佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2009/10/26 秋美遊③ 南青山スポット:新創・根津美術館の静、岡本太郎記念館の動が誘う
よく訪ねる根津美術館が10月7日リニューアルオープン。早速訪ねました。その近くに岡本太郎記念館、ブルーノート東京もあります。南青山は、私の好きな美遊スポットです。銀座線・半蔵門線・千代田線の「表参道駅」A5出口から8分、カルティエが見える右側を真っ直ぐ歩くと新創・根津美術館につきあたる外周竹に囲まれ、瓦屋根模様の伝統と現代が調和する新しい本館。木目が自然に和風を感じる内装。広大な庭園と一体としたデザインが静かな日本美空間の世界に誘う。優れた古美術との一体感が一層の深さと広がりを感じさせてくれています。隈研吾氏のすばらしい設計建築に再び出会った。(BIエッセイ2009年8月3日号『夏美遊①隈研吾氏設計サントリー美術館「美しきアジアの玉手箱」鑑賞&リッツ・カールトンホテルの夕べを楽しむ』 詳細はこちら>>)
庭園をゆっくり散策。根津美術館八景、茶室、NEZUCAFEの四季が楽しみですね。
近くの岡本太郎記念館にも寄りました。明るく躍動する岡本太郎氏の絵画・彫刻等。新しい発見は、妻岡本敏子さんの存在感です。
午後に根津美術館・岡本太郎記念館で、夜はBLUE NOTE TOKYOでJAZZを楽しみに遠方からいらっしゃる方々もいるそうです。ブルーノート東京は11月で21周年。
(1)隈研吾氏設計建築の新しい根津美術館10月7日リニューアルオープン!
『新創記念特別展 第1部 国宝那智瀧図と自然の造形(10/7~11/8)』
東武百貨店社長根津公一氏が館長を務める根津美術館(東京港区南青山)。10月7日新創オープンしました。『新創記念特別展 第1部 国宝那智瀧図と自然の造形(10/7~11/8)』が開催されています。(根津美術館WEBサイト:http://www.nezu-muse.or.jp/)
外国人も多い。私も訪問したことがあるボストン美術館とニューヨークメトロポリタン美術館の東洋日本美術空間の素晴らしさに負けない本家日本の意地が感じられる。日本人はもとより、今や第2期ジャポニズム時代と思われる世界の人々への目線を持った新創・根津美術館の頑張りに拍手をおくりたい。日英中韓4ケ国語のガイド作成、館長以下スタッフ全員がバリアフリー研修を受け、身障者を迎える態勢を整えたそうです。
外観や庭園は、カメラ撮影を快く許可頂いたので、素人写真ですがご覧頂きたい。
<庭園散策>
根津美術館を訪れる私の楽しみの一つは、都会のオアシスといえる広大な日本庭園です。今回、主要な園路はこれまでの飛び石から歩きやすい石畳になりました。
“沼”で泳いでいる2羽の鴨に出会いました。まだ緑一面の中に、僅かですが紅葉色の変化が始まっています。11月が近づき、秋の色づいた庭園ももうすぐですね。
いつもお茶を頂くNEZUCAFEは満席で、今回は諦めました。
庭園には、根津美術館八景と呼ばれる“名所”があります。月の石舟、弘仁亭の燕子花(かきつばた)、東熊野、ほたらか山、薬師堂の竹林、披錦斎の紅葉、吹上の井筒、天神の飛梅祠(ひばいし)。案内を持って歩くとよく分かりやすいと後で気づきました。
田舎家風の茶室が4軒。弘仁亭・無事庵、閑中庵・牛部屋、披錦斎・一樹庵、斑鳩庵・清渓亭がそれぞれの趣をみせる。
<新創記念特別展 第1部 国宝那智瀧図と自然の造形(10/7~11/8)>
展示室1では、有名な国宝『那智瀧図』をじっくり見ました。屏風に溢れる桜と紅葉に彩られた『吉野龍田図屏風』、息を飲む華麗な重要文化財『野々村仁清作 色絵山寺図茶壺』、鹿をモチーフにした重要文化財『春日山蒔絵硯箱』など国宝・重要文化財作品が多いのにも驚きました。
展示室2「手を競うー王朝びとの筆のあと」、展示室3「仏教彫刻の魅力」、展示室4「古代中国の青銅器」、展示室5「吉祥―明清の漆工と陶磁」、展示室6「初陣茶会」、特別ケース「宝飾時計」の会場構成となっています。
多彩な作品展示の際に役立ちそうなので、成城大学名誉教授 田中日佐夫(たなか・ひさお)監修『すぐわかる日本の美術改訂版』を買った。日本の美術作品を絵画、仏像、やきもの、暮らしと美術の4つのジャンルに分けて説明しています。
(2)岡本太郎記念館で出会った『愛する言葉』
岡本太郎記念館は、フラッシュでのカメラ撮影を許可してくれました。
いつものようにまず2階の作品を観る。太郎氏が、ピカソの芸術を超えて人間の生命力を蘇らせると闘い続けた作品がある。抽象の中に動を強く感じる人間臭い空間。作品の多くは、川崎市岡本太郎美術館に寄贈されているそうです。
1階のアトリエの隣の展示に、夫太郎氏像造形と、妻敏子さんの写真がある。その笑顔の表情が良い。作品を生み出す背後に敏子さんを直感した。
岡本太郎・岡本敏子『愛する言葉』を買った。人間的で温かいが強烈な共鳴エネルギーを発している言葉である。女の強い磁場に引き寄せられる。
女優宮沢りえさんは、表紙帯でこう述べる。「支え合う。向き合う。溶け合う。タローさんととし子さんの透明な愛に、今の私はただただ憧れるばかりです。」(参考文献6)
先に亡くなった夫岡本太郎の記念館立ち上げに奔走した妻敏子さん。2005年急逝した館長敏子さんの甥で現館長平野暁臣氏は、こう語っている。
「“わたしほど幸せな女はいない。だって、あんなステキな男の子とずっと一緒にいられたのよ。これって奇跡だと思わない?” 敏子はいつもそういって、全速力で突っ走る太郎さんをニコニコしながら嬉しそうに眺めていた。」(参考文献6:182ページ)
敏子さんの『愛する言葉』の一部を引用紹介します。いかがですか?
「愛している。好き。何かしてあげたい。それだけでじゅうぶんじゃないの。」
「賭けなきゃ。自分を投げ出さなきゃ、恋愛なんてはじまらないじゃない。」
「男の人が転んじゃたり、失敗したらね、一緒に泣いてあげてもいいし、しょうがないと思ってもいい。大切なことは、やりそうなときにけしかけてあげること。“ああ、それはいいわね。ああ、すごい!”って、言ってあげれば男の人はどれほど元気になりますか。男の子が元気になったら、女の子はもっと楽しくなるのよ。」
「男と女は一緒に成長するの。男に惚れることによって女もふくらむ。男はまた、女に応えようともっといい男になる。」
「戦っている男、あるいは戦場に出て行こうとしている男こそ、最高に色っぽいのだ。」
「いつでも私の胸に倒れ込んで来ていいのよ。私には用心しなくていいの。」
「眼と眼を見あわす。ほんとうに真正面から相手を見なければダメ。」
小さな記念館ですが、老若男女の訪れが絶えない。皆様、岡本太郎・敏子夫妻に会えますよ。
以上
(参考文献)
1.根津美術館『新・根津美術館案内2009』
2.田中日佐夫監修『すぐわかる日本の美術改訂版』((株)東京美術 2009年3月)
3.『日本経済新聞』2009年10月17日号 40面 文化
4.『日本経済新聞』2009年10月24日号(夕刊)1面 きらめく一点
5.隈研吾『自然な建築』(岩波新書 2008年11月)
6.岡本太郎・岡本敏子『愛する言葉』((株)イースト・プレス 2006年6月)
7.平野暁臣『岡本太郎 「太陽の塔」と最後の闘い』(PHP新書 2009年9月)
8.ブルーノート東京『BLUE NOTE TOKYO』
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