佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2009/04/13 「LOUVREルーヴル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画-」を楽しむ

 先週、上野公園の国立西洋美術館で開催されている『LOUVREルーヴル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画-』(6月14日迄開催中)を楽しみました。いろいろな見方、楽しみ方があり、一人で、恋人と、また子ども達と、大勢が並ぶ人気でした。京都市美術館(6月30日~9月27日)でも開催予定で、西日本の方もご覧頂く機会があります。是非お勧めします。

『「黄金の世紀」と呼ばれる17世紀ヨーロッパは、レンブラント、ベラスケス、フェルメール、ルーベンス、プッサン、ラ・トウールといった優れた画家を綺羅星のごとく輩出しました。・・(略)・・まさに「これぞルーヴル」、「これぞヨーロッパ絵画の王道」と言える作品群です。・・(略)・・出展される71点のうち、およそ60点が日本初公開、さらに30点あまりは初めてルーヴル美術館を出るという画期的な展覧会でもあります。』(参考文献1:4ページ)

 本展覧会カタログ表紙は、星野知子さんの楽しい美術紀行『フェルメールとオランダの旅』(参考文献2)の冒頭に紹介されたフェルメール『レースを編む女』。2年前のオランダ・ベルギー家族旅行で訪ねたアムステルダムの中心広場を描いた『アムステルダム市庁舎のあるダム広場』と、バケツ一杯のムール貝を食べたベルギーでの夕食を思い出す『ムール貝を食べる少年たち』。17世紀フランスで最も有名な思想家『ルネ・デカルトの肖像』、プロテスタントの広がりに対応して強い感情表現を素描した『ペテロの涙』等、美術鑑賞は多様な情的感動と知的感動を与えてくれる。
ルーヴル美術館展にて 参考文献

(1)日本で新たな大規模なルーヴル美術展-国立西洋美術館開館50周年記念事業、日本テレビ開局55年記念事業

 私は、記念事業が拓く偉大さ・非凡さを信じ、大切にしている。年間800万人が訪れるルーヴル美術館。私も一度しか訪れた事が無く、国立西洋美術館開館50周年記念事業、日本テレビ開局55年記念事業として、東京と京都で開催される大規模なルーヴル美術館展は嬉しい限りである。主催者である国立西洋美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、讀賣新聞東京本社に対して美術鑑賞を楽しむ一人として感謝する次第です。
 
 本展は、17世紀ヨーロッパ絵画がテーマです。ルーヴル美術館館長アンリ・ロワレット氏は、メッセージとしてこう述べています。

『皆様は本展覧会を通じて、17世紀ヨーロッパのさまざまな側面を発見できるでしょう。昔から「黄金の世紀」と呼ばれるヨーロッパ17世紀は、フェルメール、プッサン、レンブラント、さらにベラスケスらの作品により、私たちの記憶に残っています。しかし、この世紀を生き抜いた民衆が、戦争、疫病、飢餓などに苦しめられた事実はさほど知られていません。彼らにとって、この世紀はいわば「青銅の世紀」だったのです。また、17世紀は、大航海と賢者による科学革命を結びつけた時代であったという事実を知っている人は少ないでしょう。さらに、当時のヨーロッパのキリスト教文化が、古代文明の遺産を引き継いでいたことの重要性も忘れてはなりません。本展覧会は、このような独創的で高度な視点から、ルーヴル美術館の傑作群にアプローチします。」(参考文献1:7ページ)

図録には、詳細な説明の絵画カタログと、日仏専門家による6本の論文を掲載し、新たな創造に挑戦しています。

(2)星野知子さんの楽しい美術紀行『フェルメールとオランダの旅』冒頭に紹介されたフェルメール『レースを編む女』

 フェルメール『レースを編む女』が、本展覧会図録の表紙を飾り、今回の代表作品の一つである。(参考文献1:93ページ)私にとって、10数年前に訪問したパリのルーヴル美術館以来2度目の出合いである。あの居心地いい光は、光の装飾家・魔術師フェルメールの仕業である。

 俳優の星野知子さんは、まさにパリのルーヴル美術館のフランドル、オランダ絵画の部屋でフェルメール『レースを編む女』に初めて出合い、オランダの旅に誘われたという。星野知子さんのフェルメール美術作品案内とオランダ旅紀行『フェルメールとオランダの旅』が生まれた。

『彼女の伏せた目は指先だけにそそがれ、全神経が編み目に集中している。飾り気のない部屋には何の物音もせず、耳を澄ませば彼女のかすかな規則正しい呼吸が聞こえてくるようだ。そして、時の止まった世界で、手前に垂れる赤い糸だけがマグマのようにのたうちまわっている。ピーンと張り詰めた緊迫感、それでいてあたたかみのある絵だ。・・(略)・・あの絵の中の空気に身を置いてみたい。あの光に包まれたい。・・(略)・・私はセーヌ川の橋の上で、オランダ行きを決めていた。』(参考文献2:6ページ)

 私も2年前のオランダ旅行で、フェルメールを訪ねた。『牛乳を注ぐ女』『青衣の女』『小路』『恋文』(アムステルダム、国立美術館)、『真珠の耳飾りの少女』『デルフト眺望』(ハーグ、マウリッツハイツ美術館)を現地で見る機会に恵まれた。

(3)2年前のオランダ・ベルギー家族旅行を思い出す『アムステルダム市庁舎のあるダム広場』と『ムール貝を食べる少年たち』

 写真のない時代は、絵画がその役割の一部を担っていたと考えても良い。2年前のオランダ・ベルギー家族旅行の場面を思い出させてくれた絵画に出会った。

 ベルグヘイド『アムステルダム市庁舎のあるダム広場』(参考文献1:89ページ)は、アムステルダムの中心広場、ダム広場からの風景で、左手が市庁舎である。2年目の家族旅行で泊まったホテルがこの近くであり、この周辺は散歩、買い物、食事と良く歩いた思い出の場所である。1648年オランダ共和国がスペインから独立し、大航海時代の中心都市アムステルダムの繁栄を絵画化したものと言われる。

 セビリアの画家ビリャビセンシオ『ムール貝を食べる少年たち』(参考文献1:111ページ)は、ベルギーでバケツ一杯のムール貝を食べた夕食を思い出させてくれた。カジュアルレストランでの昼食時に、当地婦人がやはりバケツ一杯のムール貝の食事を楽しんでいたのを実際に見て、一般的な事なのだと納得した記憶がある。この絵の舞台がベルギーかどうかは不詳である。スペインかもしれない。ぼろ着、地面で食べる食事など貧困や飢餓を示している。「黄金の世紀」の一方で、民衆にとって戦争、貧困の「青銅の世紀」を描いた作品も多い。

(4)宮廷文化表現するレンブラント『自画像』、近代科学の気風を伝えるハンス原作『ルネ・デカルトの肖像』、民衆に近づき感情を表現する宗教画グエルチーノ『ペテロの涙』

 レンブラント『縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像』(参考文献1:83ページ)は、1633年未だ27才の頃とされる。レンブラントの自画像の流布は、彼自身が描いたものにせよ、他の画家のよるものにせよ「黄金の世紀」の美術史において最も重要な現象の1つと言われるのは、宮廷文化を表現しているからだろう。君主国オランダの典型的衣装を着、金の鎖は王族からお気に入りの画家によく贈られるものであるという。

 フランス・ハルスの原作に基づく派生的作品あるいはコピーとされる『ルネ・デカルトの肖像』(参考文献1:135ページ)が目に入った。おそらく中学か高校で知った17世紀フランスの思想家・科学者デカルトは、パスカル、ガリレオ等と並び近代的精神に貢献した人物である。寛容で経済的繁栄の地オランダに亡命して、“我も忘れるほど、自己の事柄に没頭しなさい”と述べたとされるデカルト。科学革命の時代の主人公が美術作品となっている。

 グェルチーノ『ペテロの涙』(参考文献1:215ページ)は、感情表現のある絵である。この時代的背景については少々説明が必要であると思う。

『17世紀は「聖人の世紀」と呼ばれる。それは、この時代に夥しい数の聖人がローマ教会によって列聖されたためである。・・(略)・・ひとつはプロテスタントとの闘争におけるカトリック教会の積極的な関わりであり、もうひとつは神とキリスト教徒とのあいだにより直接的な絆を打ち立て、信仰をより身近で親しみやすいものにしようとする明白な意志である。
・・(略)・・芸術の分野において、このような宗教的高揚は、カトリック教会堂や個人礼拝堂のための、聖人を描く芸術作品の制作依頼となって表れた。」(参考文献1:165ページ)
この宗教画は、原始キリスト教会の人物像からのある種の復活と見ることができるとの指摘もある。
以上

(参考文献)
1.国立西洋美術館、京都市美術館、日本テレビ放送網、ルーヴル美術館『ルーヴル美術館-17世紀ヨーロッパ絵画』図録(日本テレビ放送網 2009年)
2.星野知子『フェルメールとオランダの旅』(小学館 2000年)

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