佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/07/26 熱い成長戦略が報道されたホンダ・トヨタ
自動車メーカーの成長戦略が、猛スピードで具体化し始めている。私はそう感じました。7月20日ホンダの中期経営計画発表を前後して、先週は自動車各社の新聞報道が目につきました。ホンダは、家庭充電ハイブリッド車(PHV)と電気自動車(EV)を2012年に日米で同時発売すると発表した。現在ハイブリッド車「インサイト」1種を2010年低価格帯量産車フィットHV等数車種に拡大し、鈴鹿製作所に加え、2013年以降は埼玉県寄居工場をHV生産・技術拠点にする。
トヨタ自動車は、今年5月に米国テスラ・モーターズと提携してEV共同開発を発表したばかりであるが、同時に2011年末に発売する「プリウス」PHV価格を300万以下で検討している旨の報道がされました。2010年4月発売済みの三菱自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」398万円、2010年12月発売予定の日産自動車「リーフ」376万年に対抗するという。「ヴィッツ」HVの低燃費低価格車の2011年発売も予定し、低価格帯量産車市場で圧倒的NO.1をめざす。
(1)日米先端エコ自動車市場には、家庭で充電するPHV(プラグインハイブリッド車)、広範囲な車種HV(ハイブリッド車)、短距離用EV(電気自動車)
ホンダ・トヨタは、PHV(プラグインハイブリッド車)が次世代自動車の本命と見て、強力に開発を進める意向と報道されました。プラグインハイブリッド車(PHV)とは、初めて聞く言葉ですね。家庭用電源で充電できるハイブリッド車のことです。新聞報道を私なりにまとめてみると以下の様です。
HVより容量の大きい電池を積み、電動モーターによるEVモードで走る距離が従来のHVより長い。通常のHV(ハイブリッド車)は、減速時に発電して蓄えた電気を発信・加速時などにエンジンの補助と使う状況から、PHVが短距離なら電動モーターだけで走行可能となる。家庭用電源で充電するため、充電環境が簡易となる。HVと同じくEV発進時から短距離は電動モーターの力だけで走り、電池切れになった段階でガソリンエンジンに切り替えて走る。EV(電気自動車)よりも長い距離を連続して走ることができるメリットが強化される。燃費効率が更によく二酸化炭素(CO2)排出量が少ない。1リットル当たり58~60キロメートルと「プリウス」38キロメートルを大きく上回る予定。
燃費基準が強化される日本、米国等のエコ自動車市場では、EVを視野にいれ対抗しつつ、短距離にも長距離にも一台で対応可能な本命PHV開発戦略が加速しているようです。
(2)ホンダ、トヨタは、市場別NO.1戦略車競争で世界の主導権をめざす
ホンダが、PHV、EV2012年日米同時発売を発表したことによって、ホンダとトヨタは、PHV、HV、EV、ガソリン車の四輪車全市場でNO.1車競争が開始された。新興国市場戦略は、ホンダは2輪車主導、トヨタは戦略車と異なるように見える。日本の2大世界的自動車メーカーが外資の直接的力を借りずに、次世代自動車市場での主導権をめざすことを鮮明にしました。是非、競争しながら世界で頑張ってほしいと思います。
ホンダ、トヨタは、F1撤退、原価削減、人件費抑制等の経営改善と平行して、開発・販売・生産体制の成長戦略を全方位で加速している印象です。2008年リーマンショック以降の実践で試されたBIPが提唱する「事業開発」と「経営改善」の両輪経営の王道と基本は同じ考えだと思っています。そのことは、以前にも紹介したことがあります。
(・2009/03/23 4月エコカー税制とハイブリッドエコノミー車戦略で、皆さんは車買い替えをどうしますか? 詳細はこちら>>)
(・2009/05/07 BIPは、即時的・持続的収益効果ある『トランザクションマネジメント』提案を発表。 詳細はこちら>>)
また、BIエッセイ2010/05/17 政治経済を読むシリーズ1「3Hから2H1Lへの転換」を説く長谷川慶太郎『メガ・グループの崩壊』(詳細はこちら>>)の中で、「3H=ハイテク・ハイクオリティ・ハイプライス」から「2H=ハイテク・ハイクオリティ 1L=ロープライス」への転換が必要との日本製造業のあり方を探った。
私は自動車の技術や自動車業界の専門家ではありませんが、ホンダ・トヨタ両社には、日本発の世界的自動車メーカーとしてその経営には学ぶものが多いと思い、いつも注視しています。
以上
(参考文献)
1.日本経済新聞 2010年7月20日号11面、同7月21日号 1面
2.産経新聞 2010年7月19日号 1面、同7月21日号11面
同 7月23日号11面、同7月25日号 8面
3.讀賣新聞 2010年7月21日号9面
4.日経産業新聞 2010年7月21日13面・24面