佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2008/09/22 トヨタ発展の根源的意味に挑む著書2冊

―読書の秋 日本を元気にする100年の視野と智慧、勇気を求めて(2)―

 BIエッセイ“読書の秋 日本を元気にする100年の視野と智慧、勇気を求めて”第2回目です。今年の読書の秋は、どうしても世界・日本の激変の深層と未来への智慧に関心が向かいます。最近の読書で、100年の長期的視野で参考になる本を紹介し、一緒に学びたいと思います。

 日本人の創造性についての常識は、“フィクション”ではないか!
 トヨタの現場研究から得た茂木氏の筆鋒は熱い。

 マネジメントの父ドラッガーの「経営の処方箋」を愚直に続けているのがトヨタではないのか!
 今村氏は、歴史的事実とトヨタの根源的理解に挑戦した。
 
 理論的にも、精神的にも自信を回復し、日本人の未来への可能性を示唆してくれる2冊である。

(1)薄闇にさまよう平成日本で生き抜く智恵とは?

  (茂木健一郎『ひらめきの導火線 トヨタとノーベル賞』PHP研究所 2008年9月)

私は、脳科学者である茂木氏の以下の言葉の新鮮さと素直さに驚いたほどである。トヨタとノーベル賞という対比はわかりやすい比喩であるが、本質的な価値転換のキーワードなのである。日本人は創造性が低いというのは“フィクション”なのだと断言する。

「トヨタでは、全員が「提案書」を書くのだという。仕事をしていて気づいたことをもとに、現状を「改善」するためのアイデアをA4版一枚の紙にまとめるのだ。」(同書17ページより抜粋)
「ノーベル賞で評価されるような発見と、トヨタの人々が行うような工夫。一見かけ離れたものように思えるかもしれないが、この二つは本質的に同じものである。どちらもひらめきであることに変わりはない。」(同書19ページ)

「ひらめきの瞬間に脳で起こっていることについて研究をつきつめていくと、そこにあるのは、個人の力で完結するようなものではないようだ。どんなひらめきも、素材は外からもたらされる。 創造は、ネットワークの力である可能性が高い。・・(省略)・・決して単独発生ではない。」(同書40-41ページより抜粋)

トヨタの工場見学から、“日本人と創造性”ということを考えるきっかけになったと茂木氏はいう。ひらめきの解明から出発した構想力は、日本の新時代への熱い思いと提案にあふれている。


(2)ドラッカー・ウェイは、トヨタ・ウェイだった。

  (今村龍之助『ドラッガーとトヨタ式経営』ダイヤモンド社 2008年8月)

「成功する企業には変わらぬ基本原則がある。」が、この本のサブタイトルである。

同書まえがきで「50年前に書かれたドラッガー教授の言葉と、70年間実践され続けているトヨタ式経営(カイゼン)の智恵の集積のなかに、行動カイゼンの普遍の基本原理を見いだすことができたと思っている。」と著者は述べている。

著者今村氏は、トヨタの成功は、成功の基本原則を守り、磨き、創造している「トヨタ式経営(カイゼン)」によるのではないのか?との関心から、トヨタ・ウェイを徹底してその本質と現実を考え尽くす。ドラッガーとトヨタの言葉の対比は、単なるウケを狙う比喩ではない。歴史的事実による推察と、内容の一体性を詳細に研究してまとめている。ダイヤモンド社出身の45年の編集者プロの技ではあるが、誰でもできる訳ではなく、その発想と緻密さに脱帽する。

「トヨタ式経営(カイゼン)は、物質(現実、手段、手法)と精神(志、価値観、目標の共有)をセットにして展開され、理想的な形にまで昇華させた経営方式であることを理解することが大切である。」(同書10ページ)と述べている。

単なる知識の書でもない。
「ドラッガー教授は『マネジメントは、知識のための知識に関心をもってはならない。成果をあげることに関心をもたなければならない。』(注1:P226)『仕事とは論ずべきものではなく、実行すべきものである。』(注2:P222)といっている。」(同書6ページ)
と経営の原点を冒頭で鋭く説いている。(同書6ページ)

「真実の言葉は心を揺さぶり、行動を促す」(同書8ページ)。さあ、読んでみよう。

以上

注1:ドラッガー名著集3「現代の経営(下)」P・F・ドラッガー著、上田惇生訳/ダイヤモンド社)
注2:ドラッガー名著集2「現代の経営(上)」P・F・ドラッガー著、上田惇生訳/ダイヤモンド社)

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