佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/10/25 「今日の飯(現在事業)」と「明日の飯(中期事業)」を同時に突破する事業リーダーたれ!
11月18日(木)開講するBIP第3期『事業リーダー実践塾』第1回で、私は『企業業績を抜本的に変えるビジネスモデル創造の事例と理論』の講義・Q&Aをします。事業リーダーにとってはイロハともいうべきビジネスモデル論ですが、日本では今尚実践はもとより、多くの現場では言葉さえ知らないという現実が多い残念な状況にあります。先週、民主党政府は景気の下方修正を発表しました。政権交代後に新たな景気対策、戦略的経済成長政策が実行されず、円高への有効対策も果断に実行されず過去最悪の円高付近にいます。上期は新興国への輸出で業績改善した製造業も、下期は慎重な決算予想を発表しつつあります。総じて、日本経済は極めて厳しい局面を再び迎えつつあると思います。政府・日銀に対して、適切なマクロ経済政策を強く要求する必要があります。同時に自立的に持続的成長政策を確立し、それを実現する変革人材づくりは企業経営幹部の緊急の課題だと思います。
マクロ的には人口減少、市場減少の日本ですが、世界市場は拡大中であり、個別企業をみると成長企業、横ばい企業、退潮企業の3つに分かれます。その差異は何でしょうか?
第2、第3の事業開発、市場開発への飽くなき実践への姿勢の差が大きいと思います。
誤解を恐れず、端的に言うと、日本全国の300万企業の30~40代事業リーダー(部課長)の20%が「今日の飯(現在事業)」と「明日の飯(中期事業)」を同時に実現する変革人材に変われば、企業も日本の将来も明るくなると思います。
(1)商品や事業には寿命がある!持続的成長には、第2・第3の事業開発、市場開発が必要です。
一昨日10月23日の日本経済新聞第1面報道によると、戦前、松下幸之助氏が創業したパナソニックは電球ソケット事業から始まり、1933年1事業部制を発足させた。2009年現在デジタル家電、セキュリティー機器、携帯電話、カーエレクトロニクス、ヘルスケア機器、白物家電、照明、換気扇・空気洗浄機、半導体、電子部品、電池、FA機器、溶接機器、住宅事業と14ドメイン7.4兆円規模に変化発展しています。パナソニック電工、三洋電機を経営統合し、2012年には10兆円企業を目指しています。
海外企業でも、1886年創業のジョンソン・エンド・ジョンソンは絆創膏や包帯、湿布薬などの医薬消耗品は有名ですが、最近はコンタクトレンズや医療用機器、ヘルスケア商品等事業分野を大きく開拓し、会社を変化させています。
一時、「企業寿命30年説」が流行ったこともありますが、商品や事業に寿命がありますが企業に寿命はないことは今や明白です。寿命があるとすれば、変化を常とする経済的摂理ともいえますが、「人災」と言える場合もありますね。
第2、第3の事業開発、市場開発を継続するのは、企業経営の原理原則ですね。皆さんの会社はどう取り組んでいますか?
(2)ビジネスモデルは、プロフィットドライバー(利益の推進力)です。
※SI:システムインテグレーション、NI:ネットワークインテグレーション、ITFE :ITファシリティエンジニアリング
※参考資料2.佐々木昭美『企業業績を抜本的に変えるビジネスモデル創造の事例と理論』(第2期『事業リーダー実践塾』第1回講義テキスト 2009年11月18日)より抜粋
今は、ビジネスモデル競争、舞台、ルールの競争の時代だとも言えます。そのビジネスモデルが、企業のプロフィットドライバー即ち利益の推進力です。
世界一の技術と持つと言われる日本企業が、多くの分野で欧州、米国、中国、韓国等の企業に負けつつあるのは、技術を過信しビジネスモデル競争に遅れた要素が大きいと思います。半導体、液晶パネル、DVDプレーヤー、カーナビ等は激減しています。最近も、原発受注で相次いで韓国・ロシアに負けていますね。もちろん、日本国内での企業間競争も同様の摂理で変化しています。
第1期塾生より、ビジネスモデル論を何故ミドルが勉強する必要があるのかと質問されました。この質問には、2つの意味がありました。
1つは、ビジネスモデルは何故重要なのか、もう一つピンと来ないという入り口での意見でした。私が理論優先で説明し、事例が身近でなかったことが一つの原因であり、Q&Aで最近の事例を具体的に示し理解を頂きました。第2期は説明方法を変え、大変好評のアンケート結果となりました。
製造業は、日本のシャープと米国のアップルの連続改革成功事例を説明しました。液晶TVや、iPod、携帯電話等の身近な製品やサービス事業化の事例はすんなりと理解したようです。情報通信業界の塾生が半分位と多かったので、NTTデータ、ネットワンシステムズの事業改革事例も身近で関心を持って頂いたようです。
すると、どうしたらビジネスモデルの変革ができるのかという本題に関心が移りました。
今回の第3期は、更に1年間の調査・研究の成果を提供したいと準備中です。
もう1つは、企業のビジネスモデルという重要な課題は経営幹部の役割であり、我々ミドルに関係ないのではないかという素朴な意見だと思います。次の(3)で、この点を考えてみたいと思います。
(3)30~40代の事業リーダー(部課長)20%が変われば、50%が変わり、企業と日本が変わる。
――遠藤功『課長力』(早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長)に寄せて――
図:5-20-100
参考書籍5:P204より
結論的に言えば、「30~40代ミドルは「今日の飯(現在事業)」と「明日の飯(中期事業)」を同時に突破する事業リーダーたれ!」ということです。もちろん、ミドルだけに求めている訳ではなく、日本企業においては経営幹部とミドル両方の熱いコラボという意味で述べています。詳細は、第1回から第5回まで専門講師陣の講義や議論を交えて学んでいきたいと思います。
恐らく同じ問題意識で、「ミドルこそ日本の「次の50年」のエンジン」と語るのが早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長の遠藤功氏です。9月30日出版されたばかりの著書『課長力』は、経営と現場の本質を非常にわかりやすく分析、提案されています。
遠藤教授の現場力シリーズはベストセラーであり、その意味を探り紹介したエッセイを昨年書きました。(2009/07/06 経営品質・現場品質統合経営の時代②:遠藤功氏“現場力三部作”30万部ベストセラーの伝えるもの詳細はこちら>>)
遠藤教授は、私の言う「事業リーダー」を「課長」に象徴して展開しています。私は、中堅企業・大企業を含めると「部課長」と言った方々やベンチャー企業「社長・役員」が対象と理解して読んでもらった方が良いと思います。当然、その変革人材を採用・育成する責任を持つ経営幹部の皆様には是非読んでほしいと強くお薦めします。
以下目次を見ると、実例と具体的提案があるので遠藤教授の「創造者、変革者としての課長」という思いと主張がみえてきますね。
第1章 なぜ今、「課長力」なのか
1.日本の立ち位置 2.ミドルこそ「次の50年」のエンジン 3.「野心」が見えない課長たち 4.キーワードは突破
第2章 「突破」した課長たちの6つの物語
1.「広い土俵」で躍動する 2.アキレス 久住登の「物語」 3.明治製菓 伊藤喜一の「物語」
4.富士フィルム 網盛一郎の「物語」 5.良品計画 嶋崎朝子の「物語」
6.富士フィルム 飯田年久の「物語」 7.JAあいち知多 伊藤勝弥の「物語」
第3章 「課長力」を形成する6つの力
1.ハングリーであるという自覚 2.第1の力-観察する力
3.第2の力-跳ぶ力 4.第3の力-伝える力 5.第4の力-はみ出る力
6.第5の力-束ねる力 7.第6の力-粘る力
第4章 「課長力」強化の仕組み
1.どうすれば「突破」する課長は増やせるのか 2.「着火」のしくみ
3.「場」のしくみ 4.「評価のしくみ」 5.「展開」のしくみ
6.グローバルに「突破」する
変革のプロセスを遠藤教授は、こう述べています。
「組織変革は一気には起こりえない。じわじわと変革のマグマが蓄積され、ある臨界点を超えた時に、大きなうねりとなって、企業は変質する。「突破」する課長の育成も同様である。半数の課長はめざすべきゴールだといっても、一気に半数になることはありえない。ひとつの分岐点は「20%」である。2割の課長、すなわち5人にひとりの課長が自ら「突破」を試みるようになれば、それが「流れ」となっていき、やがて5割程度の課長に波及していく。しかし、最初から「20%」のハードルは高い。「5%」程度のコアとなる課長たちを意識的に育成していくことが、当面の目標となる。」(参考文献4:204~205ページ)
長年、経営実務の最前線で変革を推進してきた者の一人として、同感の思いです。BIP第3期『事業リーダー実践塾』が、その支援に役立つことを願っています。
(4)『事業リーダー実践塾』開設の思い
私が塾長として、昨年第2期『事業リーダー実践塾』開催の冒頭に塾生の皆様に伝えたメッセージを紹介します。「私は、健康寿命75年を3回に区分し、キャリアデザイン、人生成功を提案しています。
25~40歳は、仕事経験と専門能力形成に挑戦する。
41~55歳は、どの分野でも日本一・世界一のプロ・リーダーで活躍する。
56~75歳は、自己選択による好きな仕事、趣味等で実りある人生を送る。
30~40代は、20代の職業選択に続く、質的転換の大事な時期です。企業に勤めた方も、独立した方も、事業リーダーとしての成功が人生に大きな影響を与えます。
ところが、モッタイナイことに事業リーダーとして必要な勉強をしていない方が多いことに気づきました。それが、塾開設の動機です。皆さんには、是非成功してほしいという先輩からのエールです。
――塾の縁を大切にしよう――
塾は、塾生はもとより、講師含め全員が学ぶ仲間です。
塾生・講師の背景には、100名から1、000名の人間的絆があります。
塾は、人的ネットワーク、知的ネットワークの小さな太陽でありたいと願っています。」
塾生は、その後も懇親会やゴルフなど公私共に交流を続けています。大変嬉しいことです。改めて、BIP第3期『事業リーダー実践塾』への参加をお願いする次第です。
以上
(参考文献)
1.日本経済新聞 2010年10月23日朝刊
2.佐々木昭美『企業業績を抜本的に変えるビジネスモデル創造の事例と理論』(第2期『事業リーダー実践塾』第1回講義テキスト 2009年11月18日)
3.佐々木昭美 BIエッセイ2009/07/06 『経営品質・現場品質統合経営の時代②:遠藤功氏“現場力三部作”30万部ベストセラーの伝えるもの』
4.佐々木昭美 BIエッセイ2010/01/12 『2010年初夢(個人編):「働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び」の生きる喜び「三喜計画」を描く-2010年は「再スタート元年」-』
5.遠藤功『課長力 逆境を突破する6つの力』(朝日新聞出版 2010年9月30日)
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