佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション
2013/11/05 秋美遊!近代日本画の両巨匠「東の大観、西の栖鳳」を味わう贅沢。
今秋は、近代日本画の両巨匠「東の大観、西の栖鳳」を味わう贅沢な体験をしました。
先般、『横山大観展~良き師、良き友』(横浜美術館 ~11/24まで開催中)と『竹内栖鳳展~近代日本画の巨人』(東京国立近代美術館は10/14で終了。京都市美術館 10/22~12/1まで開催中 )を鑑賞しました。まだ開催中ですので、是非訪ねてほしいと思います。
(1)『横山大観展』(横浜美術館 10月5日(土)~11月24日(日)で開催中)
横山大観との本格的出会いは、10年程前に島根県観光の際に足立美術館を訪ねた時に遡る。創業者である足立全康氏の言葉を裏切らない横山大観の名品に驚いた記憶が残っています。
「足立美術館は、時に「大観美術館」と呼ばれることがあるらしい。近代日本画史に不滅の足跡を刻む横山大観の名品が、数多くコレクションされているところから、そう形容されるのだろう。確かに、足立コレクションの基盤となるものは近代日本画だが、その量、質ともに骨格をなすのは横山大観である。」(参考文献4)
約10年ぶりに横山大観と本格的に再会しました。横浜美術館の『横山大観展~良き師、良き友』は、横山大観の作品系譜を鑑賞しながら、その師岡倉天心と友人画家達との交友を知る素晴らしい展覧会です。
【横山大観は、今年世界遺産登録となった富士山を1000枚以上描いた】
今年世界遺産に登録された富士山。富士山は古今の画家が挑んだ画題です。その中でも横山大観は、富士山の絵画を1000点以上描いた画家として有名です。
『家庭画報』12月号の中で山根基世さん(元NHKアナウンス室室長)と山﨑妙子さん(山種美術館館長)が「富士山と絵画」について対談しています。
「山根 富士山の絵って、今まで大体何枚くらい描かれているんでしょう。
山﨑 そうですね、横山大観(1868~1958年)だけでも1000点から1500点あるといわれていますから、ちょっと数え切れないですよね。・・・・
山根 近代で富士山といえば、やはり横山大観ですか。
山﨑 そうですね、数が多いだけでなく、富士山の神々しさというものをうまく描き出してもいます。」(参考文献3)
本展覧会では、横山大観の富士山を描いた素晴らしい作品<<霊峰不二>><<雲中富士>><<神州第一峰>>を観ることが出来ます。
【<<夜桜>>(図録上部)は、ローマ日本美術展への出品作で横山大観の代表作】
図録(参考文献1)
<<夜桜>>(六曲一双 大倉集古館所蔵)は、1929年(昭和4年)ローマ日本美術展に出品するために描きおろしたもの。欧米人の鑑賞眼を意識して、鮮やかな複数の顔料で彩色し、動きのある大画面の屏風形式で見事に描いていますね。凄い。
この作品は、神林恒道、新関伸也編著『日本美術101鑑賞ガイドブック』と辻 惟雄『日本美術の歴史』の両方に横山大観の代表作として収録されています。
「かがり火に照り映える満開の山桜。その迫力に息を呑むばかりです。豪華絢爛という言葉がぴったりでしょう。・・・右隻では、松の陰に風もないのに花びらが散りゆきます。左隻では、揺らめくかがり火から立ち上がる煙が、山際に顔を出した白金の月へと視線を導きます。・・・美術に大切なのは「理想(アイデア)」だという岡倉天心の教えを受けて、室町時代の大和絵屏風や桃山時代の障壁画の画面構成を取り入れ、思い切った装飾性を前面に出したとき、この豪快な作品が仕上げられました。」(参考文献5)
【<<秋色>>(図録下部)は、今村紫紅の鮮麗な色彩表現に触発される】
<<秋色>>(六曲一双)は、大観が1917年(大正6年)再興第四回院展に出品した作品。色鮮やかな作品ですね。大観作品は水墨画や淡い色彩という記憶が強かった私にとっては意外感がありましたが、尊敬していた今村紫紅の鮮麗な色彩表現に影響を受けたといわれます。
「鹿は秋の季語であり紅葉鳥の異名を持つ。交尾期である秋に聞かれる鳴き声は、雄が雌を慕うものとして親しまれ、その様子は和歌や古典楽曲にも扱われた。絵画では、しばしば雌雄二匹が寄り添うように描かれ、本作も左隻にそうした鹿の様子が描かれている。」(参考文献1)
(2)『竹内栖鳳展』(東京国立近代美術館は10月14日で終了、京都市美術館 10月22日(火)~12月1日で開催中)
皆様、竹内栖鳳はご存知でしたか? 実は私も詳しくは知りませんでしたが、作品を観てその素晴らしさに驚きました。日本画の卓越した描写を継承しながら、前代の古臭さを一掃して清新な作品世界を見事に創造しています。
【<<斑猫>>(図録表紙 1924年(大正13年) 山種美術館所蔵 〔重要文化財〕】
図録(参考文献2)
図録表紙の<<斑猫>>は重要文化財に指定されている竹内栖鳳の代表作品。猫一匹を描ききっていますね。凄い。是非、実際に足を運び、味わってほしいと思います。
旅先の沼津で散歩中、八百屋の店先で見つけた猫を京都のアトリエに持ち帰り、日夜遊ばせて観察し、制作したと言われます。
「猫の体は、絵具で面状に彩色してから毛描きをほどこしている。毛には胡粉、墨、金泥も使われており、猫の毛の微妙な色の階調や、光に透けて見える様子を表している。こうした繊細な表現により、猫に触れたときの柔らかな感触をも想像させる。」(参考文献2)
「金色に底光りする緑の目が放つ視線に、射すくめられそうに感じませんか。縦に細くなった瞳の奥の深い青には、強い生命感が宿っています。・・・ただ技術的に優れているだけでなく、どことなく気品と風格を備えた絵です。」(参考文献5)
【画期的な『竹内栖鳳展』-作品110点、資料60点】
竹内栖鳳との本格的出会いは、実は最近です。昨秋、山種美術館『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』で知りました。(詳細は 2012/10/22 清新な近代日本画の大巨匠に出会う-山種美術館『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』)
そして、今秋開催された東京国立近代美術館開催の『竹内栖鳳展』を鑑賞しました。国立美術館では初の竹内栖鳳展です。また、栖鳳の作品、資料をまとまった点数収蔵する京都市美術館においても、他の所蔵先の栖鳳作品を借用しても大規模な回顧展は1978年(昭和53年)以来の大規模な回顧展だそうです。作品約110点、素描などの資料約60点で栖鳳の画業を通観できます。
竹内栖鳳の作品は生き物や自然が題材となる作品が多く、それらが見せる一瞬の姿を清新な感性で軽やかに捉えながら、同時に精緻な筆致と澄んだ色彩が特徴です。
秋の美術鑑賞に近代日本画の両巨匠「東の大観、西の栖鳳」の素晴らしい特別展を鑑賞出来て、大変楽しい時間を過ごすことができました。
以上
(参考文献)
1.横浜美術館、朝日新聞社編集『横山大観展-良き師、良き友』図録
2.東京国立近代美術館、京都市美術館、日本経済新聞社文化事業部、NHK、NHKプロモーション編集『竹内栖鳳展-近代日本画の巨人』図録
3.月刊誌『家庭画報』(世界文化社 2013年12月号)
4.足立全康『九十坂超えてますます夢ロマン』(財団法人足立美術館 平成17年第二版補訂版第四刷)
5.神林恒道、新関伸也編著『日本美術101鑑賞ガイドブック』(三元社 2011年初版第3刷)
6.辻 惟雄『日本美術の歴史』(東京大学出版会 2006年第3刷)
7.山種美術館 『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』図録
8.佐々木昭美 BIエッセイ2012/10/22 清新な近代日本画の大巨匠に出会う-山種美術館『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』
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佐々木 昭美(ささき あきよし)
取締役会長 総合研究所所長
経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)
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