2016/07/27 第25回「多くの経営者が誤解している! 予算マネジメント」
皆さん、「予算マネジメント」と聞くと、どのようにお感じになりますか?
「予算」に対する考え方は、会社によって大きな開きがあるようです。予算をベースとした経営を重視している会社、予算は単なる一つの管理ツールだと考えている会社、予算をつくっていない会社など、さまざまです。
実は予算マネジメントとは、会社組織の活動をコントロールして利益を創り出すためのマネジメントです。この予算マネジメントのレベルによって、会社の利益や成長速度が決まってくると言って過言ではありません。予算マネジメントは経営の根幹なのです。
予算マネジメントを狭い範囲で捉えている経営者の方々が多いようです。「鉛筆を舐めて目標数字をつくり、予算にいったかどうかを見る」というような意味合いで予算マネジメントを捉えていては、残念ながら計画的に売上高を拡大し、利益を創出していくことはできないでしょう。
逆に予算マネジメントをきっちり行なっている会社は、毎年、予算達成に向けて、事業拡大を図り、計画的に業績を向上、会社を成長させています。
多くの中小企業が、5億円のカベ、10億円のカベを破れずに苦戦しているのは、この予算マネジメントの仕組みが弱いからだと言えます。多くの中小企業にとっての最大のウィークポイントが予算マネジメントの仕組みなのです。
予算マネジメントを行って、10億円のカベを破って成長している企業も、30億円前後から成長が鈍るケースが多いようです。そうした企業が成長を加速させ、50億円のカベを突破、成長を続けていくためには、現在の予算マネジメントのレベルをさらに引き上げていく必要があります。
このコラムでは、何回かにわたって、“業績向上を計画的に実現するための予算マネジメント”について説明をしていきたいと思います。
最初に、予算をつくっていない会社の経営について考えてみましょう。
予算をつくっていない会社は、中期経営計画もつくっていないことが多いようです。つまり経営計画を持っていないのです。計画を持たない会社経営とはどのようなものでしょうか?
計画を持たない会社が現在の経営の状況を判断する場合の基準は、昨年に比べて現在はどうか?ということしかありません。昨年より業績が上がっているのか、下がっているのか、これだけです。
昨年に比べて業績が上向いていればOKということであれば、成長速度は低くともOKということになります。そこには他社との比較の視点がないので、他社がさらに成長していれば市場シェアは下がっていきますが、そのことに気づくこともありません。また、事業運営の仕方をもっと工夫していれば、さらに業績は向上させられるかもしれないのですが、事業運営上の問題点を発見することも容易ではありません。何しろ、前年比較という基準しか持っていないのですから……。
前年に比べて業績が落ちている場合は、そこでようやく「どうしようか!?」ということになります。しかし、基準は前年しかないので、やはり問題点を発見することは容易ではありません。そして何らかの改善策を見つけ、実行して、前年よりも業績が上がってくれば、そこで安心してしまいます。これでは、成長のカベを突破していくことはなかなかできません。
また、計画を持っていない会社では、戦略の明確化と共有ができていないので、社員がバラバラの動きをしがちです。計画をもっていない企業の社長さんの頭の中には、このようにしていきたいとの漠然とした考えはあるのですが、残念ながら、戦略・戦術のレベルにまで考えが纏っていないことが多いようです。また、社長さんの頭の中では戦略・戦術が纏っていて、社員には口頭で伝えている、と社長さんは思われていても、実は社員は別のことを考えている、つまり戦略・戦術の共有が十分ではないというケースが多いのです。
計画を持たない会社経営というのは、航海図を持たない船と同じです。どちらの方角に進むのか、乗っている船員も不安です。航海していても、どこで座礁してしまうかもわかりません。こうしたやり方は、行き当たりばったりの経営、成り行き経営です。こうした経営では、会社をしっかりと成長させていくのは難しいと言わざるを得ません。
では、どうしたらよいのか?
次回は経営計画について考えていきたいと思います。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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