佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2014/07/28 六本木・国立新美術館「オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―」

六本木・国立新美術館で開催中の「オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―」を鑑賞しました。連日行列のできる人気との事で、やはり日本での印象派絵画の人気の高さがうかがえます。

パリ・オルセー美術館を代表する至高の名画84点が来日。中でも近代絵画の立役者エドゥアール・マネの貴重な作品11点一挙公開や、これまでオルセー美術館を離れることがほとんどなかった、クロード・モネの大作 《草上の昼食》は注目です。

パリ・オルセー美術館を日本で体感できる大変貴重な特別展です。是非夏休みに、沢山の方にご鑑賞頂きたいと思いました。

<1>オルセー美術館と3回目の再会

振り返ってみると、東京では4年前の2010年にもオルセー美術館展が開催され、鑑賞した私は大変感動し、BIエッセイで紹介しました。更に、2012年のフランス旅行の際、改修した新しいオルセー美術館で鑑賞できました。今回は、オルセー美術館の印象派絵画と三度目に会える貴重な機会となった。

オルセー美術館は、パリの真ん中で、ルーヴル美術館と国立近代美術館(ポンビドゥー・センター)と近く、中核美術館群を形成しています。1900年に近代化の象徴として建設されたオルセー駅を美術館に改築し、1986年12月にオープンしています。

 

本展図録冒頭の主催者ご挨拶で、本展の意義を下記の様に述べています。

「パリ・セーヌ川沿いに建つオルセー美術館は1986年の開館以来、印象派を中心としたフランス美術の宝庫として知られています。2011年秋に大規模な改修工事を終え、広い展示スペース、見やすい順路、作品の特徴や持ち味を引き立てる壁紙や照明などによって一層魅力が増した同館には年間350万人以上が訪れています。 このたび、世界中の人々を魅了してやまないオルセー美術館から、その「顔」ともいうべき珠玉の絵画84点が来日しました。今回のテーマは「印象派の誕生」。1874年に第1回印象派展が開催されてから140年を迎えるにあたり、印象派が登場した時代のフランス美術界を一望しようというものです。」(参考文献1より)

 

ご参考に、2010年オルセー美術館展ご紹介時の私のエッセイ記事をご覧ください。

・BIエッセイ 2010/05/31 「サルコジ仏大統領が“二度と一括で海外に出ない”と絶賛する『オルセー美術館展2010 「ポスト印象派」』が国立新美術館で豪華開催!」

 

<2>多彩なテーマで展示構成

「1章   マネ、新しい絵画」

「2章   レアリスムの諸相」

「3章   歴史画」

「4章   裸体」

「5章   印象派の風景」

「6章   静物」

「7章   肖像」

「8章   近代生活」

「9章   円熟期のマネ」

 

マネ、モネ、ルノワール等各流派を代表する巨匠たちの個性が、様々なテーマを通して浮き彫りになる展示構成。マネの作品は11点展示され中心的なみどころとなっている。印象派が誕生した時代にも沿って紹介されています。

「一つの展覧会に、ドガ、モネ、シスレーといった印象派の画家たちだけでなく、ウイリアム・ブグロー、ジュール・バスティアン・ルパージュ、アレクサンドル・カバネル、ジュームズ・ティソら、同時代の画家たちの最良の作品群までもが含まれ、これほど多くの傑作が出品されることはめったにありません。」(オルセー美術館・オランジェリー美術館理事長 ギィ・コジュヴァル)

現地オルセー美術館では、展示スペースや壁紙など作品の特徴や持ち味を引き立てる展示の工夫に力を入れている。今回の展覧会でもそれらの工夫が再現されており、展示室内の壁の色を変える等、それぞれの絵画に合わせたこだわりの効果的な背景と照明の元で展示されていました。

 

<3>有名な「笛を吹く少年」等当時の常識を覆した「新しい絵画」。パリの画壇に大きな影響を与えたマネの作品。

「光に満ちた印象派の作品、それはルネサンス以来の西洋絵画の「伝統」から抜け出して創造された新しい絵画である。私たちは日本人に最も親しまれている。19世紀後半、偉大なる伝統を超克しようと、革新的な試みを企てた一人の画家がいた。エドゥアール・マネである。」(参考文献2より)

 

【エドゥアール・マネ 《笛を吹く少年》】

1866年 油彩/カンヴァス 160.5×97cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

音楽の教科書等でこの少年の姿をご存知の方は多いと思います。有名な絵画を日本で見る事の出来る素晴らしい機会です。

「笛を吹く少年」は、皇帝近衛部隊の選抜歩兵。マネはスペインのマドリードでベラスケスの絵画の「消えている」ような背景に感嘆し、その着想を得て描いたという。

彼は、いったいどんな音楽を奏でていたのか・・・?会期中には本展のために再現製作された笛「ファイフ」の音を披露するコンサートも企画されているそうで楽しみですね!

 

【エドゥアール・マネ 《読書》】

1865年/1873-75年に加筆 油彩/カンヴァス 61×73.2cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

夏の日の光に照らされ、ソファーに腰かけたマネ夫人を描いた作品。よく見ると、多彩な白と透明性の表現が探求されていますね。奥に描かれた青年は彼女の私生児レオン・エドゥアール・コエラ=レーンホフで、マネは1865年頃に若かりし日の夫人を描いた後10年ほど経ってからキャンバスに再度手を入れレオンを描いたのだという。

 

【エドゥアール・マネ 《ロシュフォールの逃亡》】

1881年頃 油彩/カンヴァス 79×72cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

港の中の海の動きが、大胆な構図と正確な波の表現で、逃亡者の心理も感じさせますね。

保守的なサロンで自作を認めさせることに終始こだわったマネは、モネやドガからの再三にわたる誘いにもかかわらず、1874年から開催されていた印象派展に参加することは一度もなかったそうです。しかし、マネは作品製作の中で新たな試みを重ねていったそうです。

 

<4>モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌらの印象派の他、コロー、ミレー、クールベのレアリスム、更にはカバネル、ブグローらのアカデミスム。19世紀後半の美術史を名画と共に辿る。

【ジャン=フランソワ・ミレー 《晩鐘》】

1857-59年 油彩/カンヴァス 55.5×66cm
©Musée d’Orsay, Dist.RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

「《晩鐘》は西洋美術で最も人気の高い絵画の一つである。」(参考文献1)

農村の厳しい労働生活に共感を寄せたミレーは、貧しい農民たちを力強く、また美しく描いていました。作品≪落穂拾い≫でお馴染みの方も多いかと思います。

 

【ギュスターヴ・カイユボット<<床に鉋(かんな)をかける人々】

1875年 油彩/カンヴァス 102×147cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

混じりけなしのレアリスムで描かれた作品。上半身裸で力を込めて働く労働者たちからは力強さと繊細さを感じた。部屋の奥の窓からは明るい光が射している。

カイユボットは、絵画コレクターとしてマネ、モネ、ピサロ、ドガらを財政的に支援し、国家に寄贈するという遺言を書き、遺言執行者にルノアールを指名した。印象派絵画が今日に輝く大きな役割を果たしたという。

 

【エリー・ドローネー 《ローマのペスト》】

1869年 油彩/カンヴァス 131.5×177cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) /René-Gabriel Ojéda/ distributed by AMF

「彼は、ニコラ・プッサンが1630年頃に制作した<<アシドドのペスト>>(ルーヴル美術館)に代表される、フランスの歴史画の伝統に連なる。・・・また象徴主義へと向かう第一歩となった。」(参考文献1)

 

【アレクサンドル・カパネル《ヴィーナスの誕生》】

1863年 油彩/カンヴァス 130×225cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

「ルネサンスから19世紀にいたる西洋絵画において、裸体は絵画ジャンルの最高位を占める歴史画の最も本質的な造形言語みなされていた。」(参考文献1)という。《ヴィーナスの誕生》はカパネルの名声を確立した作品で、皇帝ナポレオン三世によって買い上げられたという。

本展では、ルフェーブル、モロー、クールベ、ミレー、ルノアール、セザンヌの裸体画も鑑賞できます。

 

【クロード・モネ 《かささぎ》】

1868-69年 油彩/カンヴァス 89×130cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

白銀の眩しい景色が目に飛び込んでくる。白一色でなく、さまざまな絵の具を多用し、大地を青みがかった色彩で輝かせる表現で、新鮮でまさに印象的な冬景色を見せてくれる。

印象派の風景画は、今となっては沢山の方に愛されていますが、発表当時には伝統的な絵画とはあまりにかけ離れていたために理解されず酷評されていたそうです。この作品は、1869年のサロンで落選したらしい。

 

【ルフレッド・シスレー 《洪水のなかの小舟、ポール=マルリー》】

1876年 油彩/カンヴァス 50.4×61cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

シスレーとモネは水を描く画家であったという。シスレーは、セーヌ川増水による自然災害を6枚描いている。

 

【ポール・セザンヌ 《スープ入れのある静物》 】

1873-74年頃 油彩/カンヴァス 65×81.5cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

セザンヌのリンゴの絵をご存知の方は多いかと思います。「りんご一つでパリを驚かせたい」と、静物画を通じて独自の絵画空間の描出を追求したセザンヌは、生涯を通して172点の静物画を残している。

【フレデリック・バジール 《家族の集い》】

1867年/1869年に加筆 油彩/カンヴァス 152×230cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

19世紀後半、肖像画のモデルは王侯貴族からブルジョワ階級へと移行していき、沢山の肖像画が描かれ、市場でも人気が高かったという。

 

【エドガー・ドガ 《競馬場、1台の馬車とアマチュア騎手たち》 】

1876-87年 油彩/カンヴァス 65.2×81.2cm
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ドガは日常生活への関心が強く、ブルジョワ階級の社交場であった競馬場を描いた。
バレエの踊り子を描いた作品でも大変有名ですね。

 

【クロード・モネ 《サン=ラザール駅》 】

1877年 油彩/カンヴァス 75×105cm ©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

モネは、鉄道駅という「近代的な主題」を「都会の風景画」とでも言えそうな印象派らしい表現で描いていますね。

 

【クロード・モネ 《草上の昼食》 】

1865-66年 油彩/カンヴァス 418×150cm(左) 248.7×218cm(右)
©Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

当初大きなカンヴァスに1枚の絵画として描かれた作品。これほど大きなモネの大作を日本で初めて鑑賞できるとは、大変貴重な機会だと思います。

以上

 

オルセー美術館展

印象派の誕生 ―描くことの自由―

 

会期:2014年7月9日(水)~10月20日(月)

休館日:毎週火曜日

*ただし8月12日(火)、9月23日(火・祝)、10月14日(火)は開館、9月24日(水)は休館

 

会場:国立新美術館 企画展示室2E (東京・六本木)

(〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2)

http://orsay2014.jp/

参考文献

1.国立新美術館、読売新聞東京本社事業局文化事業部編集「オルセー美術館展 印象派の誕生 ―描くことの自由―」カタログ(読売新聞東京本社 2014年7月)

2.吉川節子著「印象派絵画の誕生 マネとモネ」(中公公論新書 2010年4月)

3.佐々木昭美BIエッセイ2010/05/31 「サルコジ仏大統領が“二度と一括で海外に出ない”と絶賛する『オルセー美術館展2010 「ポスト印象派」』が国立新美術館で豪華開催!」

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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