佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2010/03/01 “日本のインターネットの父”村井純慶應大学教授の新著『インターネット新世代』をもう読みましたか?
今年1月20日、“日本のインターネットの父”と称される村井純慶應大学環境情報学部教授(以下、村井先生と略称)の新著『インターネット新世代』が発売されました。『インターネット』(1995年)、『インターネットⅡ-次世代への扉』(1998年)を読み、大切に保管している私はすぐ買って読みました。皆さまは、もうお読みになったでしょうか?本日3月1日、日本経済新聞は、電子版(Web)の受付開始を本紙2面を使って大々的に開始した。インターネットは、100年以上に渡る新聞の歴史を変えつつある。
村井先生は、「本書を通じて、現代世界が直面する課題の解決、次の世代のための社会構築、そして未来への夢を一緒に考えてみましょう。」(参考文献1:V)と述べています。
私も約20年にわたるインターネットに携わった一人として、ささやかながら21世紀にめざす思いをBIP中期ビジョンとして、今年1月25日BIエッセイ100号でこう述べました。「IP(インターネットプロトコル)を友に、次世代IP(インテリジェンスプラットフォーム)を共に創造することを願っています。」
↑本書・各社携帯電話・日経新聞3/1号
(1)村井純『インターネット新世代』:放送とメディア、携帯・無線インターネット、クラウドコンピューティング、医療・福祉・行政への貢献、未来世界と日本の役割。
あらゆる分野の方に広く正しく伝わるようにという村井先生の気持ちが強く伝わってきます。インターネットをめぐる技術の現状、制度・社会の課題等を丁寧に説明しています。本書の目次をご覧いただくのが一番よくご理解頂けると思いましたのでそのままご紹介します。【第1章 メディアが変わる】
1.デジタル化でテレビはどう変わる 2.マルチメディアとインターネット
3.広告の変革 4.社会制度の調整 5.流通するデジタル情報
【第2章 無線とモビリテイ -携帯電話の将来】
1.持ち歩くスタイル 2.どこでもつながる情報空間 3.街と家の中はどうなるか
4.電波空間をどう使うか 5.宇宙に広がるインターネット
【第3章 地球規模のインフラストラクチャへ】
1.クラウドコンピューティングの意味2 .光ファイバー網の発展3.IPv6への期待
【第4章 地球社会とインターネットの課題】
1.インターネットは危険なのか 2.人間のための情報社会 3.髙信頼性インターネット社会
【第5章 グローバル空間】
1.グローバル空間のルール作り 2.断片化とのたたかい 3.世界の中の日本
【第6章 未来へ向けて】
以前に、村井先生の『インターネット』について以下のように書きましたが、新著『インターネット新世代』も、根底に流れる暖かく確固としたインターネットへの思いは変わらないと思いました。
『本書で、インターネットの未来を一緒に考えようと語る次の言葉は忘れられない。人間活動の新しいインフラがもたらす人間世界のデザインへの眼である。技術のデザインと人間世界のデザインの両方の視点をもったハイブリッドな慧眼に敬服する。
「デジタル・テクノロジーが人間のいろいろな知的活動を支えることになった現代に、デジタル・テクノロジーの上で、人間や世界がどのように変わっていくかということを考えるための体験の場というわけです。インターネットが持っている意味のうち、もっとも大きいのはそのようなことではないかと、私は思っています。」(参考文献2:3~4ページ)』
(BIエッセイ2009/09/07 『読書の秋② “ビットの時代・インターネットの時代”予言から15年。“デジタルネイティブの時代”を読み解く。』詳細はこちら>>)
(2)インターネット20年が切り開いたグローバル情報社会インフラ
蛇足ですが、インターネットが切り開いた社会への影響を最近の記事で若干触れたいと思います。また、僭越ですが、私自身のインターネットへの継続したコミットメントを若干再録紹介します。
私は、2007年BIP設立後、ホームページを開設したBIエッセイ第1号の中でこう書いたのを思い出しました。
「ちょうど15年前に初めて、インターネットビジネスの世界の仲間になりました。当時、世界のほとんどの人々は、インターネットが世界の共通公共インフラとなるなどと誰も予想しなかったと思います。
日本は、今や固定系インターネットの世界一先進国だけでなく、モバイルもトップで、世界初のユビキタスネットワーク先進国になりました。職業生活と個人生活もまた大きく変化するのでしょうね。
15年のネットワークビジネスでの体験は、多くのことを教えてくれました。100有余年続いた音声ビジネスモデルは、10年間で変化し、勝利した世界共通のIP技術が標準になりました。学生時代に、国会図書館で調べることは大事な機能でしたが、今や大学図書館はグーグルのデータベースパートナーになり、人間は、データ継承能力や検索能力ではなく、知の活用能力が価値を生む知価社会に進化しつつあります。大学はどう進化するのでしょうか。
5-10年後に振り返って見れば、技術やビジネスモデルの変化が新たな会社や業界を創造し、同時に、既存の技術、会社、業界を崩壊させるという冷厳な経済の現実です。 」
(2007/07/10 BIエッセイ『BIビーアイに恋をした。大手町に憧れた。』詳細はこちら>>)
また、今年新春に、BIエッセイ100号を記念してこう書きました。
「1月22日付日刊工業新聞1面トップ記事は、「IP系収入、音声を逆転」という見出しで、NTT東日本は、”2010年度でインターネットプロトコル(IP)系サービスの売上高が、音声電話サービスの収入を上回るとの見通し”を総務省に3月報告すると報道しました。・・(略)・・インターネットビジネスの世界で職業生活を初めて約20年近くになります。NTT東日本のIP収入が音声収入を上回るという記事は、関連する仕事に関わった一人として特別に感慨深いものがあります。」(BIエッセイ2010/01/25 100回記念号:NTT東、IP収入が音声収入を逆転!IP(インターネットプロトコル)を友に、次世代IP(インテリジェンスプラットフォーム)『BI経営研究所』設立!」 詳細はこちら>>)
インターネットが切り開いたグローバルな情報社会インフラの深さと広がりは、インターネットが始まった20年前には誰も予想しなかったに違いない。しかし、「現実は小説よりも奇なり」で、今や個人、企業、公共機関すべてが毎年膨大な投資を続ける世界的なインフラストラクチャである。
先週2月22日に電通が発表した2009年日本の広告費によると、インターネット広告が始めて新聞広告を上回ったと翌23日の日経産業新聞が報じています。
インプレスR&D調査によると、書籍市場の減少が続く中で電子書籍市場は、平成18年度は182億円、19年度は355億円、20年度は464億と順調に伸びていると、2月24日産経新聞は報道しています。
2007年11月アマゾンが電子書籍端末キンドルを発売し、ソニーのリーダーと合わせて2強となっている中で、1月27日アップルが新型端末iPad発売を発表しました。2010年は国民読書年ですが、電子書籍は本を読まない傾向の日本人を変えるのでしょうか?
グーグル、アップル、アマゾン3社の時価総額合計は4000億ドル(1ドル=100円と試算して約40兆円)に達したが、グーグル、アマゾン創業直後の10年前は誰も予想しなかったはずである。日本の産業構造と競争力にも巨大な影響を与えています。日本の情報通信産業は大丈夫なのでしょうか?
昨年6月11日、総務省は3.9世代無線システム基地局の認可を発表した。イー・モバイル・NTTドコモ ・ソフトバンクモバイル・KDDI・沖縄セルラーの5社である。各社は3.9世代無線システム基地局の設備投資を開始する。当時の報道によると、NTTドコモが2010年7月、イー・モバイルが2010年9月、ソフトバンクが2011年7月、KDDIが2012年12月サービスを開始予定である。
「LTE(ロング・ターム・エボリューション)は、現在普及しているW-CDMAやCDMA2000といった第3世代携帯電話(3G)とその先の第4世代携帯電話(4G)との間の通信技術であるため、第3.9世代携帯電話(3.9G)とも呼ばれている。最高速度は、下り方向100Mbps以上、上り方向は50Mbps以上となる。」(BIエッセイ2009/06/22 2009年は、モバイルブロードバンド爆発元年!1999年固定系ブロードバンド爆発から10年 詳細はこちら>>)
村井純『インターネット新世代』は、上記のようなデジタルコミュニケーション技術を基盤とするインターネットに関わる多くのテーマについて的確に解きほぐしてくれています。また教育や医療の改善、福祉や少子・高齢化の課題、環境やエネルギー問題も、すべての人が参加し、少ないコストで課題を解決するためにはインターネットが貢献すると述べています。まだまだ発展途上のインターネットですが、一緒に育てて全国民が役立てていこうと呼びかけています。その意味では、インターネットを直接研究したり、インターネットに関連する事業にたずさわる方々だけでなく、あらゆる職業、業界の方に読んでほしい内容です。
是非すぐに村井純『インターネット新世代』を読んでみて下さい。3~4色ボールペンで何度も大事なところに線を引き、自分のノートになるまで読む。絶対喜んで頂けると確信しています。BIPでも早速手配し、パートナー・社員はもとより、第2期事業リーダー実践塾受講生全員にも贈呈する事にしました。
(参考文献)
1.村井純『インターネット新世代』(岩波新書 2010年1月20日 第1刷)
2.村井純『インターネット』(岩波新書 1995年11月)
3.村井純『インターネットⅡ-次世代への扉』(岩波新書 1998年7月)
4.村井純『インターネット「宣言」』(講談社 1995年2月)
5.日経産業新聞 2010年2月23日(火)号
6.産経新聞 2010年2月24日(水)号
7.日本経済新聞 2010年3月1日(日)号
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<再録>
BIエッセイ 2009/09/07 『読書の秋② “ビットの時代・インターネットの時代”予言から15年。“デジタルネイティブの時代”を読み解く。』
デジタルネイティブとは、ネット世代という意味です。インターネットとモバイルが自明の自然環境であった世代がマスになり、ライフスタイル・価値観・経済そして政治を変えつつあるのではないか?その変化を探る研究に出会った。両書を契機に冷静に急いで深めるべきテーマである。BIPは、毎月自社でMBB(モバイルブロードバンド)研究会を開催している。前職ネットワンシステムズ(株)で、ネットワーク協議会やインターネット協会を中心に産学公の多くの方々とインターネット普及の活動をご一緒させて頂いた1990年代。インターネット・モバイルの普及などデジタル化と人間の未来を予言する好著が、1995年同時に発売された。
村井純著『インターネット』とニコラス・ネグロポンテ著『ビーイング・デジタル(ビットの時代)』である。
それから約15年、今年2009年5月同時期に、ドン・タプスコット『デジタルネイティブが世界を変える』、木下晃伸『デジタルネイティブの時代』が出版された。いわゆるデジタルネイティブ=ネット世代の増加による社会の深層からの変化を読み解く著作である。皆様も、お読みになったかもしれません。
(1)村井純氏『インターネット』・ニコラス・ネグロポンテ氏『ビットの時代』の予言から15年
10数年前の両書は、もちろん技術の変化の意味を理解するための英国ポップサイエンス的ジャンルの役割もありますが、いわゆる純粋技術書ではありません。デジタル・テクノロジーがもたらす変化が、ライフスタイル、社会論、文明論、哲学・思想まで広がる人間の未来への影響を探る試みです。そういう意味では、誰にでも読める、誰でも読むべき価値のある本だと思いました。
「日本のミスターインターネット」と称される皆様よくご存知の慶應義塾大学教授村井純氏(出版時は、助教授)の著書『インターネット』(参考文献3)は、多くの方がお読みになったと思います。今日のインターネットに発展する技術的基盤や変遷物語が語りかけるようにわかりやすく説明しています。当時、先進者の困難を引き受け、インターネットを推進した人々の勇気ある熱情の交流を知る良書でもあります。私もささやかながらインターネット仲間の一人として『インターネットⅡ』(参考文献4)・『インターネット「宣言」』(参考文献5)と共に大切にしている本である。
本書で、インターネットの未来を一緒に考えようと語る次の言葉は忘れられない。人間活動の新しいインフラがもたらす人間世界のデザインへの眼である。技術のデザインと人間世界のデザインの両方の視点をもったハイブリッドな慧眼に敬服する。
「デジタル・テクノロジーが人間のいろいろな知的活動を支えることになった現代に、デジタル・テクノロジーの上で、人間や世界がどのように変わっていくかということを考えるための体験の場というわけです。インターネットが持っている意味のうち、もっとも大きいのはそのようなことではないかと、私は思っています。」(参考文献3:3~4ページ)
MIT(マサチュ-セッ工科大学)Media Lab所長でメデイア・テクノロジー教授ニコラス・ネグロポンテの著書『ビーイング・デジタル-ビットの時代』に、強い刺激を受けた思い出が強い。ビーイング・デジタルとは、デジタルであるこという意味である。
『WIRED』誌のコラムニストでもあった同氏は、読者が求めているのは技術理論や装置についての情報だけでなく、デジタルなライフスタイルやデジタル・ピープルに関する情報を手に入れたいと思っているのに気づいて、本書をまとめたという。
「アトムからビットへという変化に後戻りはない。もう止めることはできない。しかし、なぜいまこれほど広がっているのか?それはこの変化が、指数関数的な性格をもっているからだ。つまり、昨日のちょっとした間違いが、明日には突如として衝撃的な結果を生み出すことになるのだ。・・(略)・・コンピューティングはもはやコンピュータを扱うことを意味するだけでなく、人と生きることと関わりを持つようになった。」(参考文献6:14~16ページ)
デジタルの光と影の両面を語る同氏が、楽観主義である根拠をこう述べている。
「ほかの何にも増してわたしの楽観主義の源泉となっているのは、デジタル化が人に力を与えるということだ。アクセスの可能性や移動の自由さ、そして変化を作り出す能力のおかげで、現在とは大きく違う未来像を思い描けるのである。・・(略)・・いま、デジタルな未来のためのコントロール・ビットは、かってないほど大幅に若い世代の手に委ねられている。そのことをわたしは、何よりも嬉しく思う。」(参考文献6:319ページ)
それから約15年。デジタルネイティブ(ネット世代)の時代となった。
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