佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/03/29 eBook(電子書籍)は21世紀産業革命の本丸?情報産業界必読『クラウド時代と<クール革命>』『iPad VS. キンドル』
クラウドとeBook(電子書籍)の近未来は、目下私の関心事の一つです。3月17日、総務省・経産省・文科省の副大臣・大臣政務官の共同会合として第1回「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」が開催された。3省庁が横断的会合を開催するのは異例であると電経新聞は報道した。
3月24日主要出版社31社が日本電子書籍出版社協会を設立し、代表理事に41歳という異例の若さで野間省伸講談社副社長が就任したニュースを、25日に読売新聞がカラー写真で大きく報道した。3月25日日本経済新聞は、アスキー創業者の西和彦氏らが設立した電子書籍VBアゴラブックスが4月よりクラウド方式で配信サービスを始めると報道した。
eBook(電子書籍)は、私の属する情報産業の近未来に直結するワクワクするテーマである。BIP社内で昨年6月以来、「BB(モバイルブロードバンド)研究会」を発足させ研究中ですが、eBook(電子書籍)はその中でも重要テーマです。先般、新社会システム総合研究所主催、藤浪啓野村総合研究所上級コンサルタント講師のセミナー『電子書籍イノベーション』に弊社スタッフも参加しました。
また、仕事と趣味で読書三昧の私にとって、「グーテンベルグ印刷革命」によって紙による本の読書スタイルが実現されて以来の新しい読書スタイルが「eBook(電子書籍)革命」によってもたらされる時代が来たというワクワク感に溢れています。今年2010年は「日本読書年」でもありますが、「電子書籍元年」にもなるのでしょうか?
特にこの3月eBook(電子書籍)に関する新聞報道が急増している。皆様も関心をお持ちのことと思います。この3月、読みやすく有益な関連本が出版され、一気に読みました。IT業界・メディア業界・出版業界・コンテンツ業界等必読といえる内容です。今回は本の紹介だけですが、今後更に深め一緒に実践していきたいと思っています。
角川歴彦『クラウド時代と<クール革命>』
西田宗千佳『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』
(1) 総合メデイア企業現役経営者 角川暦彦氏 が語るクラウドによる21世紀産業革命の衝撃と情報産業の近未来
-角川歴彦『クラウド時代と<クール革命>』-
最近、出版から映像まで総合メディアを事業とする角川グループホールディングス、角川暦彦(かどかわつぐひこ)会長兼CEOの新聞登場が相次いでいる。主テーマは、21世紀産業革命と情報産業の近未来である。異例の登場の背景は、角川歴彦著『クラウド時代と<クール革命>』の3月10日発売であるのは間違いない。3月21日~22日讀賣新聞には、「リーダーの仕事学」に上下2回にわたって登場した。
3月23日~25日産経新聞には、「話の肖像画」に“メディアウォーズ”というテーマで上中下3回にわかって登場した。
角川歴彦『クラウド時代と<クール革命>』の内容はインターネットがもたらしている劇的変化を自らの体験から論じ、読みやすく尚その範囲は広い。出版・新聞業界はもちろん、それ以上にICT業界の激変を論じ、国家情報戦略をも提唱している。
デジタルテクノロジー、インターネットの進化が、音楽市場約1.9兆円のアップルiPod圧倒的勝利となったが、いよいよ新聞・出版市場約6兆円の激変時代に移る。その意味と背景となる21世紀産業革命の現実。それに対して、企業だけでなく国家もどう対応すべきかを正面から論じている。
電子書籍論中心の狭い範囲でのメディア議論が先行している傾向もあるが、本の内容は広く深い内容があると思うので、今回は敢えて目次すべてを引用し紹介に代えます。
第1章 クール・パワーを新しい国力へ
1.「クール・ジャパン」を世界へ
2.ガラパゴスのままでいい日本文化
第2章 新時代への予感
1.100年の一度の危機に何を学ぶか
2.日本のピークは過ぎたか
第3章 「知」のグローバリゼーションからは逃げられない
1.グローバリゼーション嫌いでイノベーション下手な日本人
2.人、モノ、金-3段階のグローバリゼーション
3.「情報と知識」のグローバリゼーション
4.「知」のグローバリゼーションがもたらす地上の平和
第4章 web2.0体験記
1.web2.0の出現
2.グーグルの登場
3.アップルの事業戦略
4.アマゾンの世界戦略
第5章 クラウドの奇跡
1.クラウド・コンピューティングは「21世紀」の奇跡
2.コンテンツの大バンドル時代
3.21世紀メデイアのあり方
第6章 アメリカから起こる21世紀の産業革命
1.21世紀の産業革命
2.クラウド・コンピューティングから産業革命が起こる
3.「月並みの国」日本でも革命は起こる
第7章 提言
1.日本の情報安全保障に問題あり
2.国家プロジェクトとしてのクラウド革命
(2)IT最前線の緻密な取材で「電子書籍戦争」の全貌が見えてくる
-西田宗千佳『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』-
“一夜漬けで挑むeBook時代のバイブル”という表紙のコピーに恥じない内容に、私も一夜で読み感服しました。電子書籍をめぐる事実と背景が世界的取材に裏付けられ具体的に書かれています。目次からは、「eBook」に特化した本にふさわしい構成であることがわかります。
序章 はじめに~eBookはコンピュータの夢だった~
第1章 キンドル・インパクト!
第2章 キンドルのライバル、ソニーとアップル
第3章 eBookへの長い道
第4章 eBookのビジネスモデルとは~アメリカの場合~
第5章 日本はどう「eBook」の波に乗るのか
付録 キンドル購入から利用までの手引き
元祖eBookリーダー(電子書籍情報端末)は、ソニーのリブリエであると知った。アメリカで先行するアマゾンの「キンドル」、ヨーロッパで優位なソニーの「リーダー」。アメリカ書籍流通大手のバーンズ&ノーブルは、2009年年末より独自のeBookリーダー「Nook」を発売し、eBookストア市場に参入した。
アップルが4月iPadを発売する。キンドルとソニーリーダーは電子書籍専用端末であるが、アップルのiPadは汎用端末であるという。iPadはiPhoneの倍の大きさで技術もそのまま使えるが、逆にパソコンソフトなどは使えない。電子書籍は、アプリケーションの一つとして提供する。カラー雑誌も気軽に読めるなどリビングで使えるデバイス(情報端末)がコンセプトであるという。
キンドルとソニーリーダーの画面は、E-Ink製電子ペーパーである。iPadはiPhoneの持つ内蔵ウェブブラウザーの技術をつかった表示である。携帯電話でありながら、iPhoneのウェブ表示能力の高さは使った方はよくご存じのことと思います。写真表示のスライドショーが搭載される。マックOSでなく、iPhone OSによる文書作成ソフト提供も発表した。
キンドル・ソニー型の電子書籍専用端末ビジネスモデルは、書籍価格の中に通信費が含まれる。iPadは、通信費はユーザー持ちでeBookに特化しない汎用機器ともいえる。
日本は、eBookの波にどう乗るのだろうか?
日本の書籍市場はアメリカに次ぐ市場である。出版・映像大手である角川グループの総帥角川暦彦氏は、自称か他称か不詳であるが「出版界の坂本龍馬」と称されているらしい。角川氏は、インターネットへの前向きな姿勢とその理由を堂々と表明している。日本のeBook(電子書籍)離陸への胎動は本格的に始まったようである。
以上
(参考文献)
1.角川歴彦『クラウド時代と<クール革命>』
(角川書店 2010年3月10日)
2.西田宗千佳『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』
(エンターブレイン 2010年3月24日)
3.電経新聞 2010年3月22日号
4.讀賣新聞 2010年3月21日・22日・25日・29日各号
5.産経新聞 2010年3月23日・24日・25日各号
6.日本経済新聞 2010年3月25日号
7.日経産業新聞 2010年3月24日号
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