佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/08/09 改めて、唸った。「図解」は、考える力、伝える力を鋭く磨く。
「図解」は、広範囲に浸透しつつあるためか、皆様も一見簡単そうに見えると思うでしょう。ところが、「図解」はその破壊力に比例して奥は深い、と改めて認識させられた体験をしました。コンサルティング提案力、Web情報発信力を更に強化するために、BIPでは企画管理スタッフを中心に、「図解」の通信教育講座を3月から受講し実地訓練で学んでいます。先週に最終課題の解答を提出しました。8月に全課程を終了する予定です。私も、問題と解答、添削指導を見ながら大変勉強になりました。
伝わる力のある「図解」を書くことは意外と難しく、まず問題を考え、整理する力が必要なことを痛感しました。また、「図解」はきちんと表現の基礎技法を学ぶことの大切さを実感した次第です。
ちょうど同じ先週の8月4日に、「図解コミュニケーション学」創始者である久恒啓一多摩大学教授が図解で経営学の泰斗ドラッカーの経営論を論じた『図解で身につく!ドラッカーの理論』を出版され、早速読みました。図解の基礎技法中心に表現した本当にわかりやすいドラッカー本に唸りました。
また、最近読んでいたTVで大人気のジャーナリスト池上彰さんが書いたロングセラー『わかりやすく<伝える技術>』の中で、やはり「図解」の効用を大きく取り上げています。池上さんの人気はその伝える力です。「わかりやすいニュース」「わかりやすい解説」等大人気の奥義が実は、リードの「図解」でした。「図解」の破壊的効用を改めて知って“やはりそうか!”と唸りました。
(1)「図解」は考える力。まず自分が内容を理解し、整理できているか?
-「図解コミュニケーション学」創始者である久恒啓一多摩大学教授が「図解」でドラッカー経営論を論ずる-
私は「図解力」について久恒啓一(ひさつねけいいち)多摩大学経営情報学部教授、多摩大学総合研究所所長の書籍で関心をもったことを昨年BIエッセイで書きました。先生はNPO法人知的生産の技術研究会理事長としても活躍中です。(・BIエッセイ2009/05/18 『絵図力・図解力の効用を学んだ“私の図歴書” 』詳細はこちら>>)
久恒教授は『図解で身につく!ドラッカーの理論』の冒頭、「プロローグ ドラッカー理論の前に図解の基本を理解する」という序章を設け27ページも割いて「図解」の意義を改めて説いています。
●「図読」という読み方で、本の理解が深まる
久恒教授は、「図解」に加えて「図読」を提唱していることも知りました。「図読」をすれば、本の理解が深まるという。著作を目で追うだけで理解できる人はまれであるという。私もそう思う。その理解力向上が「図読」という読み方である。久恒教授の図読の手順を、図解と説明文の両方を引用しますのでその真髄をじっくりとご覧頂きたい。
※図 久恒啓一『図解で身につく! ドラッカーの理論』より抜粋
「まず、本を通読して全体としてどのようなことが書かれているのかをつかみます。それから黄色のマーカーを片手に、ポイントと思う部分、自分にとっておもしろかった部分、気になった部分、わからない部分、キーワードなどに印をつけていきます。
通読と印つけが終わったら、今度は改めて目次をながめながら、大まかに図をデッサンします。目次は、著者が本全体の「ストーリー」を教えてくれている部分です。・・(略)・・この目次に沿って本全体を図解してみる段階を「仮図解」と呼びましょう。この段階では頭の中にあるさまざまな断片が交差していますから、すっきりとした図にはほど遠い状態です。
次に、仮図解を見ながら、再び全体を読んでいきます。印をつけた大事なポイント、ピンときた点、キーワードなどを仮図解の中に書き込んでいきます。この段階になると、仮図解を充実させるという目的に絞っているため、本を読むスピードはきわめて速くなっているでしょう。
そして仮図解に書き込まれた情報を眺めながら、わいてきた疑問点や論理の飛躍があるところを本文を見ながらたしかめ、理解をさらに深めていきます。
最後に、全体の構図やレイアウト、論理展開の順序などを考えながら図を充実させ、スッキリさせていきます。ここまでくると、図をみながら本の内容を誰にでも説明できるまでになっているはずです。」(参考文献1:17~18ページ)
一種の精読で3回は本を読むことになるそうです。
●「図で考える」ということはどういうことか?図解思考はなぜ優れものなのか?
図解思考のメリットは、①理解が深まる ②思考がクリアになることと強調しています。
「図で考えながら読み進めると、一つひとつのテーマを有機的につなげることができます。全体と部分の関係を意識しながら、ドラッカーという“知”を体系的に理解することができるのです。」(参考文献1:23ページ)
図解が思考をクリアにすることはどういうことか? 知りたいと思っていたことへの久恒教授の答えは、「理解」「疑問」「反論」の3つを明らかにすることだと教えています。
「物事の背景にある関係や構造について、自分の立場は「理解」なのか、「疑問」なのか、「反論」なのかを見極めながら新しい情報を吸収していくという方法です。」(参考文献1:24ページ)
思考法の一種とも思えますが、イメージ脳の右脳と言語脳の左脳を統合して脳全体を有機的に機能させる図解思考メカニズムは確かに効果的と合点した次第です。特殊な技法というよりは、基本の思考を抜群に容易にする鋭い補助線かもしれませんね。
(2)「毎日ニュースの図解を考えていた」「図解してから原稿を書き直す」
-大人気の“わかりやすい解説”ジャーナリスト池上彰さんが奥義を大公開!-
※図 池上彰『わかりやすく<伝える技術>』より
池上彰さんは、今や「伝える力」の伝道師のようである。その伝道師が本書で、第3章、第4章のページを割いて「図解」の重要性と背景を述べています。
もうご存知かもしれませんが、池上彰さんをまず簡単に紹介します。
1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。2005年まで32年間報道記者。1994年から2年間は、「週間こどもニュース」のお父さん役を務めた。私もこの番組で、池上さんに注目し始めた。現在はフリージャーナリストとして大活躍、著書もベストセラーを連発している。『相手に「伝わる」話し方』(講談社現代新書)『伝える力』(PHPビジネス新書)など。
池上彰『わかりやすく<伝える技術>』は、発売1年で10万部を超えるロングセラー。
表紙帯で「テレビの現場で培ったノウハウをすべて公開!」と銘打って、TV時代に実践で実際に身に付けた「伝える力」の奥義を詳細に説明している。ビジネスマン必読ですね。
結論をまず。<わかりやすさ>は、①聞き手に「地図」を②内容の「見える化」③話の「柱と枝」作りの3つだという。
<わかりやすさ>に図解の効用を気づいたのは、1989年38歳。首都圏向けの「ニュースセンター845」のキャスターになった時からだそうです。
「私は原稿読みが上手なアナウンサーでないのに、どうして、この番組に起用されたのかを考えました。その結果、記者ならではの解説が求められているだろうと気づきました。
夜の8時45分の放送ですと、夕方入ってきた原稿をゆっくり読み返し、わかりにくい部分を解説することが可能になります。そこでほぼ毎日、原稿のわかりにくい部分を図解して解説することにしました。
ニュースを図解してわかりやすくするにはどうしたらいいか。それを意識するようになったのは、このときの経験がきっかけです。この経験はいまも生きています。民放の番組で「フリップ」を使うとき、視聴者の立場を考えた図を工夫して、担当者に注文することができるようになったからです。
あるいは、ニュースを解説する書籍を書くときも、本文を補足する図解の下書きができるようになりました。」(参考文献2:71ページ)
「図解」してから更にわかりやすい原稿に書き直すことは、NHK「こどもニュース」での体験が大きいそうです。子どもと大人では、前提の知識や認識に大きな違いがあります。子どもにわかりやすく伝えるには、「模型」や「図解」を見て、更に説明原稿を変えなければならいことが多かったそうです。結果、次の流れが確立しました。
◆まず、ざっと話したい要素を書き出す。
◆リードを作る。
◆目次を作る。
◆一回書いてみる。
◆どこを図解にすればいいか考える。
◆パワーポイントを作る。
◆パワーポイントに沿った原稿に書き直す。
◆その原稿を個条書きのメモにする。
私も仕事柄「図解力」向上に努力している最中です。毎日の仕事に生かせるレベルめざして、皆様も一緒に「図解」を学び続けませんか?
(参考文献)
1.久恒啓一『図解で身につく! ドラッカーの理論』(中経の文庫 2010年8月4日 第1刷発行)
2.池上彰『わかりやすく<伝える技術>』(講談社現代新書 2009年7月20日第1刷発行、2010年5月6日第16刷発行)
3.BIエッセイ2009/05/18 『絵図力・図解力の効用を学んだ“私の図歴書” 』(詳細はこちら>>)
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