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2016/08/25 第37回「商品企画シリーズ⑯(石黒啓司) ■商品のライフサイクル理論(その7) 成熟期 相手目線で商品を創る(国別・販路別の商品差異化)」

前回は、メーカーと最終カスタマの中間に存在する販売業界の目線に立った上で『販売業界が売る気になる商品とは何か…』のお話をしました。

今回は更に一歩踏み込んだ『販路別の商品差異化=デリバティブ・モデル展開』の実例を紹介します。

デリバティブと聞くと皆さんはすぐ『金融商品の一部』と思うことでしょう。
しかし、デリバティブの英語語源は『派生する派生的な…』と言う意味であり基本モデルを元にして派生するモデル…とお考え下さい。

家電の販売業界としては、専門店・街の小型電器店・大型量販店・ネット販売が先ず頭に浮かぶと思います。更に流通の先進国であるアメリカでは大型量販店の区分の中でも様々な店舗形態が存在しています。

一般的に、メーカーはこれらの販路に対してその仕入れ数量の違いから異なったマージン体系で商品を販売せざるを得ません。
結果的には、店頭での価格はある程度の幅を持つことは自由競争の中で避けられない現実です。

この現実から発生する販売店間の価格不満トラブルに対応するのがこの『販路別デリバティブ・モデル』の展開手法です。

すなわち、『専門店向けには付加価値を追加したフルスペックモデル』に始まり『基本スペックのベーシックモデル』、また一部の機能を簡素化したりデザインや色の一部を変えた『量販店向け専用モデル』など、基本モデルをベースとして違う性能や型名の商品に展開を広げてラインナップを組んでいるのです。

これら商品の差異化によって、販売チャネルで発生する価格ストレスを解消してそれぞれの販路がビジネスをスムーズに出来る工夫をした訳です。

また問題はひとつの国の中だけの問題ではなく、場合によっては国や地域を超えた広範囲な流通で起きる横流れの問題もあるのです。

本来は同じ商品を自由競争の精神の元で全世界に販売するのがメーカーにとっては一番効率が良いのですが、現実には各国の販売店のマージン体系に差があります。
一般的に先進国は量販店志向でボリュームディスカウントで低い卸値ですが人件費は高い。それに比べると発展途上国はその当時まだ量販店志向ではなく、小規模店で低いマージンと低い人件費と言う本質的な違いがありました。

例えば、陸続きのアメリカと中南米ではどうしても同じ商品が国境を越えてお互いに流れ込んでしまうことが多々ありました。
ひとつの商品であっても国に依っては売れずに在庫となり、それが他の国に流れることは頻繁に起きています。
得てしてそう言う場合は価格の低下に繋がり、各国の販売業界に混乱が起きることが良くありました。

ここでも大切なのは相手目線(販売業界への配慮)です。
例えば同じ商品でもデザインの一部の色を、地域別に変えることで、これら横流れが起きても、すぐどの国の商品か即、判断出来ることで各国の販売業界からの信頼を得ることが出来た例もあります。

ややこしい説明で恐縮ですが、このように『流通業界の相手目線』で商品を創るのは非常に重要であり、これは家電業界だけでなく、あらゆる業界にも通じる共通のノウハウなので皆さんのお役に立てれば幸いです。


thumbnail_otsuka石黒 啓司(いしぐろ けいじ)

コンサルタント(商品企画、マーケティング、仕事力改革)

今の日本、政治・経済の停滞の中、特に企業の元気がありません。構造変化への対応、新しい挑戦の欠如が原因と痛感しています。 これらの打開には先ず、戦略力、創造力・統率力などの仕事力が必須。至近な実例を元に仕事力&元気玉の復活を目指して発信します。

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