佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2014/08/04 夏休みにお薦めの本25冊~未来への旅
今年の夏休みは、「未来への旅」をしませんか! 私は、今年を“See(調査・視察) & Think(仮説・検証)”の1年として、「未来への旅」となる視察や読書をしています。
日本は、間もなくお盆を中心に夏休みのピークを迎えます。普段仕事でお忙しい皆様も本を数冊集中して読む時間のとれる季節の一つですね。今年も「お薦めの本25冊」をお届けします。
2014年前半に私が読んだ本の中から、小説や学術分野は省略しつつ、「未来への旅」に繋がる本を中心に選びました。皆様の未来にとって参考になれば嬉しい限りです。
猛暑の季節です。お身体を大切にして、ご家族揃って楽しい夏休みをお過ごし下さい。
<超ミクロの脳から無限大の宇宙まで視野を広げてみる>
(1) 東京大学大学院薬学系研究科准教授 池谷 裕二『単純な脳、複雑な「私」』
(ブルーバックス 2013年9月 本体1200円+税別)
誰かに話したくなる話題満載ですよ!絶対お薦めです。脳研究は格段に進展し、「脳の不思議」がかなり分かっています。池谷氏は、多くの受賞を受けた気鋭の脳研究者。この本は、高校で行った連続講義がそのまま書籍になったもので大変読みやすいです。
(2)ブリテッシュコロンビア大学心理学准教授 エリザベス・ダン、ハーバード・ビジネススクールマーケティング学准教授 マイケル・ノートン『「幸せをお金で買う」5つの授業』
((株)KADOKAWA 2014年2月 本体1600円+税別)
幸福とお金の関係という誰でも関心があるが表だって話しづらいテーマを心理学とマーケティングの専門家が正面から解き明かす。「幸せをお金で買う」5つの原則とは? 1.経験を買う 2.ご褒美にする 3.時間を買う 4.先に支払って、あとで消費する 5.他人に投資する。
(3)NHK・NHKプロモーション・朝日新聞社 図録『宇宙博2014 NASA・JAXAの挑戦
(NHK・NHKプロモーション・朝日新聞社 2014年7月 )
幕張メッセで『宇宙博2014 NASA・JAXAの挑戦』(7月19日~9月23日)が開催中です。私はワシントンのスミソニアン博物館を見学して以来の2度目の宇宙関連の大展覧会見学でした。その素晴らしさに大感激。これはその図録で、後で何回も見ています。是非、『宇宙博2014』にお出かけ下さい。
(4)NHK「コズミック フロント」制作班・監修/渡部潤一 国立天文台副台長『宇宙はなぜこのような形なのか』
(角川Epub選書 2014年4月 本体1400円+税別)
理科苦手の私をも、驚異的宇宙形成の真実と神秘の世界に気軽に運んでくれる本です。宇宙の最新研究を紹介するNHKの人気番組「コズミック フロント」が初書籍化。泡のように広がる“宇宙の大規模構造”、美しく整った銀河系の形、そして驚異の天体。宇宙形成にまつわる全体像を知ることができます。
<世紀の芸術に触れる>
(5) 夏目典子・NHK出版偏 『ド・ローラ節子が語る バルテュス 猫とアトリエ』
(NHK出版 2014年4月 本体1400円+税別)
目、頭、心、全身が強烈な刺激で感動の余韻が消えません。ピカソが「二十世紀最後の巨匠」と述べたという。東京都美術館で『バルテュス展』を鑑賞。恐らく、日本人の殆どは初体験だと思います。この本は、バルテュス夫人で日本人であるド・ローラ節子さんがバルテュスの絵画と人生を率直に語った貴重なもの。バルテュスの主要作品が掲載されており、展覧会をご覧なれなかった方もその凄さを体験できますよ。
(6) 日本画家・京都造形芸術大学教授 千住 博『芸術とは何か――千住博が答える147の質問』
(祥伝社新書 2014年3月 本体820円+税別)
「芸術とは?」についての網羅的な論考を初めて知りました。5月ニューヨーク視察の飛行機の中で読み、驚愕。日本画家千住博はニューヨークでの芸術活動に拘りました。その背景含め目から鱗が落ちる好著。1.芸術と絵画 2.日本画と西洋画 3.古典と現代美術 4.制作と作品 5.芸術家と画家 6.芸術と教育 7.価値と価格 8.美術館と展覧会 9.東京とニューヨーク 10.日本と日本人 11.芸術の力
<100歳を「疑似体験」しませんか?>
(7)日野原重明編著『100歳のことば』
(PHP文庫 2011年10月 本体514円+税別)
未来とは歳を重ねることでもあるが、疑似体験はできない。100歳を生きた先達からのメッセージを聞くことで「疑似体験」することはいかがでしょうか?100歳を超えた日野原先生が、長寿の100人を取り上げ、「感銘することば」を綴っています。日野原先生の100歳のことばは「人生、これからが本番」です。精神が前向きですね。
(8)北品川クリニック所長『「アンチエイジング脳」読本 いくつになっても脳は磨ける』
(講談社α新書 2014年1月 本体800円+税別)
一時、「大人の脳は成長が止まり、年令とともに脳の神経細胞が破壊されていく」と言われた時代があったが、1999年エリザベス・グールド博士らの実験でこれまでの説は覆った。脳は実は40歳頃から成熟していくそうです。歳をとっても脳はまだまだ鍛えることが出来るのは朗報ですね。脳神経外科専門医として、数多くの診療治療実績の中からの実践的アドバイスが一杯です。
<Gグローバル企業とLローカル企業の併存>
(9)経営共創基盤代表取締役 冨山 和彦『なぜローカル経済から日本は蘇るのか-GとLの経済成長戦略』
(PHP新書 2014年6月 本体780円+税別)
ビジネスパーソン必携。「雇用過剰の時代の終焉」と言うと驚く方が多いでしょう。人類史上初めてのパラダイムシフトが起きているという。Gグルーバル企業圏とLローカル企業圏は違うし、関連性も薄い。それぞれの処方箋も異なる。GDPと雇用の7割を占めるLローカル企業こそ日本経済の切り札をなると強調するのは何故か?
(10)カリフォルニア大学バークレー校教授 エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる』(プレジデント社 2014年4月 本体2000円+税別)
「イノベーション都市」の高卒者は、「旧来型製造業都市」の大卒者より稼いでいる!?
浮かぶ都市と沈む都市の経済学である。新しい仕事はどこで生まれているか?の実証研究の成果。30年で人口が300倍になった都市深玔。日米の製造業雇用は減ったが、イノベーション企業や職種は急増している。繁栄の新しいエンジンは何か?
(11)東京理科大学大学院イノベーション研究科教授 伊丹 敬之『日本企業は何で食っていくのか』(日経プレミアム新書 2013年5月 本体890円+税別)
これからの四半世紀に日本企業がどのような分野で成長していけるかを正面から探索した本である。目次。1.第3の敗戦 2.失われた四半世紀 3.電力生産性が産業構造を決める 4.ピザ型グローバリゼーションを目指す 5.複雑性産業が日本のベース 6.インフラ産業の日本、インフラとしての日本産業 7.地政学的重心としての中国 8.産業科学の重心としての化学 9.日本の内なる病 終章 何で食っていくのか、食っていけるのか
(12)東大大学院教授兼ものづくり経営研究センター長 藤本 隆宏『現場主義の競争戦略 次代への日本産業論』
(新潮新書 2013年12月 本体720円+税別)
本書のテーマは、一言で言えば「ものづくり現場の視点から見た日本産業論」です。日本橋の経済倶楽部で行った三回の講演記録がもとになっていて、ものづくり系の現場を廻っている実証経営学者の「現場発の産業論」である。製造業悲観論を超える視点の産業競争力の重要性を述べています。
(13)日経BPテクノインパクトプロジェクト 『専門記者200人が選ぶ 明日を拓く55の技術』
(日経BPコンサルティング 2013年12月 本体800円+税別)
日経BPの技術系専門記者200名の英知を結集。明日を拓く「凄い技術」を探求。第1章 人と一体になる技術 第2章 人の代わりを務める技術 第3章 人や環境に優しい技術 第4章 人を助ける医療技術 第5章 すべてを繋ぐ技術 第6章 意外な組み合わせの将来技術
<IT技術が拓く未来>
(14)元Amazon初代キンドル開発者 ジェイソン・マーコスキー『本は死なない』
(講談社 2014年6月 本体1600円+税別)
本好きの私は、この本のタイトルに惹かれてすぐ買いました。本書では電子書籍の現状と今後、それがもつ意味、さらには読書そのものの未来についても考察しており、単なるテクノロジーの本でないのが良い。紙の本を読む時代(Reading1.0)から電子書籍を堪能する時代(Reading2.0)は、単に読書の世界や出版業界だけでなく、人間の思考や社会構造にも影響を与えていく。
(15)Google会長 エリック・シュミット/Googleシンクタンク創設者兼ディレクター ジャレッド・コーエン『第5の権力――Googleには見えている未来』
(ダイヤモンド 2014年2月 本体1800円+税別)
2025年に世界の70億人がオンラインで繋がるという。本書は「単なる技術予測やGoogleという一企業、一業界の枠を超えて、私たちの暮らしに始まり、国家、革命、テロリズム、戦争など、世界がどう変わっていくかを大局的に論じた内容になっている。」(翻訳者 櫻井祐子)22年前にインターネット業界に転じた私にとって、大変興味深かった。
(16)野村総合研究所先端ITイノベーション部『ITロードマップ2014年版 情報通信技術は5年後こう変わる!』
(東洋経済新報社 2014年1月 本体2200円+税別)
野村総合研究所が毎年発行して9冊目になる。5年後の重要技術(ビッグデータ、オムニチャネル、DevOps、NFC、垂直統合システム)とサービスを予見。併著として、野村総合研究所ICT・メデア産業コンサルティング部『ITナビゲーター』をお薦めしたい。市場という切り口で将来の予見を試みている。デバイス市場、ネットワーク市場、プラットフォーム市場、コンテンツ配信市場等。
<企業の未来>
(17)一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 楠木 建『「好き嫌い」と経営』
(東洋経済新報社 2014年7月 本体1600円+税別)
経営書としては異例の20万部突破した経営書『ストーリーとしての競争戦略』の著者が、日本を代表する経営者14人と対談。「戦略ストーリー」の深淵に迫る好著。永守重信、柳井正、原田泳幸、新浪剛史、佐山展生、松本大、藤田晋、重松理、出口治明、石黒不二代、江幡哲也、前澤友作、星野佳路、大前研一。経営者にとって一番大切なことは何かを一緒に考えてみませんか?
(18)ホールフーズ・マーケット創業者兼共同CEO ジョン・マッキー/コンシャス・キャピタリズム・インク共同創業者 ラジェンドラ・シソーディア『世界でいちばん大切にしたい会社――コンシャス・カンパニー』
(翔泳社 2014年4月 本体2200円+税別)
5月のニューヨーク視察で、世界で一番大切にしたい会社と称される会社ホールフーズ・マーケットを見学した。そのCEOの共著を偶然読む機会に恵まれた。キーコンセプトは「コンシャス・カンパニー」である。コンシャス・キャピタリズムは資本主義を本来の姿に戻す経営精神である。企業の目的は、プラトンの真善美に高潔さの4つにあるべきだ。解説で明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科野田稔教授は、「志も高く、利益も高く」と述べている。
<リーダー論の動向>
(19)元スターバックスコーヒージャパン代表取締役CEO 岩田 松雄『「徳」がなければリーダーになれない 「エグゼクティブ・コーチング」がなぜ必要か』
(PHPビジネス新書 2014年5月 本体800円+税別)
エグゼクティブ・コーチングの優れた紹介書です。岩田氏は、真のエグゼクティブ・リーダーにとって「徳」と「才」と2つが大切とシンプルに表現しています。今年、BIPにエグゼクティブ・コーチング専門家山岸敏彦氏がジョインしました。エグゼクティブ・コーチングの先導者と呼ばれるマーシャル・ゴールドスミス氏に直接薫陶を受けたプロフェショナルです。是非、ご相談ください。
※山岸敏彦 連載コラム【ミニ講座】はこちら>>
(20)ペンシルベニア大学ウォートン校組織心理学教授 アダム・グラント『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』
(三笠書房 2014年1月 本体1800円+税別)
「ギバー(人に惜しみなく与える人)」「テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)」「マッチャー(損得のバランスを考える人)」。人間の思考と行動の3類型を分析。新しい「人と人との関係」が「成果」と「富」と「チャンス」のサイクルを生む。著者は世界NO.1ビジネススクール「ウォートン校」において史上最年少で終身教授になった研究者の実証研究書。職業生活40年の私の経験からも納得する。是非、若者に読んでほしい。
<自分と日本に大影響与える世界の政治経済を知る>
(21)竹森 俊平『世界経済危機は終わった』
(日本経済新聞出版社 2014年5月 本体1800円+税別)
世界経済危機は、政治や民主主義の機能劣化の中でも、MIT人脈に繋がる金融テクノラートの金融政策によって収まりつつあると述べる。しかし、自国の経済のために軍事オプションを使う国が発生しつつあるのも現実だ。先進国の政治の劣化、特に米国、EUが経済優先でロシアや中国、その他軍事国家との宥和姿勢が第2のミュンヘン会談の危機を誘発していないか?
(22)元NHKアメリカ総局長 日高 義樹『アメリカの大変化を知らない日本人』
(PHP研究所 2014年3月 本体1500円+税別)
日本人の多くは、世界変化の現実に正面から向き合っていないと警告する。元NHKアメリカ総局長がワシントン情報から日本の命運を語る。オバマ大統領は、世界の悪に対する警察官をやめると米国大統領として初めて言明。この意味は極めて大きい。その後、世界各地での軍事行動が頻発している。アメリカの大変化を詳細に伝える。日本として、5つの戦略を提案。
(23)元シンガポール首相 リー・クアンユー『リー・クアンユー 未来への提言』
(日本経済新聞出版社 2014年1月 本体3000円+税別)
アジアで人口400万の小さな国家が30年で世界先進国として発展している。そのリーダーだったリー・クアンユーから学ぶことが多い。彼は、言う。「強い経済がなければ強い国防はあり得ない。強い国防がなければシンガポールは存在しえない。」中国系が多い他民族国家の中で二言語政策と称し、英語を必須として欧米諸国との交易の道を選んだ。
(24)拓殖大学総長 渡辺 利夫『アジアを救った近代日本史講義』
(PHP新書 2013年12月 本体900円+税別)
大学センター試験の科目選択の影響や縄文時代から始まる日本史教育の時間制約からか、
近現代日本史を知らない日本人が増加したことは極めて残念なことです。欧米の経営者と懇談する場面で必須なのは教養である体験をした。今、教養が改めて見直されつつあるのは良い動きです。戦前のグローバル化の最前線にいた拓殖大学。歴史研究者から近現代日本を知る1冊です。
(25)国際エコノミスト 長谷川慶太郎『平和ボケした日本人のための戦争論』
(ビジネス社 2014年6月 本体1100円+税別)
軍事を考えること自体をタブーにする日本人の平和ボケの危うさに警告を発しています。同時に、「軍事とはたしかに国力の一部を構成する「力」の一部に過ぎないが、その「力」を判断する場合、何としても「軍事」に対する正確な理解と認識を持たずには不可能であることを絶対に理解して頂きたいと筆者は強調する。「国際社会とははっきり言って「力と力の絡み合い」の産物である。自国を徹底して守り抜くだけの防衛力を備えなければ、その国は国際社会における存在価値はゼロとなってしまう」(まえがき)
以上
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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