た。有名画家が多い中でも、フェルメールの≪レースを編む女≫』の繊細な美、宗教画でなく≪天文学者≫』をモチーフに描いた意外さの印象が残っています。
【ニューヨーク・メトロポリタン美術館 ≪窓辺で水差しを持つ女≫≪窓辺でミュートを弾く女≫≪眠る女≫≪少女≫≪信仰の寓意≫】
2006年初秋にアメリカ東部への一人旅をした際、ボストン、ニューヨーク、ワシントンを訪ねた。現存するとされるフェルメール37作品の内、実に15点が米国にあるそうです。ニューヨークに8点、ワシントンDCに4点、その他に3点。
ニューヨークのメトロポリタン美術館で≪窓辺で水差しを持つ女≫≪窓辺でミュートを弾く女≫≪眠る女≫≪少女≫≪信仰の寓意≫を鑑賞。暗闇を背景にこちらを向く≪少女≫を思い出す。メトロポロタン美術館の美術品は、フェルメールの名画を含めて成功した事業家の寄贈が多いのが特徴である。
ワシントン ナショナル・ギャラリーの≪手紙を書く女≫は、現在開催中のBunkamuraザ・ミュージアムで見る事ができます。
ニューヨークのフリックコレクション(≪稽古の中断≫≪兵士と笑う女≫≪女と召使≫)、ワシントン ナショナル・ギャラリーの≪フルートを持つ女≫≪天秤を持つ女≫≪赤い帽子の女≫は今度訪れる機会を楽しみにしています。
【オランダ・マウリッツハイス美術館 ≪真珠の耳飾りの少女≫≪デルフトの眺望≫≪ディアナとニンフたち≫】
2007年9月、フェルメールの故郷デルフト始め、ハーグ、アムステルダム等を訪ねました。マウリッツハイス美術館で待望の≪真珠の耳飾りの少女≫≪デルフトの眺望≫≪ディアナとニンフたち≫をじっくりと観ることができました。
≪真珠の耳飾りの少女≫は6月日本にやって来ます。再会が楽しみですね。
(3)フェルメールの魅力-小林賴子『フェルメール』、福岡伸一『フェルメール 光の王国』、茂木健一郎「脳で見る名画」
フェルメールの魅力をアマチュア愛好家の私が言葉で語るのは憚られる。しかし、「観る喜び」と「知る喜び」を両方楽しめるのは嬉しく幸福なことであり、是非皆様にもお薦めしたい。
【日本におけるフェルメール研究のスペシャリスト 小林賴子目白大学教授が『フェルメール』で全作品と謎めいた生涯を簡潔に解説】
友人に見せられた画集にあったフェルメール≪牛乳を注ぐ女≫が心に残り、大学院でもフェルメールを研究し始めたことが小林教授のフェルメール研究人生になったという。
「まずは、作品数が少なく、希少性が高いことが一因であろうか。・・(略)・・フェルメール作品に光学画像を思わせる特徴があることも現代人の心を捉えるのかもしれない。・・(略)・・犯罪の匂いがついてまわるのもフェルメールならではだろう。・・(略)・・日本人に関していえば、西洋の、それも17世紀絵画なのに、鑑賞のために特別な神話や宗教の知識が要らないように思えることがファン層の広がりに大いに役だっていよう。」(参考文献2より)
【“光のつぶだち”を求めて、実際に世界の美術館を訪ね34点を見た生物学者・福岡伸一青山学院大学教授の美術ミステリー『フェルメール 光の王国』】
一気に読んだ。特段の美術や科学の知識がなくても面白い。ダン・ブラウン著『天使と悪魔 上・下』のタイムリミット・サスペンス風の美術ミステリーとなっている。
「画家ヨハネス・フェルメールは1632年、オランダに生まれた。奇しくも同じ年、アントニ・ファン・レーウェンフック、そしてベネディクトゥス・デ・スピノザが、同じ国に生を享けた。方法は異なるものの、彼らは同じものを求めた。それは、フェルメール作品の細部に秩序ある調和として現れている「光のつぶだち」であった。
彼らが焦がれた、その光に導かれ、私は旅に出た。」(参考文献4より)
【脳科学者 茂木健一郎氏が「脳で見る名画」の中でフェルメールの美しさに至る秘儀を語る】
脳と美しさ、脳と音楽・・(略)・・。最近、私の興味のテーマでもある。脳科学の専門家茂木氏がそれに斬り込む言葉を知りたくなった。
「静謐な空気をたたえるその写実的な画風は、フェルメールの人気の大きな理由の一つである。フェルメールの代表作の一つ≪真珠の耳飾りの少女≫。・・(略)・・とりわけ印象的だったのが、少女の目。斜め後ろを振り返りながら微笑むその表情には深い光があり忘れがたいが、よく見ると白目のところは筆の跡がわかるくらいの表現である。決して、繊細なタッチを積み重ねただけの作品ではない。時に、フェルメールは思い切った飛躍をするのだ。」(参考文献3より)
(4)見逃せない今後開催のフェルメール作品展示の予定
フェルメールの名画に会える下記2展示も見逃せない。今から心待ちにしています。
ヨハネ・フェルメール≪真珠の耳飾りの少女≫展示
東京都美術館「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」
会期:2012年6月30日~2012年9月17日
ヨハネ・フェルメール≪真珠の首飾りの少女≫展示
国立西洋美術館「ベルリン国立美術館展~学べるヨーロッパ美術の400年~」
会期:2012年6月13日~2012年9月17日
会期:2011年12月23日(金・祝)~2012年3月14日(水)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1-B1F
開館時間:午前10時~午後7時(入場は各閉館の30分前まで)
※毎週金・土曜日は午後9時まで(12月30日、31日を除く)
お問い合わせ: 03-5777-8600
http://vermeer-message.com/
(参考文献)
1.『フェルメールからのラブレター展』図録
2.小林賴子『フェルメール -謎めいた生涯と全作品』(角川文庫 2008年9月)
3.週刊 西洋絵画の巨匠4『フェルメール』(小学館 2009年2月)
4.福岡伸一『フェルメール 光の王国』(木楽舎 2011年8月)
5.日経おとなのOFF『2012年 絶対に見逃せない至高の画家100人の名画』(日経BP社 2012年1月号)
≪BIP ブックモール≫
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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