佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2010/04/19 心躍るボストン美術館展。六本木ヒルズで西洋絵画47巨匠80名画を一堂に観る贅沢!

 あのボストン美術館名画と六本木ヒルズで再会しました。4年前、アメリカ東部のボストン美術館を2日間訪れた感激が蘇った。8月末の夏であったがボストンは涼しかった記憶と共に、世界に誇る広大な建物のボストン美術館が目に浮かんだ。すぐ隣の女性ファウンダーが設立したイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館の隠れ家的人気カフェで、美味しいケーキとコーヒーでゆったり休息をした贅沢な記憶も忘れられない。
 
 4月16日、赤坂の弊社事務所に近い東京六本木ヒルズ52階森アーツセンターギャラリー『ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち』(4/17~6/20)の内覧会を鑑賞しました。BIエッセイブログで趣味の美術館・博物館巡り、映画鑑賞を紹介して数を重ねる中で、美術館や映画会社より画像貸し出しの許可を頂くようになり、今回はプレスの方々と共に、開催前日の内覧会に出席しました。繁忙の中のひとときを楽しく過ごすことができて嬉しい限りです。
  
  世界有数の印象派モネコレクションの作品11点が一挙出展
  肖像画のベラスケス、ファン・ダイク、レンブラント、ハンス、マネ、ドガ、ピカソ。
  宗教画のエル・グレコ、ムリーリョ、ミレー。
  日常生活画のコロー、ミレー、マネ、ドガ、モネ、ルノワール。
  風景画のルソー、クールベ、ピサロ、シスレー、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ。
  静物と現代絵画のブラック、マテイス、グリス。
  
 16世紀から20世紀西洋絵画の47巨匠80名画が一堂に集結した贅沢な企画である。関西では京都市美術館(7/6~8/29)で開催します。多くの皆様に、是非足を運んでほしいと思います。多くの贅沢に触れ、西洋絵画の新たな発見があると信じています。

(1)市民が育んだ広大で世界屈指の美の殿堂ボストン美術館。更に増改築して今秋オープン予定

内覧会風景 参考書籍
 4年前、アメリカ北東部にあるアメリカ独立の足跡を残すボストンを訪ねました。私がかつて住んでいた札幌と同じ緯度にあるボストンは、8月末の夏にもかかわらずもう涼しく、ジャンパーを着て歩いたが爽快であった。直後訪ねたワシントンの猛暑と相まって、南北の距離感以上に対照的な気候差の激しい体験がボストンの涼しさを鮮明にしているのかもしれない。

 私は、ボストン半日観光旅行以外の自由時間は2日間共にボストン美術館にいました。

「美術に関心を持つ広範な市民層から美術作品が寄贈され、建物も1874年には着工の運びとなる。ボストン美術館は1876年7月4日、アメリカ独立100周年の当日に開館した。」<マルコム・ロジャース(ボストン美術館館長) 参考文献1:10ページ>

「17世紀の開港以来、ヨーロッパ文化の窓口として栄えたボストンで大規模なヨーロッパ絵画展が開かれたのは1872年のこと。・・(略)・・以降、定期的に展覧会が行われ、ボストンの富裕層の間では絵画芸術がエリートの“嗜(たしな)み”となった。そして、自宅を飾る愉(たの)しみとして選んだのは巨匠の作品ではなく、19世紀後半の、パリでもまだ真価を認められていなかったモネやミレーなど、印象派やバルビソン派の安価な作品だった。市民は開館に際しコレクションを進んで寄贈。世界有数のフランス近代絵画のコレクションが形成されたのである。」(『週間 世界の美術館 ボストン美術館1』 参考文献 2:27ページ)

 ボストン美術館西洋絵画コレクションの幅の広さと質の高さは自他とも有名である。もちろん、古代エジプト、東洋・日本美術の名品・名画の一大コレクシションも4年前に見ることができました。

 ボストン美術館は、現在隣接地を購入し、次世代美術館への増改築工事の最中。今秋には拡張施設の開館予定です。今回はその機会でもあり、ご厚意によって日本での一挙展示が企画されたという。日本人にとって本当に嬉しい絶好の機会だと思います。

(2)16世紀から20世紀西洋絵画47巨匠80名画を一堂に見る贅沢!

参考新聞と図録
 『ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち』は、47巨匠の80名画が展示されています。内覧会をゆったりと鑑賞して、私が強く贅沢を感じたことを紹介します。

【印象派先達モネの風景画10点がひと部屋に展示。モネ名画に囲まれる贅沢】

クロード・モネ ヴァランジュヴィルの岸の漁師小屋 内覧会風景
※画像左:クロード・モネ ヴァランジュヴィルの岸の漁師小屋 1882年Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston

 今回、世界有数のモネコレクション11作品が展示されています。「モネの冒険」エリアでは、印象派の代表モネが生涯描いた風景画の中から10作品を一堂に展示。ぐるりとモネ名画に囲まれた独特の気分を贅沢に味わうことができます。

【見逃せない宮廷画家ベラスケスと19世紀革新的画家マネの肖像画を並べて見るという贅沢】

ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス ルイス・デ・ゴンゴラ・イ・アルゴテ
※画像:ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス ルイス・デ・ゴンゴラ・イ・アルゴテ 1622年 Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston

 スペイン第一級の宮廷画家となったベラスケスの肖像画は有名。19世紀もっとも偉大かつ革新的画家マネの最初のモデルとして知られるあの「ヴィクトリーヌ・ムーラン」18歳の肖像画が見られる。しかも、ベラスケスとマネの作品を並べて見られる憎い配置。意外なプレゼントに二歩下がって、しばし両方を観る贅沢感を味わった。

【日本初公開!天才肖像画家レンブラント2点1対の全身肖像画を味わう贅沢】

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン ヨハネス・エリソン師 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン ヨハネス・エリソン師の妻マリア・ボッケノール
※画像左:レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン ヨハネス・エリソン師 1634年Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston
※画像右:レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン ヨハネス・エリソン師の妻マリア・ボッケノール1634年Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston

 2点一対肖像画の圧倒感に“お-” と驚きの声が口に出るのを押さえた。オランダの天才肖像画家レンブラントが生涯3対しか残さなかったといわれる、2点一対の全身肖像画。その貴重な一対「ヨハネス・エリソン師」(174.0cm ×124.5cm)、「ヨハネス・エリソン師の妻マリア・ボッケノール」(174.9cm ×124.1cm)を展示。日本初公開を味わう贅沢もいいですね。

【ドガ、ロートレック、ピカソの肖像画が表出する個性表現に触れる贅沢】

 ドガの肖像画「男の肖像」「エドモンドとテレーズ・モルビッリ夫妻」。私は、ドガの肖像画の記憶は薄かったが、5分の1は肖像画で家族と友人を描いた作品が多いという。ロートレックの肖像画「画家のアトリエのカルマン・ゴードン」。“理想より真実を捉える”と自ら述べたと言われる素描家の繊細な筆致。ピカソの肖像画「女性の肖像」。「ピカソは再現的絵画の言語を原初的な要素としての線、光、影に分解し、微妙に揺れ動くグリッド(格子)をつくり出した。」(参考文献1:64ページ)肖像画も画家の希少な個性表現という贅沢に満ちている。

【エル・グレコ宗教画「祈る聖ドミニクス」とミレー宗教画「刈り入れ人たちの休息」の強い意外性に佇む贅沢】

エル・グレコ 祈る聖ドミニクス 内覧会風景
※画像左:エル・グレコ 祈る聖ドミニクス 1605年頃 Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston

 中世から近代へ、宗教画も変遷。“ギリシャ人”という意味のエル・グレコ晩年の反自然主義的作風が強い「祈る聖ドミニクス」(1605年頃)。ミレー「刈り入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」(1850-53年)はサロンで二等賞となり、ミレーが初めて公に認知された作品。「当初、旧約聖書の<ルツとボアズ>の物語場面として構想されたが、19世紀フランスの農村生活と労働を賛美する場面として完成をみるのである。」(参考文献1:67ページ)異なる画家は当然であるが、同じ画家でも絵によってはその意外性に佇む。意外感の贅沢を大事にし、カタログ解説を読むと新たな気づきに繋がることが多いのも愉(たの)しみである。

【19世紀絵画ミレー、マネ、ドガ、モネ、ルノアール、セザンヌ、ゴッホから現代絵画マテイス、ピカソ、ブラックへの流れを一堂に辿る贅沢】

ジャン=フランソワ・ミレー 馬鈴薯植え エドガー・ドガ 田舎の競馬場にて クロード・モネ アルジャントゥイユの自宅の庭のカミーユ・モネと子ども
※画像左:ジャン=フランソワ・ミレー 馬鈴薯植え 1861年頃 Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston
※画像中:エドガー・ドガ 田舎の競馬場にて1869年Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston
※画像右:クロード・モネ アルジャントゥイユの自宅の庭のカミーユ・モネと子ども1875年Photograph © 2010 Museum of Fine Arts, Boston

 ボストン美術館展の最大の贅沢は、やはり西洋絵画コレクションの一堂展示そのものにあります。とりわけ、ミレー、セザンヌ、ゴッホや印象派を初めとするフランス絵画が充実しています。各テーマエリアを一巡すると、19世紀絵画から現代絵画への推移を体験している。
 ・ジャン=フランソワ・ミレー「馬鈴薯植え」(1861年頃)
 ・エドガー・ドガ「田舎の競馬場にて」(1869年)
 ・エドゥアール・マネ「音楽の授業」(1870年)
 ・クロード・モネ「アルジャントゥイユの自宅の庭のカミーユ・モネと子ども」(1875年)
 ・ポール・セザンヌ「池」(1877~79年)
 ・ピエール=オーギュスト・ルノワール「ガーンジー島の海岸の子どもたち」(1883年頃)
 ・フィンセント・ファン・ゴッホ「オーヴェールの家々」(1890年)
 ・パブロ・ピカソ「女性の肖像」(1910年)
 ・ジョルジュ・ブラック「桃と洋梨と葡萄のある静物」(1921年)
 ・アンリ・マティス「花瓶の花」(1924年)
 ・フアン・グリス「ギターのある静物」(1925年)

今秋開館する新ボストン美術館を再び訪れる機会があることを切に願っています。

■□■ 「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」 ■□■

会期:2010年4月17日(土)~6月20日(日) 会期中無休
会場:森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ 森タワー52階)
主催:ボストン美術館、 森アーツセンター、 朝日新聞社、 テレビ朝日
展覧会サイト:http://www.asahi.com/boston/

以上

(参考文献)
1.監修:三浦篤 編集:朝日新聞社企画事業本部文化事業部 執筆:ボストン美術館学芸部 『ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち』カタログ(朝日新聞社)
2.『最新保存版 週刊 世界の美術館 ボストン美術館1』(講談社 2009.2.26)
3.『最新保存版 週刊 世界の美術館 ボストン美術館2』(講談社 2010.2.18)
4.「朝日新聞 ボストン美術館展 記念号外」(朝日新聞東京本社)
5.監修 田中英道『西洋美術への招待』(東北大学出版会 2002年9月)

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